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中国酒類市場を変える「1919」:個人商店の売上を30%伸ばす新戦略

Smart liquor store Chinese New Retail - 中国酒類市場を変える「1919」:個人商店の売上を30%伸ばす新戦略

中国の酒類小売市場で今、驚くべき変革が起きています。その中心にいるのは、酒類専門チェーン最大手「1919(イーキューイーキュー)」。彼らが展開する「隔壁倉庫(ゲビーチャンクー)」という革新的なフランチャイズモデルが、従来の酒販店の概念を覆し、個人商店の売上を飛躍的に伸ばしているのです。今回は、ウクライナワイン事業を手掛ける田孝福氏の事例を通して、この「隔壁倉庫」がいかにして中国酒類市場の新小売を牽引しているのか、その戦略と成功の秘密に迫ります。

中国酒類小売の巨人「1919」とは?変革の波に乗る個人事業家

34歳の田孝福氏は、7年間にわたりウクライナワインの輸入・販売を手掛ける実業家です。ウクライナ留学中にその独自のワイン醸造文化に魅せられた彼は、帰国後に貯めた資金でウクライナのワイナリーを買収。妻と共に自社ブランドを立ち上げました。

転機が訪れたのは2018年。田氏は中国の酒類小売大手「1919」のサプライヤーとなり、その小売革命を目の当たりにします。それまで苦労して販路を開拓し、プロモーションを行っていたウクライナワインが、「1919」の棚に並んだ途端、売上が30%以上も急増。長らく停滞していた販売状況は一気に好転しました。この成功に喜びを感じる一方で、田氏には不安もよぎりました。酒類小売業界に押し寄せるチャネルのフラット化、そしてインターネット化の波。この抗しがたいトレンドの中で、彼のような従来の小売業者は、事業の成長だけでなく、生き残りをかけた重要な選択を迫られていたのです。

田氏は単なるサプライヤーに留まらず、この変革の渦中に飛び込むことを決意します。当時、「1919」のフランチャイズ加盟は非常にハードルが高く、厳しい審査を要しましたが、彼はその機会を虎視眈々と狙っていました。

「隔壁倉庫」:1919が描く新小売の未来図

そして2019年、ついに田氏にその機会が巡ってきます。「1919」が「品質」と「効率」を旗印に掲げ、膠着状態にあったチャネル市場に新たな活路を開くべく立ち上げたのが、新フランチャイズモデル「隔壁倉庫」です。このモデルは、小型の酒販店を対象に、新たな発展の道を切り開きました。広州地域での説明会が終了するや否や、田氏はすぐさま新塘地区で最初の「隔壁倉庫」店舗の経営権を獲得。彼は傍観者から、変革の主役へと転身したのです。

※画像提供:1919

地元の有力な東欧ワイン輸入業者である田氏は、「私が見ているのは今ではなく、未来です」と語ります。彼は、将来の酒類販売がますますオンラインに依存するようになると確信していました。しかし、個々の小規模店舗が独自にオンラインシステムを構築することは困難です。そこで彼は、新しく購入した店舗を「隔壁倉庫」へと改装。これにより、これまでインターネットを活用できなかった事業者が、コストをかけずにオンラインビジネスに参入できるようになったのです。

「隔壁倉庫」は、スタイリッシュで上質な内装が特徴で、多くの中・高級住宅地に囲まれており、大きな集客力を持っています。田氏は、周辺のコミュニティや飲食店に目を向け、きめ細やかな運営で売上を伸ばしました。特に、茅台(マオタイ)や五粮液(ウーリャンイエ)といった中国の主要銘柄の安定供給、専門的なデジタルシステム、そして「1919」の強力なブランド力に支えられ、彼の「隔壁倉庫」は順調に業績を伸ばしています。

田氏は「この店の売上の7割は『1919』の看板によるものです。契約上の最低販売目標などあっという間に達成してしまうので、もっと仕入れたいほどです」と語ります。

※画像提供:1919

今年8月、「1919隔壁倉庫」の広東省での加盟説明会に再度招かれた田氏は、楊陵江(ヤン・リンジアン)会長の言葉に強く共感しました。「我々は今、『1919』と協力しているのではなく、一つのトレンドと協力しているのだ」。この言葉は、伝統的な卸売業者の価値が薄れ、茅台のような大手ですら、末端の販売店を持つ業者に割り当てを振り分け始めている現状を的確に表していました。このチャネル革命は数年前から兆候を見せていましたが、その産業や従事者への深い影響は、まさに今始まったばかりなのです。

長期主義が導く成功:未来を見据える1919の挑戦

このチャネル変革の嵐の中、いかにして自らの最適な位置を見つけるか。それは田氏と「1919隔壁倉庫」にとってのビジネスにおける核心的な問いでした。その問いを解く鍵は、チャネル効率の向上と、オンラインとオフラインの統合にあります。

「隔壁倉庫」というモデルを紐解くと、「1919」が堅実に成長する秘訣が見えてきます。「隔壁(隣)」は消費者にとって手の届く距離を意味し、オンラインで注文すれば19分で酒を届けるという迅速な配送サービスを表しています。また、「倉庫」という名前ながら在庫負担はゼロ。店主は専用アプリで「1919」にいつでも発注でき、一本からでも仕入れることができます。

要するに、「隔壁倉庫」計画とは、従来の小型酒販店に新たな能力を与え、変革を促すものです。加盟店は「1919」の強力なサプライチェーンと連携し、特定の商品しか扱えなかった状態から、あらゆる酒類を取り扱うフルラインナップ店舗へと進化します。多くの酒造企業と密接な協力関係を結んでいる「1919」は、主力商品の多くを自社チャネル限定で流通させており、各「隔壁倉庫」は有名銘柄の割り当てや市場価格の差益を享受できます。さらに、オンライン注文はデジタルシステムによって自動的に店舗に振り分けられ、新たな売上増に繋がります。加えて、「隔壁倉庫」の棚には「1919」のシステム外の商品も置くことができ、「1+1>2」の効果を生み出しています。

「1919」のこれまでの直営店管理とは異なり、「隔壁倉庫」の管理方法は「誰が加盟し、誰が管理するか」という方針です。画一的な管理を押し付けるのではなく、地域の経営者の資源を活性化させ、店主の意欲を最大限に引き出すことで、それぞれの個性を存分に発揮させています。この経営哲学の転換は、「1919」という「鉄の軍団」に柔軟性をもたらしています。今や、「1919隔壁倉庫」計画は、中小の酒類事業者が夢を追う第一の選択肢となり、「千の都市に万の店舗」という壮大な目標が着実に実現しつつあります。

田氏は、今こそ「隔壁倉庫」に加盟する最高のタイミングだと考えています。「今は『1919隔壁倉庫』が基盤を築き、全国展開を本格化させる重要な時期であり、爆発的なエネルギーを蓄えています。各地域の『隔壁倉庫』にはある程度の排他性があるので、今後、加盟したくてもできない状況になるかもしれません。ましてや、今の政策はこれほど優遇されていますから」と語ります。

実際、今年の加盟説明会で「1919」の最新政策を聞いた田氏は、にこやかに頷きました。「今の政策は、私が加盟した時よりもさらに良くなっていますね」。

※画像提供:1919

現在の加盟店は、毎月1~2箱の「飛天茅台」の割り当てを受けられるだけでなく、従業員2名分の給与補助と家賃補助まで「1919」から受けられるとのことです。こうした具体的な支援は、彼が当初下した選択が正しかったことを一層確信させています。

「必ず儲かる」長期主義の勝利

「1919」は、既存の商業形態を変革するパイオニアとして、多くの疑問や批判に直面してきました。しかし、困難を恐れず、混乱に惑わされることなく、今や1000店舗以上を擁する世界最大の酒類専門チェーンへと成長し、その事業内容を拡大し続けています。時間はその答えを既に示しています。

説明会当日、楊陵江会長が外部からの疑問に答え、「隔壁倉庫」の展望と青写真を描く様子を壇下で聞いていた田氏は、深く感動しました。その瞬間、彼は創業当初の野心と情熱を思い出したほどです。

※画像提供:1919

創業15年を迎える成熟した企業でありながら、「1919」は若々しい活力を失うことなく、新たな期待と使命を胸に、新たな市場を開拓しています。「隔壁倉庫」計画は、「1919」のもう一つの自己革新であり、この酒類新小売のリーダーは、新たな時代において、その栄光と夢を継承し続けているのです。

懇親会の席で、田氏は楊陵江会長とWeChatを交換しました。「彼は大胆で行動力のある実業家で、気前が良く、付き合う価値のある人物です」と、田氏は楊会長を高く評価しています。彼は「1919」のビジネスモデルだけでなく、楊会長の人柄そのものに惚れ込んでいるのです。「このようなリーダーについていけば、必ず儲けられると信じています」と田氏は語ります。

「1919」の企業姿勢に、田氏は「長期主義者の勝利」を見出しています。彼は、「隔壁倉庫」を開設して以来、システム全体が少しずつ最適化され、向上していくのを肌で感じています。チームの充実、数千店舗の規模、そしてアリババからの資本支援。これらすべてが、田氏に大きな安心感を与えています。

「『1919』がトップレベルの設計を担当し、我々が現場での探索を担当する」。田氏は、このバリューチェーンにおける自身の立ち位置を明確にしています。中国における酒類産業は常に成長産業であり続けると同時に、将来的には90%以上がオンライン注文になると彼は予測しています。彼のような先行倉庫は、今後、販売拠点からサービス拠点へと転換し、より質の高いサービスを市場の最前線に届け、顧客により良い体験を提供することで、酒類業界に真の変革をもたらそうとしているのです。

まとめ

中国の酒類小売大手「1919」が展開する「隔壁倉庫」モデルは、デジタル技術と強力なサプライチェーンを駆使し、個人の酒販店に新たな生命を吹き込む革新的な新小売戦略です。在庫リスクゼロ、19分配送、そして大手銘柄の安定供給といったメリットは、田孝福氏の事例が示すように、加盟店の売上を飛躍的に向上させています。

「1919」の成功は、単なるフランチャイズ展開に留まらず、各店主の主体性を尊重する柔軟な経営哲学と、オンライン化という時代の潮流を捉えた「長期主義」の勝利と言えるでしょう。このモデルは、中国のEC化が進む中で、いかに中小企業が大手プラットフォームの恩恵を受け、生き残っていくかの示唆に富んでいます。日本においても、小売業界のデジタルシフトや地域密着型店舗の活性化が課題となる中、「1919隔壁倉庫」のビジネスモデルは、新たな可能性を模索する上で大いに参考となるはずです。

元記事: kanshangjie

Photo by jefe king on Pexels

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