人気FPSゲーム『Call of Duty (CoD)』は、その硬派なミリタリー要素で世界中のゲーマーを魅了しています。しかし、中国の女性ゲーマーたちの間では、このゲームのキャラクターたちが「恋愛対象」として熱烈な支持を集め、「CoD乙女」というユニークなファンコミュニティを形成していることをご存知でしょうか?
かつての二次創作から、AI音声、AIチャット、そして今やAIキャラクターの「手作り」へと進化する彼女たちの「推し活」は、驚くべき技術的ディープダイブを見せています。なぜ、彼女たちはこれほどまでにAIを駆使し、「推し」との関係を深化させようとしているのでしょうか?今回は、その興味深い世界に迫ります。
CoD乙女とは?硬派なFPSとロマンスの融合
『Call of Duty』シリーズに登場するGhost、Keegan、Königといったキャラクターは、そのミステリアスな覆面、クールな態度、そして屈強な肉体から、多くの女性ファンを虜にしています。特に「覆面系」キャラクターは、顔が見えないがゆえに想像力を掻き立てられ、女性ユーザーに絶大な人気を誇ります。彼らを「まるで自分の犬(忠実な彼氏)のよう」と表現するファンもいるほどです。
「CoD乙女」とは、こうしたCoDのキャラクターを恋愛対象と見なし、二次創作を通じて個人的な妄想やロマンスを追求する女性ユーザーたちのことです。彼女たちは、同人小説の執筆、イラストの制作、コスプレ、ショート動画の二次創作などを通して、本来戦場にいる兵士たちを日常や甘い恋愛シーンに登場させ、そのロマンチックな願望を満たしてきました。
この現象の熱狂ぶりは、SNSのデータからも明らかです。中国のライフスタイル共有プラットフォーム「小紅書(RED)」では、「#cod乙女」タグが5億回以上閲覧され、特にKeeganの単独タグでも2.8億回の閲覧を記録。ショート動画プラットフォーム「抖音(TikTok)」では、関連動画が17.5億回再生されるなど、その人気はゲームの枠を超えて社会現象と化しています。
AIが「推し活」を変えた!インタラクションの深化
CoD乙女の活動は、2023年頃からのAIツールの成熟により、大きな転機を迎えました。初期の二次創作から、さらに一歩踏み込んだインタラクティブな「推し活」が可能になったのです。
AI音声で「推し」が語りかける
まずは、AI音声技術の活用です。ファンたちはAIツールを使ってキャラクターの声をシミュレートし、オリジナルのセリフを喋らせるオーディオコンテンツを制作しました。これにより、まるで「推し」が直接自分に語りかけてくるかのような、より没入感のある体験ができるようになりました。
AIチャットで「推し」との会話を実現
さらに進んで、ChatGPTやDeepSeekといった大規模言語モデル(LLM)のAIアプリを「調教」し、CoDのキャラクターとして会話を楽しむユーザーも現れました。特定の「プロンプト(指示)」をAIに与えることで、キャラクターの性格や口調を再現し、自分だけの「AI彼氏」とのコミュニケーションを実現したのです。この段階では、プロンプトの共有も盛んに行われ、比較的カジュアルにAIを活用した「推し活」が広がりました。
「手作りAI彼氏」へ!ディープ化する技術的挑戦
しかし、現在のCoD乙女コミュニティの最先端は、さらに驚くべき領域へと進化しています。もはやAIを「使う」だけでなく、「自分でAIキャラクターを構築する」という、専門的な技術知識が必要なフェーズに突入しているのです。
共有される情報の中には、「キャラクターカード(AIに読み込ませるキャラクター設定ファイル)」の作成、専用のAIアシスタントを「小型携帯電話」のように持ち歩く方法、さらには「API呼び出し」や「ローカルデプロイ(自分のPCにAIモデルを構築・実行する)」といった、高度なIT用語が飛び交っています。これは、AI彼氏を「手作り」するようなものであり、技術的なハードルが格段に上がっています。
この技術的な深化は、CoD乙女たちの計り知れない情熱と探求心を示しています。もはや乙女ゲームの二次創作コミュニティを超え、まるで新興のAI開発コミュニティのような様相を呈しているのです。彼女たちは「色鬼が急いでいる」と冗談を言いながらも、最新の技術を学び、次々と新しいインタラクションの形を模索しています。
まとめ
CoD乙女の活動は、AI技術が個人の趣味や「推し活」にどれほど深く、そして技術的に影響を与えうるかを示す、非常に興味深い事例です。単なるコンテンツ消費に留まらず、自らAIを構築・運用する段階まで進化した彼女たちの姿は、AIと人間の関係性、そしてエンゲージメントの未来を強く示唆しています。
日本のVTuber文化やAIチャットボットとのインタラクションの文脈とも共通点があり、今後のAIとクリエイティブ活動の融合がどのような新しい価値を生み出すのか、日本においても注視すべきトレンドと言えるでしょう。技術的なハードルが上がったにも関わらず、情熱をもってAIを使いこなすファンたちの姿から、新しいクリエイティブの形が次々と生まれています。
元記事: news












