Counterpoint Researchの最新レポートによると、2026年には世界のスマートフォンSoC(System on Chip)の出荷量が前年比で7%減少すると予測されています。特に、150ドル以下の低価格帯モデルが大きな影響を受ける見込みです。しかし、この出荷量減少にもかかわらず、業界全体の総収益は二桁成長を遂げる可能性があり、市場の二極化が鮮明になりつつあります。この背景には、デバイスあたりの半導体含有量増加と平均販売価格(ASP)の上昇、そして生成AIの普及、さらにメモリ市場の構造的な変化が深く関係しています。今後のスマートフォン市場は「ハイエンド化+技術差別化」がキーワードとなりそうです。
2026年スマホSoC市場、出荷量減速と高価格化の潮流
低価格帯が苦戦する一方、業界総収益は堅調
来たる2026年、スマートフォンSoC市場は出荷量の減速という課題に直面します。特に、価格に敏感な150ドル以下の低価格帯スマートフォンは、消費者の購買意欲の低下や部品コストの上昇など複合的な要因により、需要の落ち込みが顕著になると見られています。しかし、興味深いことに、業界全体の総収益は二桁成長を達成すると予測されています。これは、高価格帯モデルの好調と、単一デバイスに搭載される半導体の質と量が増加していることに起因します。スマートフォンが多機能化し、高性能なチップが求められるようになることで、一台あたりの単価が上昇しているのです。
HBM需要が引き起こすメモリ供給の構造変化
出荷量と収益のパラドックスの背景には、メモリ市場の構造的な変化があります。データセンターにおける高帯域幅メモリ(HBM)の需要が急増しているため、半導体ファウンドリやメモリサプライヤーは、収益性の高いHBM分野へ生産能力を優先的に振り向ける傾向を強めています。この結果、従来の汎用メモリの供給が逼迫し、価格が上昇。特にコストに敏感な低価格帯のスマートフォンメーカーは、このメモリ供給の逼迫と価格上昇の直撃を受けています。一方、自社でチップを開発する能力を持つメーカーは、技術的な自律性により、このようなサプライチェーンの変動に対してより強い耐性を示しています。
主要ベンダーの明暗:Samsungが唯一のプラス成長
各社市場シェアと出荷量予測
ベンダー別の動向を見ると、MediaTekは市場シェア34.0%で首位を維持するものの、出荷量は8%減少する見込みです。Qualcommは24.7%で2位に続き、出荷量は9%減少すると予測されています。Appleは18.3%で3位につけ、出荷量の減少幅は6%と比較的抑えられています。UNISOCとSamsungがそれぞれ11.2%と6.6%のシェアで4位、5位を占めます。この中で特筆すべきは、Samsungが唯一、出荷量において7%のプラス成長を予測されている点です。
高価格帯と生成AIが市場を牽引
高価格帯市場の拡大は、業界全体の成長を牽引する重要な要素となっています。アナリストは、2026年には販売価格が500ドルを超えるモデルが市場全体の約3分の1を占めると予測しており、AppleとQualcommがこの高価格帯市場の主要な受益者となるでしょう。MediaTekも技術アップグレードを通じてこの差を縮めようとしており、Samsungは2nmプロセス技術のブレークスルーで先行を狙っています。特に、生成AI(GenAI)の普及は、デバイスの平均販売価格をさらに押し上げる要因となるでしょう。2026年には、フラッグシップモデルの端末側AI処理能力が100 TOPSに達し、高価格帯製品の約90%がこの機能をサポートすると見られています。これにより、100ドルから500ドルの中価格帯モデルとの間に明確な性能差が生まれることになります。
プロセス技術競争の激化と未来の展望
3nmから2nmへ、Samsungの先行投資
プロセス技術の競争は、今後のスマートフォン市場の勢力図を大きく左右する鍵となります。2026年は、3nmプロセスから2nmプロセスへの移行期として重要な節目を迎えます。Samsungは2nmプロセスで先行しており、2025年12月に発表される予定の「Exynos 2600」チップは、Galaxy S26シリーズに搭載され、高価格帯市場での地位を固めることが期待されています。この先行投資が、業界全体の勢力図に変化をもたらす可能性を秘めています。
「ハイエンド化+技術差別化」が進む市場
メモリコストの圧力とAI処理能力への需要が複合的に作用し、スマートフォン市場は急速に「ハイエンド化」と「技術差別化」の方向へと進化しています。単なる価格競争から、より高度な技術力と革新性を追求する段階へと移行しているのです。生成AIの性能、先進的なプロセス技術、そして自社開発チップによる差別化が、今後の市場競争を勝ち抜くための決定的な要因となるでしょう。
まとめ
2026年のスマートフォンSoC市場は、出荷量減少という逆風の中で、低価格帯の苦戦と高価格帯の活況という二極化がより鮮明になるでしょう。データセンター向けHBM需要によるメモリ供給の構造変化が低価格帯に影響を及ぼす一方、生成AIの普及と先進的なプロセス技術の進化が高価格帯を牽引します。特にSamsungが2nmプロセスで先行し、唯一出荷量でプラス成長を達成する見込みであることは、今後の市場競争において技術的優位性の重要性を示唆しています。
日本の読者にとっても、この世界的なトレンドは無関係ではありません。最新技術を搭載した高価格帯スマートフォンの動向、そしてそれを支える半導体サプライチェーンの安定性は、日々の生活やビジネスにおけるデバイス選択に大きな影響を与えることになります。今後のスマートフォン市場は、単なる機能の進化だけでなく、高度な技術競争と市場戦略が複雑に絡み合う、見どころの多い展開となるでしょう。
元記事: pcd
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