PlayStation Plusの今月のフリープレイで提供された『トゥームレイダー1-3復刻版』は、その膨大なトロフィー数でSNSを賑わせました。筆者もこの話題の作品をダウンロードし、懐かしの冒険に旅立ちましたが、そこで直面したのは意外な壁でした。グラフィックが現代的に進化しても、かつてのゲームが持っていた「操作性」の特性は健在。そして、その特性こそが、レトロゲームを楽しむ上で、グラフィックの古さよりも遥かに大きな、そして時に致命的な課題となり得ることを再認識させられたのです。本稿では、『トゥームレイダー』の復刻版から見えてくるレトロゲームの魅力と、現代のプレイヤーが直面するであろう「操作性の壁」について深掘りしていきます。
『トゥームレイダー1-3復刻版』で蘇るレトロゲーム体験
驚愕のトロフィー数とPS版の謎
『トゥームレイダー1-3復刻版』は、一部のトロフィーデータサイトでバグを引き起こすほどの、膨大なトロフィー数で話題になりました。PS4版は各タイトルごとにプラチナトロフィーがある通常の構成ですが、PS5版はシルバー16個、ブロンズ268個、合計284個という、プラチナトロフィー無しの異様な構成。この数があまりにも多すぎて、一部のデータサイトの閾値を超えてしまったようです。当初、これほど多くのトロフィーが単一のグループに詰め込まれるとは、コード設計者も想定していなかったのかもしれません。トロフィーの多さやプラチナ取得の難しさから、リリースから2年間も手を出していなかった筆者ですが、フリープレイで「ただで手に入れた」という錯覚に誘われ、ついにダウンロードを決意しました。
現代に蘇ったララ・クロフト
本作は古いゲームの復刻版ではありますが、開発元のAspyrは非常に丁寧な仕事をしてくれています。予期せぬ嬉しいサプライズとして、中国語字幕が追加されており、ローカライズへの配慮が伺えます。また、「Remastered」という名の通り、解像度の向上はもちろんのこと、主人公ララ・クロフトや一部の敵キャラクターの3Dモデルが修正され、高解像度テクスチャや光影効果の改善も施されています。その結果、ゲームを起動した瞬間の印象は、想像以上に古さを感じさせないものでした。ゲーム内では、ワンボタンでオリジナルのクラシック画面と復刻版画面を瞬時に切り替えることができ、その進化を直接比較できる点も非常に興味深い試みです。これは、開発チームが当時の開発素材を一式入手できたからこそ可能になった、大規模なプロジェクトだったと推測できます。
グラフィックより手強い『操作性の壁』
「戦車式操作」と「現代操作」のジレンマ
今日のプレイヤーがより快適にプレイできるよう、本作にはスティックを基本とした「現代操作」と、オリジナル版の「戦車式操作」という2種類の操作モードが用意されています。開発側の配慮は理解できるものの、筆者にとってはどちらのモードも一筋縄ではいきませんでした。「戦車式操作」は、左右で旋回、後ろで後退という30年前の主流であり、初代『トゥームレイダー』や『バイオハザード』などもこの操作体系で設計されていました。精密な動きには適しているものの、長年のゲーム体験で現代的なスティック操作に慣れ切った脳と手には、この切り替えが非常に困難です。
では「現代操作」に切り替えれば良いのかというと、そうでもありません。キー配置がガラリと変わり、常に新しいボタン配置を意識しなければならない上、スティックが敏感すぎるため、正確な動きが難しく、横跳びのような一部の複合操作がほとんど出せず、時に苛立ちを感じました。過去の冒険を再び楽しむには、根気強く操作に慣れるしかないと、筆者は改めて決意を固めます。
30年の時を経て感じるレトロゲームの真髄
しかし、レトロゲームをプレイすることのもう一つの側面は、その「古さ」が、時の流れの速さを痛感させることにあると筆者は語ります。『トゥームレイダー』初代の発売から、すでに30年もの月日が流れました。もし1990年代からさらに30年遡れば、まだゲーム産業すら確立されていなかった時代です。60年前から現在まで、まるで一瞬のように時間が過ぎ去り、2026年を迎えたことに感慨を覚えます。当時のネットカフェや大学の寮で友人とゲームに興じた日々、そしてゲーム業界の急速な変遷を振り返り、郷愁に浸ってしまうのです。
『トゥームレイダー』を支えた開発者の軌跡
栄光と衰退 Core Designの物語
初代『トゥームレイダー』の開発元であるCore Designは、1988年にイギリスのダービーシャーで設立されました。この会社は『トゥームレイダー』シリーズで一躍有名になりましたが、その後の作品の商業的失敗によりパブリッシャーから開発権を剥奪され、最終的には2006年にその幕を閉じました。かつて起動時に表示された神秘的なロゴは、高い品質の象徴でもあったのです。『トゥームレイダー』の版権は、一時期日本のスクウェア・エニックスが所有していましたが、後にヨーロッパの大手ゲーム企業THQ Nordicの親会社であるEmbracer Groupに売却されました。現在ではAmazon Gamesとの提携により、新たな本編とリマスター版が開発される予定です。
移植・復刻で生き残るAspyrの賢明な戦略
今回の『トゥームレイダー1-3復刻版』を開発したAspyrは、その名を聞くと見覚えがあるものの、そこまで知名度が高いわけではないゲーム会社かもしれません。1996年設立のAspyrは、ゲーム業界においては長寿企業と言えます。元々は移植専門のパブリッシャーとしてスタートし、特に90年代にMacユーザーの購買力に着目。Mac向けゲームが少なかった時代にニッチ市場を深く掘り下げ、2003年にはMacエンターテインメント市場で驚異的な60%のシェアを獲得しました。その後は『Stubbs the Zombie』や『Fahrenheit(邦題:インディゴ プロフェシー)』などのオリジナルゲームも手掛けましたが、移植・復刻業務が現在に至るまで同社の主要事業であり続けています。
Macだけでなく、過去10年で巨大なゲームプラットフォームとなったiOS市場でも、Aspyrは大きな成功こそ収めていませんが、しっかりとその領域を確保しています。Embracer Groupに買収された後も、移植や復刻プロジェクトを継続しており、安定した経営状況を保っているようです。特定のニッチな分野で地道に耕し続けることは、現代のゲーム業界において、非常に賢明な生存戦略と言えるでしょう。
まとめ
『トゥームレイダー1-3復刻版』のプレイ体験は、単なる懐かしさを超え、レトロゲームが持つ独特の魅力と課題を浮き彫りにしました。グラフィックの進化は目を引きますが、かつての「操作性」が現代のプレイヤーに提示する新鮮な、そして時に挑戦的な体験こそが、復刻版の真髄と言えるでしょう。また、Core Designのように時代の波に飲まれた会社と、Aspyrのようにニッチな分野で生き残り続ける会社の対比は、ゲーム業界の歴史の奥深さを物語っています。日本のゲームプレイヤーにとっても、こうした復刻版は、過去の傑作に触れる貴重な機会であり、ゲーム文化の移り変わりを感じるきっかけとなるはずです。
元記事: chuapp
Photo by Tomasz Filipek on Pexels












