Home / テクノロジー / ゲーム / 「バイオショック」クリエイターが語るゲーム叙事の未来

「バイオショック」クリエイターが語るゲーム叙事の未来

artificial intelligence brain game developer working - 「バイオショック」クリエイターが語るゲーム叙事の未来

数々の名作ゲームを手がけ、特に『バイオショック』シリーズでその名を馳せたクリエイター、ケン・レヴィン氏が、ゲーム叙事の未来について語りました。氏が現在手掛ける新作『Judas』では、プレイヤーの選択が物語に深く影響するインタラクティブなストーリーテリングの可能性を追求しています。ゲーム業界はグラフィックや制作面で限界に近づきつつあると言われる一方で、インタラクティブな物語体験のポテンシャルはまだ十分に発掘されていません。レヴィン氏は、カットシーンに頼らない、プレイヤー自身が物語を動かす体験こそがゲームの真髄だと強調し、その実現に向けた課題や、生成AIがゲーム叙事に与える影響について深い洞察を披露しました。

「バイオショック」の生みの親が語る、ゲーム叙事の「未熟さ」と「可能性」

「ストーリーをプレイヤーに見せるのは簡単だが、彼らを物語に巻き込み、その参加にどう反応するかは非常に難しい」と語るケン・レヴィン氏。特にカットシーン(過場アニメーション)については、その非インタラクティブ性から長年疑問を抱いてきたといいます。新作『Judas』の長期開発の背景には、プレイヤーの決定にゲームがどう応答するか、その試行錯誤に多大な時間を費やしたことがあるそうです。

インタラクティブ性がもたらす「困難」と「利点」

レヴィン氏は、50年以上の歴史を持つゲーム業界を「まだ成熟しきっていない」と表現します。映画業界が50周年を迎える頃には『市民ケーン』のような傑作が誕生し、その真髄を掴んでいたのに対し、ゲーム業界はまだその域には達していないと指摘。しかし、これを「バグではなく特性」と捉え、未開拓の可能性に胸を膨らませています。

インタラクティブな叙事こそが、ゲームというメディアのユニークさであり、最大の利点だとレヴィン氏は力説します。映画監督が観客とストーリーをインタラクトさせようとすれば非常に困難である一方、ゲームはプレイヤーの参加欲求に応え、彼らの決定が重要であると感じさせることで、一人ひとりが異なる体験を得られるようにすべきだと語ります。「もしそれができないなら、映画を作るしかない」と、ゲーム固有の価値を強調しました。

プレイヤーの「自由」と物語の「整合性」:新作『Judas』の挑戦

没入型インタラクティブ演劇のように、俳優の即興性によってプレイヤーの行動にリアルタイムで反応する体験は確かに魅力的です。しかし、ゲームにおいては「人間の脳」がないため、コンピューターが即興で反応することはできません。レヴィン氏のチームは、『Judas』においてプレイヤーの一連の行動を認識し、それに基づいてキャラクターがコメントをしたり、物語が変化するシステムを構築しています。

生成AIは万能ではない?現状の限界と開発への影響

この課題を解決する手段として注目される生成AIについて、レヴィン氏はその強力さを認めつつも、現状では限界があると考えています。「持続性」の理解が浅く、例えばAIが作成した動画でキャラクターがUターンした場合、AIはそのキャラクターがどこから来たかを「覚えていない」と指摘。優秀な20ページの映画脚本をAIが書けないのは、一貫した物語の構築や連続したシーン描写がまだ困難なためだといいます。

レヴィン氏のチームは、『Judas』開発において生成AIをバグデータベースの構築や分析データの整理といった限定的な用途にのみ使用し、コンセプトアートなどには著作権問題の懸念から一切用いていないそうです。生成AIの未来の可能性は認めつつも、現段階ではゲーム開発における用途に大きな感銘は受けていないと語りました。

広がる自由度と物語の整合性:破滅寸前の宇宙船で何をすべきか?

プレイヤーに広い探索空間と自由を提供することと、物語の緊迫感を両立させることは、ゲーム叙事における大きな課題です。『Judas』の舞台はまさに崩壊寸前の宇宙船であり、プレイヤーはそこから脱出する必要があります。この設定の中で、メインストーリーと関係ない寄り道をプレイヤーが延々と続けてしまえば、物語の説得力が失われかねません。

レヴィン氏は、この問題に「万能な答えはない」としつつも、無用なトラブルは避けるべきだと述べます。マーベル映画で頻繁に「宇宙滅亡の危機」が語られすぎて、最終的にリスクが意味をなさなくなる現象に例え、プレイヤーにリスクを感じさせつつも、ゲーム内で自由に探索できるバランスを追求する難しさを語りました。プレイヤーが自由に動き回りながらも、その行動が物語に意味と重みをもたらすような、新たなゲーム体験の創造にケン・レヴィン氏とそのチームは挑戦し続けています。

まとめ:ゲーム叙事の未来へ:プレイヤー主導の物語が紡ぐ新たな体験

『バイオショック』シリーズで物語の奥深さを示したケン・レヴィン氏は、その進化を止めることなく、新作『Judas』でゲーム叙事の新たな地平を切り開こうとしています。彼の視点は、カットシーンに頼る受動的な物語から、プレイヤーの選択と行動が直接的に物語を駆動する能動的な体験へとゲームを昇華させる可能性を示唆しています。生成AIの進化も目覚ましいものがありますが、現段階では人間のクリエイティブな物語構築力に置き換わるものではなく、むしろ開発をサポートするツールとしての役割が期待されます。

日本のゲーム業界も、独自の進化を遂げてきましたが、レヴィン氏のような先駆者の挑戦は、世界中の開発者にとって大きな刺激となるでしょう。プレイヤーが自分だけの物語を紡ぎ、その選択がリアルタイムで世界に反映される未来のゲーム体験は、私たちの想像をはるかに超える感動と没入感をもたらしてくれるはずです。今後のインタラクティブゲームの進化、そして『Judas』がもたらすであろう新しい体験に、期待せずにはいられません。

元記事: chuapp

Photo by Mikhail Nilov on Pexels

タグ付け処理あり:

メーリングリストに登録

毎週のニュースレターで最新情報をキャッチアップ。今すぐ登録して、大切な情報を逃さずチェック!

利用規約に同意します

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

AI特集

メーリングリストに登録

毎週のニュースレターで最新情報をキャッチアップ。今すぐ登録して、大切な情報を逃さずチェック!

利用規約に同意します

関連リンク

にほんブログ村 ニュースブログ ITニュースへ