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中国太陽光大手、好調IPOを自主撤回!「正泰安能」の戦略転換の真意とは?

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中国の巨大家電メーカーである正泰電器(Chint Electric、証券コード:601877)の傘下企業である正泰安能(Chint Anneng)が、2025年9月1日、上海証券取引所メインボードへの新規株式公開(IPO)申請を自主的に撤回するという異例の発表を行いました。通常、IPO撤回は企業の業績不振を連想させがちですが、正泰安能の場合は真逆。好調な事業展開と予想を上回る急速な業績成長、そして企業全体の戦略的再編がその背景にあると説明されています。市場関係者は、この動きを単なる撤回ではなく、正泰安能の未来を見据えた大胆な戦略転換と捉えており、その真意に注目が集まっています。

驚きのIPO自主撤回:好業績の裏にある戦略とは?

正泰安能は、2015年に設立された家庭用太陽光発電事業に特化した企業です。デジタル化されたサービス志向の家庭用総合エネルギーサービスプロバイダーとして位置づけられ、2023年には正式に目論見書を提出し、60億元(約1200億円)の資金調達を目指していました。しかし、今回のIPO申請の自主撤回は、同社の事業が順調に発展し、業績が急速に成長していること、および親会社である正泰電器全体の事業展開を総合的に考慮した結果であると公表されています。この撤回が、親会社の生産経営活動や財務状況に重大な悪影響を与えることはないとも明言されています。

市場分析では、この自主的なIPO申請撤回は、正泰安能の純利益規模が、子会社の上場に関する特定の利益規模の上限規定に近づいたことと関連している可能性が指摘されています。つまり、あまりに好調すぎたことが、かえって上場戦略の見直しを促したという見方もできるでしょう。

業界平均を凌駕する成長率:正泰安能の財務実績

正泰安能の成長は、親会社である正泰電器の業績を牽引する重要な原動力となっています。正泰電器が2025年8月30日に発表した2025年上半期報告書によると、正泰電器の純利益は前年同期比32.9%増の25.54億元(約510億円)を達成しました。このうち、正泰安能は売上高147.98億元(約2960億円)で前年同期比15.58%増、純利益は19.01億元(約380億円)で前年同期比49.80%増と驚異的な伸びを示しています。

ちなみに、Windデータによると、A株上場企業5424社の同期の総売上高は前年同期比0.04%増の34.99兆元、純利益は前年同期比2.39%増の2.99兆元でした。正泰安能の売上高と純利益の伸び率は、いずれも市場全体の平均水準を大幅に上回っています。

逆境に強いビジネスモデル:中国太陽光産業の現状と正泰安能の優位性

2025年上半期の中国太陽光発電産業は、依然として深い調整期にありました。産業チェーン全体での生産能力過剰、世界的な需要の一時的な減速、製品価格の持続的な下落に加え、国際的な貿易保護政策や在庫評価損などの要因により、主流モジュールや補助材料を代表とする多くの企業は赤字傾向が続いています。実際、8月27日までに中間報告を公表した太陽光発電関連の上場企業57社のうち、約40%にあたる22社が赤字状態でした。

このような厳しい市場環境の中で、正泰安能は下流の発電所開発・運営に特化することで差別化された優位性を示しています。6月末時点で、同社の累計家庭用発電所設備容量は24.93GWに達し、上半期には147.21億kWhの発電量を精算。売電収入は48.88億元(約970億円)で、前年同期比43.48%増を記録しました。これは、供給過剰に苦しむ上流・中流企業とは異なる、安定した収益モデルが成功していることを示しています。

中国のエネルギー変革と政策支援

現在、中国のエネルギー構造は深い変革期を迎えています。「第14次五カ年計画」期間中、中国は世界最大かつ最速で発展する再生可能エネルギーシステムを構築し、発電設備容量に占める再生可能エネルギーの割合を40%から約60%にまで引き上げました。総電力消費量のうち、約3分の1が「グリーン電力」から供給されています。

今年に入り、中国政府は「新エネルギー系統連系電力量市場化改革深化と新エネルギー高品質発展促進に関する通知」や「グリーン電力直接取引の秩序ある推進に関する通知」、「仮想発電所発展加速に関する指導意見」など、複数の政策を発表しました。これらの政策は、新エネルギー企業が総合エネルギーサービスプロバイダーへと転換・アップグレードすることを強く後押ししています。

IPO撤回は戦略転換の一歩:未来への展望

今回のIPOプロセスの中止は、正泰安能の戦略転換の重要な一歩と見ることができます。これにより、同社は分散型太陽光発電市場においてより柔軟な事業展開が可能となり、将来的には仮想発電所(VPP)、スマートマイクログリッド、エネルギー・アズ・ア・サービス(EaaS)といった新興分野への参入に注力していく方針です。

正泰安能は、180万基を超える家庭用太陽光発電所の運営実績を通じて培った豊富な経験を活かし、中国のエネルギー変革の最前線で新たな価値を創造していくことでしょう。市場の逆風をものともせず成長を続ける正泰安能の動向は、今後の中国のエネルギー産業、ひいては世界の再生可能エネルギー市場に大きな影響を与える可能性があります。

元記事: pedaily

Photo by Kindel Media on Pexels

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