AI(人工知能)技術の進化は目覚ましいものがありますが、その多くは「機能性」を追求してきました。しかし今、中国で新たなAIの方向性が注目されています。それは、「心を持つAI」「感情型AI」の実現です。
中国の音声認識技術大手である科大訊飛(iFlytek、アイフライテック)が、最近、杭州次元造物科技(Hangzhou Meta-Creation Technology)への戦略的投資を完了したと発表しました。この提携は、AIハードウェア分野における技術融合と新しいユーザー体験の創出を深掘りするものです。次元造物の評価額は今回の投資により数千万元(日本円で数億円規模)に跳ね上がり、両社は「感情型AI」のリアルな応用を共同で探求していきます。
感情型AIとは?「IP+AI+ロボット」で心温まるパートナーを
従来のAIハードウェアが「機能優先」のデザインロジックを採用してきたのに対し、次元造物が選んだのは「感情インタラクション」を核とするアプローチです。彼らの創業チームは、AI産業がすでに明確な分野分けを形成しており、「ツール型AI」が激しい競争に直面している一方で、「感情型AI」こそが未開拓のブルーオーシャンであると見ています。
次元造物は、独自の「IP(知的財産)+AI+ロボット」という組み合わせモデルを通じて、AIハードウェアの「冷たい」イメージを打ち破り、テクノロジーを知覚し、共感できる「実体的なパートナー」へと変貌させようとしています。この戦略を支えるのが、次元造物が独自に開発した「パーソナリティ化具現知能」という産業フレームワークです。これは以下の3つの層から構成されます。
1. IP層:ロボットに「魂」を吹き込む
企業が抱える4000万フォロワーを超えるSNSアカウント群を通じて、市場で検証済みの「人格設定の魂」をロボットに注入します。これにより、単なる機械ではなく、まるで人気キャラクターのような親しみやすさが生まれます。
2. AI層:感情指数を高める
感情インタラクションアルゴリズムを駆使し、ロボットに「感情指数」を与えます。これにより、ユーザーの感情を理解し、適切に応答することが可能になります。まるで人間の友達のように、心の機微に寄り添ってくれるでしょう。
3. ハードウェア層:触れられる存在へ
小型化されたデザインにより、ロボットは触れやすく、より身近な存在となります。手軽に持ち運べ、日常生活に溶け込む「寄り添うパートナー」としての役割が期待されます。
このようなデザイン理念は、業界内でスマートフォンの後、スマートスピーカーの次に続く「第三世代のヒューマンマシンインタラクション端末」として位置づけられています。
iFlytekと次元造物の強力なタッグ
科大訊飛と次元造物の提携は、まさに「技術」と「人格」の完璧な補完関係と言えるでしょう。
- 科大訊飛は、世界をリードする音声認識、音声合成、自然言語処理技術を提供。これはロボットに「敏感な耳」と「流暢な口」を与えることに相当します。
- 一方、次元造物は、独自のパーソナリティモデルと感情アルゴリズムを通じて、ロボットに「個性」と「魂」を吹き込みます。
両社は、科大訊飛のAIoTエコシステムを活用し、チップからモジュール、クラウドサービスまでのフルチェーンを連携させる計画です。これにより、既存のロボットが抱える「人間の言葉を理解できない」「ジョークが通じない」といった課題を解決し、より自然で豊かなコミュニケーションを実現することを目指します。
ユーザーと共に創る、未発売で人気の秘密
次元造物の差別化された優位性は、その「ユーザーと共に製品を創る」というユニークなモデルにあります。彼らは「玄猫合合」や「砂糖少女胡里里」といった知名度の高いIPを複数所有し、全プラットフォームでのフォロワー数は4000万人以上に及びます。この巨大なファンベースは、感情アルゴリズムのトレーニングデータを提供するだけでなく、製品プロモーションの強力なチャネルとなっています。
内部関係者によると、次元造物の最初の製品はまだ正式に販売されていないにもかかわらず、ファンコミュニティを通じてすでに大量の予約希望が集まっており、「未発売で既に人気」という市場効果を生み出しているとのことです。
また、次元造物のチーム構成も、その中核的な競争力の一つです。
- CEOの張一新(チャン・イーシン)氏は、音声心理学博士号を持ち、MCN(マルチチャンネルネットワーク)運営の経験も兼ね備えており、製品のインタラクションデザインが心理学的原則に沿っていることを保証します。
- COOの朱少鋒(ジュ・シャオフォン)氏は、ベストセラー作家であり、元360子供スマートウォッチのマーケティング責任者として、テクノロジー製品を大衆消費財へと転換させる手腕に長けています。
- チーフAIエンジニアの金小悦(ジン・シャオユエ)氏は、メルボルン大学でAI修士号を取得し、数々のヒット製品の開発を主導してきました。
- チーフプロダクトオフィサーの龔海(ゴン・ハイ)氏は、25年間のインターネットおよびAI業界での創業経験を活かし、ハードウェアの実装を確実にします。
このような「テクノロジー+人文科学+ビジネス」という異分野の融合が、業界のボトルネックを打破する鍵と見なされています。
まとめ:感情型AIが切り開く未来
科大訊飛と次元造物の提携は、単なる資金調達を超え、AIが私たちの生活にどのように深く入り込むかを示す新たな一歩と言えるでしょう。「感情型AI」は、これまでの機能性重視のAIとは一線を画し、人間の感情に寄り添い、心を通わせるパートナーとなる可能性を秘めています。
特に、日本のコンテンツ産業が持つIPの力は世界的に高く評価されており、この「IP+AI+ロボット」というモデルは、将来的に日本市場にも大きな影響を与えるかもしれません。中国で始まったこの感情型AIの波が、私たちの未来の暮らしをどのように豊かにしていくのか、今後の動向から目が離せません。
元記事: pcd
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