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中国ゲーム法「大変革」の年?2025年、業界を揺るがした5大事件

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2025年は中国のゲーム業界にとって、法制度が大きく転換した「変革」の年でした。単なる見た目の模倣論争から一歩進み、AI学習データの著作権、AIモデルの構造保護、そして越境税務や仮想財産の法的位置付けまで、司法がゲームビジネスの「実質」に深く切り込むようになりました。今回は、上海のゲーム専門弁護士が選ぶ「2025年ゲーム法十大影響力事件」の中から、特に日本の読者の皆様にご紹介したい5つのトピックを厳選しました。

AI開発と知的財産の新たな地平

これまで漠然としていたAIに関する権利の境界線が、2025年には具体的な判例を通じて明確化されました。

【事件1】上海初のAI学習データ著作権侵害判決「美杜ーサ」事件

2025年11月、上海市でAI学習における著作権侵害を問う画期的な判決が下されました。あるユーザーが、人気アニメのキャラクター「美杜ーサ」の画像を20枚以上無許可でAIに学習させ、キャラクター専用のLoRAモデルを作成・公開した事件です。裁判所は、訓練段階での画像複製行為と、モデルを公開した行為が、それぞれ複製権と情報ネットワーク伝播権を侵害すると認定し、ユーザーに5万元(約100万円)の賠償を命じました。

この判決の最大のポイントは、AI生成物の「出力」だけでなく、「入力(訓練データ)」の合法性を重視した点です。これまでのゲーム業界では、「最終的な出力が似ていなければ問題ない」「内部での訓練なら大丈夫」といった認識が曖昧に残っていましたが、この判決は「許可なく他者の作品を訓練に利用した時点で著作権侵害が成立する」という明確なラインを引きました。日本のゲーム開発者にとっても、AIを用いた美術制作パイプラインにおいて、訓練データの「クリーンさ」の確認が喫緊の課題となるでしょう。

【事件2】AIモデル「構造とパラメータ」保護を認めた不正競争判決

2025年3月、北京知識産権法院は、AIモデルの「構造とパラメータ」を不正競争防止法で保護する全国初の判決を下しました。この事件は、TikTokを運営するByteDanceが開発した「変身漫画」エフェクト(大量の手描き漫画データと実写データでAIを訓練)に対し、B612咔叽Appが機能が酷似した「少女漫画」エフェクトをリリースしたことに端を発します。技術分析の結果、両者のモデル構造や核心パラメータが91.7%も類似していることが判明。B612側は独自開発の記録を提示できず、最終的に不正競争と認定され、160万元(約3200万円)の賠償を命じられました。

この判決は、AIモデルの「構造とパラメータ」が不正競争防止法上の保護対象となることを明確に示しました。ゲーム業界ではAI NPCやプロシージャルコンテンツ生成(PCG)、ディープラーニングを活用したゲームAIの研究開発が加速しています。これらの技術の核心は、公開されているアルゴリズムだけでなく、膨大な訓練を通じて最適化されたモデルパラメータにあります。今回の判決は、多大な投資をして開発されたAIモデルの核心部分が法的に保護されるという安心材料となり、ゲームAI開発をさらに後押しするでしょう。

国際ビジネスとデジタル資産の法整備

グローバル化が進むゲーム市場において、越境ビジネスやゲーム内資産に関する法整備も急速に進展しました。

【事件3】友塔ゲームが日本で約18億円追徴課税:越境税務の厳格化

2025年2月、人気SLG『Mafia City』を運営する中国のゲームメーカー友塔ゲームが、東京国税局から約18億円の巨額追徴課税を受けたことが報じられ、業界に衝撃を与えました。友塔ゲームは香港法人を経由して日本ユーザーにサービスを提供し、日本の消費税申告を自主的に行っていませんでした。しかし、東京国税局は日本の新税収協定に基づき、シンガポール税務局からデータを取得。これにより未納税額が明らかにされました。

さらに日本政府は、2025年4月1日からAppleやGoogleなどのプラットフォーム事業者に対し、日本の消費税10%の源泉徴収を義務付ける「令和6年税制修正案」を施行しました。これは、越境デジタルサービスに対する日本政府の税務監視が大幅に強化されたことを意味します。中国だけでなく、日本企業が海外、特にアジア圏でゲームを展開する際にも、より厳格な税務コンプライアンス体制の構築が不可欠となります。

【事件4】最高人民法院が「データ紛争」「仮想財産紛争」を新設

2025年、中国最高人民法院は民事訴訟の「訴訟原因(案由)」を大幅に改訂し、「人格権紛争」や「物権紛争」といった大分類の中に、「データ紛争」と「ネットワーク仮想財産紛争」を新たな独立した項目として追加しました。これまではゲームデータや仮想アイテムに関する紛争が発生しても、適切な訴訟原因がなく、「契約紛争」や「侵害紛争」に無理やり当てはめて訴訟を起こすことが多く、仮想資産の価値評価や保護が困難でした。

この改訂により、ゲーム内の仮想アイテムやユーザーデータ資産が、司法体系の中で正式に独立した「権利」として認められ、より厳密な保護の対象となりました。これはゲーム運営側にとっては有利な側面もありますが、同時に、ユーザーデータ管理や利用規約の策定において、これまで以上に高度なコンプライアンス能力が求められることを意味します。中国に限らず、日本でも「デジタル財産」の法的地位の議論が進んでおり、この動きは非常に注目に値します。

【事件5】ゲームの「数値設定表」が商業秘密と認定された事件

2025年7月、浙江高院は、人気ゲーム『商道高手』の「数値設定表」をコピーしたゲームに対し、340万元(約6800万円)の賠償を命じる判決を下しました。この事件の被告は、わずか25日間で類似ゲームを開発・リリースしましたが、司法鑑定の結果、その数値体系、ウェイトパラメータ、さらにはID命名規則までが原告ゲームと高度に一致していることが判明しました。

この判決は、単なる見た目の模倣(「換皮」問題)に留まらず、ゲームの根幹をなす「数値設計」や「ロジック」といった内部設定が「商業秘密」として保護されることを明確に示しました。これは、ゲーム開発における知的財産保護の範囲を広げる重要な一歩であり、模倣ゲームの制作に対する強力な法的抑止力となります。日本のゲーム開発者にとっても、自社のゲームデザインのコアとなる部分をいかに法的に保護していくかを考える上で、非常に参考になる事例と言えるでしょう。

まとめ

2025年の中国ゲーム法は、最新技術の進展やビジネスの国際化に対応するため、司法がより「実質的」な保護へと舵を切ったことを明確に示しています。AI関連の著作権や不正競争、越境税務、デジタル資産の法的地位、そしてゲームデザインの核となる要素の保護に至るまで、その変化は多岐にわたります。これは中国市場におけるゲーム開発・運営だけでなく、日本企業が中国進出を検討する上でも、また日本におけるデジタル法整備の議論にとっても非常に示唆に富む動きと言えるでしょう。今後も中国の法改正や判例の動向は、世界のゲーム業界に大きな影響を与えることになりそうです。

元記事: chuapp

Photo by Artful Homes on Pexels

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