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中国自動車情報大手「汽車之家」の栄光と苦悩:理想汽車CEOが語る”競争なき時代”の終焉

Chinese automotive media Automotive digital platform - 中国自動車情報大手「汽車之家」の栄光と苦悩:理想汽車CEOが語る"競争なき時代"の終焉

中国の自動車情報サイト大手「汽車之家(Autohome)」が、今、大きな転換期を迎えています。かつては業界を席巻するほどの巨大企業でしたが、最近の業績は芳しくなく、家電大手の海爾(Haier)による買収が完了しました。理想汽車(Li Auto)の李想CEOが「2009年以降、あまりにも楽すぎた、競争がなかった」と語ったその言葉は、栄光の裏に隠された同社の深い苦悩と、変革の難しさを浮き彫りにしています。本記事では、その背景にある市場の変化と、今後の展望について詳しく解説します。

栄光からの転落:自動車情報サイトの巨人「汽車之家」の苦悩

中国のポータルサイト全盛期、汽車之家(Autohome)は圧倒的な存在感を放っていました。2009年以降の約10年間は、強力なコンテンツシステム、緻密な製品設計、そして優れた技術力によって、自動車垂直メディアの絶対的な王者として君臨。創業者である理想汽車CEOの李想氏が「最も苦痛だったのは、汽車之家が競争に直面せず、あまりにも容易すぎたことだ」と振り返るほど、その地位は盤石に見えました。

しかし、その「容易さ」が長期的な成長の足かせとなったのかもしれません。創業者の李想氏が離れて以降、汽車之家は経営者が頻繁に交代。オーストラリアの通信大手、中国平安(Ping An)を経て、今年8月27日には、家電大手の海爾(Haier)が約18億ドルで中国平安から株式の約43.0%を取得し、正式に支配権を握りました。今年の2月から半年にも及んだ買収劇は、ついに終止符を打った形です。

変革の波に乗り切れず:メディア収益の低迷と業績悪化

かつての栄光とは裏腹に、汽車之家は近年、成長のボトルネックに直面してきました。デジタルツール、自動車取引のクローズドループ、金融支援、スマートショールームなど、多岐にわたる事業変革を試みてきましたが、目覚ましい突破口を見出すには至っていません。

その一方で、中国の自動車情報市場は激化の一途を辿っています。懂車帝(Dongchedi)や易車(Yiche)といった競合が、それぞれバイトダンス(ByteDance)やテンセント(Tencent)といった巨大IT企業の強力なエコシステムと豊富なリソースを背景に攻勢をかけています。また、個人メディアやショートビデオプラットフォームの台頭も、従来の自動車コンテンツのあり方を根底から覆し、汽車之家の中核事業であったメディアサービスからの収益を圧迫。これは同社の業績悪化に直結しています。

止まらない業績悪化の波

具体的な数字を見ても、その苦境は明らかです。2025年7月31日に発表された第2四半期決算および中間期決算報告書によると、同社の第2四半期の純収益は前年同期比6.14%減の17億5,810万人民元。さらに、株主に帰属する純利益は同20.79%減の4億1,570万人民元となりました。

純利益の大幅な減少は、昨年第3四半期から加速しており、同四半期には前年同期比23.69%減、第4四半期には28.25%減と、2022年第2四半期以来最大の下げ幅を記録。「大転落」と表現されるほどの状況でした。今年第1四半期には9.60%減と一時的に改善の兆しを見せたものの、第2四半期には再び二桁の減少に戻り、投資家にとってはまさに「頭を殴られたような」衝撃を与えています。

海爾傘下での新たな挑戦:AIと新小売が未来を拓くか?

海爾の傘下に入った汽車之家は、現在、メディア事業の低迷という逆風の中、AI技術と新小売(New Retail)への変革に全力で注力しています。具体的には、オフライン店舗の展開を強化し、スマートショールームの構築やAIアプリケーションの導入を進めることで、新たな成長モデルを模索しています。

しかし、この道のりもまた、決して平坦ではありません。オフライン展開は運営コストの急増を招き、財務面での負担を増大させています。また、スマートショールームやAIアプリケーションが、果たして実際にどれほどの集客効果や収益向上に繋がるのかは、まだ市場の検証を待つ必要があります。新たな変革の探索を開始した汽車之家が成功を収めることができるのか、その行方は依然として未知数です。

まとめ

かつて中国自動車情報市場の絶対王者だった「汽車之家」の現状は、デジタル化と激しい競争がもたらすビジネスモデル変革の困難さを浮き彫りにしています。李想CEOの「競争がなかった」という言葉は、安住が長期的な衰退を招くという教訓を私たちに与えています。

海爾による買収と、AI・新小売への大規模な方向転換は、同社にとって最後の、そして最大のチャンスとなるでしょう。この変革が成功すれば、自動車情報のあり方を再定義する可能性も秘めています。日本の自動車関連メディアやポータルサイトにとっても、中国市場で起きているこれらの変化は、決して他人事ではありません。常に新しい技術とビジネスモデルを取り入れ、変化に対応し続けることの重要性を改めて示唆していると言えるでしょう。

元記事: pedaily

Photo by Ketut Subiyanto on Pexels

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