世界中で絶大な人気を博したデッキ構築型ローグライトゲーム『バビロン(Balatro)』。その驚異的な成功の裏で、単独開発者のLocalThunk氏が衝撃的な声明を発表しました。なんと、累計売上が約100億円(5億人民元)に達し、彼の手元には約40億円(2億人民元)もの大金が入ったにも関わらず、「もう無理だ、趣味のペースに戻りたい」と語ったのです。莫大な富と名声を手に入れたクリエイターが、なぜこのような選択をしたのでしょうか? 今回は、その背景にあるゲーム開発の過酷な現実と、クリエイターとしての純粋な情熱を深掘りします。
巨額の成功と開発者の告白
「ゲーム業界で締め切りに追われる残業は避けられない」と言われる中、『バビロン』のLocalThunk氏は、まさに「金があるからできるワガママ」とも言える選択を示しました。2025年9月12日に公開された公式書簡で、彼は今年予定されていたバージョン1.1のアップデートを約束通りにリリースできないこと、そして今後の開発ペースを大幅に落とすことを表明しました。
「当初の約束を守れず、申し訳ありません。正直なところ、1.1アップデートの期日をそもそも設定すべきではありませんでした」と語るLocalThunk氏。彼は自身を「何かをいじくり回すのが好きな、本質的にはアマチュアの愛好家」と位置づけ、プロのゲーム開発につきまとう締め切りとプレッシャーが耐え難いと直言しました。
「ゲームがリリースされなければもっと幸せだった」本音
『バビロン』は、500万本以上の売上を記録し、累計収益は約100億円(5億人民元)に達しました。モバイル版だけでも440万ドル以上を売り上げ、TGA(The Game Awards)などの大賞にもノミネートされるなど、文字通り「名声と利益」を両方手に入れたと言えるでしょう。プラットフォームやパブリッシャーの手数料を差し引いても、この単独開発者には少なくとも約40億円(2億人民元)が入ったと推定されています。
しかし、LocalThunk氏は、ゲームの成功直後から後悔の念を抱いていたことを明かしています。昨年12月の英GQ誌のインタビューでは、「このゲームは信じられないほどの方法で私の人生を変えてくれ、感謝している。しかし、以前の日々が恋しい。ゲーム制作がただのリラックスできる趣味だった頃が。もし『バビロン』がリリースされなかったら、もっと幸せだったかもしれないとさえ思うことがある」と告白しました。
彼は『バビロン』による収入で経済的な自由を手に入れ、今すぐにでも引退できると認めつつも、ゲームリリース前後の一年が人生で最もストレスの多い時期だったと振り返ります。「もし『バビロン』の後に別のゲームを作るとしても(今のところ考えていないが)、誰にも見せないかもしれない。それは私にとってカタルシスになる。ゲームをPCのデスクトップにあるフォルダにしまい込み、自分だけで楽しむだろう」と語っています。
過酷な開発スケジュールと趣味への回帰
LocalThunk氏は、2023年夏に『バビロン』を公開して以来、リリース前後の様々な苦難を経験してきたと述べています。「2024年2月の1.0バージョンリリース後、すぐに大規模なバランス調整パッチ(1.0.1)に取り掛かり、続いてモバイル版の移植作業に追われました。2024年末にモバイル版がリリースされた時には、もう完全に燃え尽きていました」
モバイル版リリース後、数ヶ月間休養を取り、2025年初頭からようやくゆっくりと仕事に戻り始めたものの、彼は再び趣味としてゲームを作る道を選びました。「プロジェクト開始当初と同じように、愛好家としてこのゲームを作っています(毎日数時間程度で、1.1アップデートに急かされることはありません)。しかし、このやり方はリリース前の1日12時間体制よりもはるかに遅いことが分かりました」
「今でもあの可愛らしいジョーカーカードを描くのが好きですし、ゲームに実装したいアイデアやテストしたいことを書き込んだノートを持ち歩いています。幸いなことに、私はこれをまだ趣味として捉えていますが、今年中にリリースするために急いで、再び過酷な労働状態に陥ることを考えると、とても嫌な気持ちになります」とLocalThunk氏は打ち明けます。
彼は、創作活動において無理強いされることを嫌い、ゲーム開発を趣味として続け、以前のように自分の好きなことをゆっくりとやりたいと語ります。「私はこれまで、いかなるクリエイティブなプロジェクトにも締め切りを設定したことがありません。それが私の創作プロセスにとってどれほど重要であったかを今、改めて実感しています。自分の好きなように働き方を選べることは幸運です。私にとって最高の『働き方』とは、毎日キーボードに向かいたくなり、心身ともに健康でいられるようなものです。5年後もゲーム開発への情熱が今と同じであることを願っています。1.1バージョンがこのゲームの最後の更新ではないことを望んでいます」
減速の背景とコミュニティからの期待
LocalThunk氏はコミュニティに対し、バージョン1.1のリリースは必ず行われるが、固定されたスケジュールは設けないと保証しました。「準備ができ次第、すべてのプラットフォームで無料アップデートとして提供されます。1.0バージョンと同様に、リリース後にはいくつかの調整が必要になるかもしれませんが、今年中のリリースは間に合いません」
開発者のこの「ワガママな減速」の選択は、実は現実的な考慮も含まれています。 LocalThunk氏にはスタジオを拡大するつもりはなく、しかしコミュニティからは日々、膨大な数の要望が寄せられています。「過去のプレイ履歴とシード値を記録する機能が欲しい。いつもシード値を保存し忘れるから」といったプレイヤーからのフィードバックをはじめ、無限モードのバランス調整、特定のカードの改善、PC版とモバイル版のデータ共有、サンドボックスモード、黄金ベットプレイの新しさの欠如など、そのリストは中規模チームでも対応を躊躇するほどの長さです。
ある意味、LocalThunk氏の「任性(わがまま)」の背景には、ゲームの長期的な運営に対する彼なりの取捨選択があると言えるでしょう。彼は、自身の健康と創作の情熱を最優先し、無理なくゲームを育てていく道を選んだのです。
まとめ
LocalThunk氏の決断は、インディーゲーム開発者にとって大きな示唆を与えます。商業的成功が必ずしもクリエイターの幸福に直結しないこと、そして創作活動における自己のペースと情熱の維持がどれほど重要であるかを示しています。約100億円という巨額の富を得てもなお、自身の創作スタイルを貫こうとする彼の姿勢は、多くのゲーム開発者やクリエイターに勇気を与えるとともに、現代の過酷な労働環境に一石を投じるものとなるでしょう。『バビロン』の今後の展開は遅くなるかもしれませんが、彼の作り出す作品が、これからも私たちに喜びを与え続けてくれることを期待せずにはいられません。
元記事: gamelook
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