第15回全国運動会(全運会)が8月1日に開催100日前を迎え、中国の通信大手・中国聯通(China Unicom)がこの一大スポーツイベントを最先端の通信技術で支えています。同社は「ネットワークの刷新」「技術の刷新」「サービスの刷新」を掲げ、5G-Advanced(5G-A)ネットワークや8K超高精細伝送、VRを活用した没入型体験など、革新的なソリューションを提供。粤港澳(広東省、香港、マカオ)の3地域にまたがる大規模な大会を、どのように「スマート全運」へと変革しているのか、その全貌に迫ります。
スポーツの祭典を支える「国家代表チーム」
「全運会」とは、中国国内で4年に一度開催される、日本の国民体育大会に相当する国内最大の総合スポーツイベントです。今回の第15回大会は、粤港澳(広東省、香港、マカオ)の3地域にまたがり、124もの競技会場を使用し、史上最多の観客動員が見込まれる大規模なものとなります。
この歴史的な大会を成功に導くため、中国聯通は「デジタル情報運用サービス国家代表チーム」および「デジタル技術融合イノベーションの先頭ランナー」という企業使命を掲げ、強力なデジタル新動力を注入しています。同社は、単なる通信インフラの提供にとどまらず、大会の運営から観戦体験まで、あらゆる側面をデジタル技術で「スマート化」することを目指しています。
革新の「三本柱」:ネットワーク、技術、サービスの刷新
中国聯通が今回の全運会で掲げるのは、「ネットワークの刷新」「技術の刷新」「サービスの刷新」という三つの柱です。これらを通じて、未来のスポーツイベントのあり方を提示しようとしています。
ネットワークの刷新:超高速5G-Aが実現する没入体験
今回の全運会の通信基盤は、従来の5Gをさらに進化させた5G-Advanced(5G-A)ネットワークが中心です。重点競技会場では、3.5GHz帯の200M/300Mという広大な帯域と、3CC(3キャリアコンポーネント)キャリアアグリゲーション技術を組み合わせることで、下り速度は最大5Gbpsに達します。これは従来の5Gネットワークと比較して3倍以上の速度向上であり、8K超高精細映像のリアルタイム伝送を可能にします。
これにより、観客はVRデバイスを装着するだけで、「まるで最前列にいるかのような」没入感あふれる観戦体験が可能になります。実際に、深圳龍崗国際自転車競技場などで実施されたテストでは、中国聯通が導入した第三世代スマート基地局(4G/5Gデュアルモード、5G-Aアップグレード対応、ピーク速度3Gbps)が「ゼロクレーム、ゼロ事故」の目標を達成し、その性能と安定性を実証しました。
技術の刷新:スポーツ観戦・運営を変える「黒科技(ハイテク)」
中国聯通の「黒科技」は、観戦体験だけでなく、大会運営にも深く関わっています。
- 超低遅延の放送・テレビ伝送専用網: 湾区に構築された400G+OXC(光クロスコネクト)全光ネットワークを基盤とし、香港・マカオを含む96会場間で1〜3msという超低遅延の映像伝送を実現。これにより、メディアは現場の熱気を瞬時に世界に伝えることが可能になります。
- クラウド中継プラットフォームと自由視点技術: 競技信号をクラウドにアップロードすることで、5G-Aの自由視点技術と組み合わせ、視聴者は好きな角度から試合を自由に視聴できる没入型観戦体験を提供します。
- MOC/TOCプラットフォームによるスマート運営: 大会組織委員会向けには、粤港澳3地域19都市105会場のデータを集約する「MOCプラットフォーム(指揮センター)」を構築。気象、交通、医療などの重要情報をリアルタイムでモニタリングし、階層・部門を超えた指揮・调度を可能にします。また、「TOC中枢神経システム」はネットワークや設備の状態をリアルタイムで監視し、「ゼロエラー、ゼロ事故、ゼロ遅延」の保障システムを構築しています。
サービスの刷新:選手・観客・運営を強力サポート
中国聯通は、選手、観客、運営関係者それぞれのニーズに応じたきめ細やかなサービスも提供します。
- 選手・関係者向け: 選手村、練習会場、主要観光地、交通幹線など、大会関連エリアのネットワークカバー率を全面的に強化。特に交通幹線では5Gが完全カバーされ、4K/8Kライブ配信や自メディアの多チャンネル通信も遅延なく利用可能です。
- 観客向け: 各会場には通信サービス専用デスクが設置され、ビジネス相談や手続きに対応。また、粤港澳3地域で共通利用できる「湾区カード」を提供し、シームレスな通信(データ通信共有)と交通利用を可能にすることで、広東省と香港・マカオを行き来する観客の利便性を高めます。
まとめ:スマートスポーツの未来と日本への示唆
今回の全運会における中国聯通の取り組みは、スポーツイベントが単なる競技の場ではなく、最新技術のショーケースであり、社会インフラの進化を加速させる実験場となっていることを示しています。5G-Aの導入による超高速・低遅延通信は、スポーツ観戦のあり方を根本から変え、遠隔地にいながらにして、まるで現地にいるかのような体験を可能にしました。
中国がこのように大規模イベントを通じて最新技術を実用化し、その運用ノウハウを蓄積していることは、日本が今後開催する国際的なイベントや、スマートシティ、スポーツDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していく上で、多くの示唆を与えてくれるでしょう。通信技術がスポーツの未来をどう切り開くのか、中国の動向から目が離せません。
元記事: 科客,主见不成见