中国ゲーム業界で、中小開発チームが驚くべき成果を上げています。わずか300万元(約6千万円)の広告費で30万人の登録ユーザーを獲得し、さらにわずか7日間で投資収益率(ROI)をプラスに転換させたというのです。この成功事例は、元大手ゲーム会社幹部が率いる50人未満のチームによるもので、彼らが実践する「買量(ユーザー獲得広告)」戦略は、日本のゲーム開発者にとっても非常に示唆に富んでいます。
中国ゲーム業界の新常識:ゲームは「買量」ビジネス
「今の商業モバイルゲームは、まさにトラフィック(流量)ビジネスだ」。そう語るのは、この成功事例の立役者である陳歳氏です。彼はかつて中国の大手ゲーム会社でパブリッシング責任者を務めた後、2022年に独立し、現在50人未満のチームを率いています。彼らの最初の商業モバイルゲームは、5000万元の資金と1000万元の開発費という恵まれた条件でスタートしましたが、その戦略は「保守的」でした。
大手出身者が語る「買量」の重要性
陳氏のチームは、純粋な二次元ゲームやカジュアルゲームではなく、大手企業が手を出さず、かといって小規模チームでは開発できないようなニッチな垂直ジャンルをターゲットにしました。そして、宣伝費を抑えるため、大量の広告素材を制作し、ユーザー獲得単価を徹底的に低く抑えることに注力したのです。陳氏は、今の時代、マーケティング活動やインフルエンサー(Up主)への依頼よりも、直接プラットフォームに広告費を支払う方が効率的だと断言します。プラットフォームのアルゴリズムは非常に精緻化されており、ゲームの存続はコンテンツマーケティングよりも「買量」にかかっているというのです。
なぜコンテンツマーケティングより「買量」なのか?
陳氏のチームもインフルエンサー活用を試みましたが、費用対効果が低いと感じています。大手プラットフォームはユーザーをデータで「値付け」しており、インフルエンサーへの予算を直接プラットフォームに投じた方が、結果的に多くのユーザーを獲得できることが多いと結論付けています。特に予算が限られる中小チームの場合、数人のインフルエンサーに依頼しても大きな効果は期待しにくく、むしろ広告出稿で数万~十数万人のユーザーを獲得した方が確実だと言います。
もちろん、二次元ゲームや競技ゲームのようにコンテンツエコシステムが既に存在し、多くのインフルエンサーが関連コンテンツを制作しているジャンルでは、インフルエンサー活用も有効です。しかし、『無尽冬日』のような、純粋に「買量」とROIの循環で成功した商業ゲームは、コンテンツ運営以外の活動をほとんど行いません。これは、時代が変化したことを如実に示していると言えるでしょう。
中小チームが実践する「買量」戦略の具体
陳氏のチームは、Androidユーザーの獲得単価を3元(約60円)、iOSユーザーを10元(約200円)に抑え、7日間でROIを35%まで改善しました。彼らは、自社開発・自社パブリッシングを選択することで、最大の利益を確保し、製品に対する深い理解を活かしています。
自社開発・自社配信のメリットとプラットフォーム選定
「買量」は、今や非常に「無意識的(直感的)」に行えるビジネスだと陳氏は言います。数百万元の予算を投じる前に、まずは5000元(約10万円)程度の少額からテストし、効果があれば投資を拡大するアプローチが可能です。陳氏のチームは主にBilibili(ビリビリ)とTapTap(タップタップ)で買量を行っています。TapTapではゲームプレイの面白さを、Bilibiliでは二次元風のビジュアルやキャラクターを強調した素材が効果的です。一方、Douyin(抖音、TikTokの中国版)では、彼らのニッチなゲームはあまりトラフィックを得られませんでした。Douyinは『無尽冬日』や『向僵尸开炮』のような、カジュアルな外見と重厚なゲームプレイを持つタイトルに適していると分析しています。
成功する素材作り:「吸量」より「跑量」
買量において、最も重要なのは広告素材の選び方です。陳氏は、「吸量」(ユーザーを惹きつける)だけでなく、「跑量」(効率的にユーザーを獲得し、課金に繋がる)できる素材が重要だと強調します。素材制作のヒントとしては、自社ゲームの特色を最大限に活かすこと、そして他社で効果的な広告素材を参考にすることの二つを挙げます。
重要なのは、広告素材の内容と実際のゲームプレイに一貫性があることです。ユーザーが広告を見てゲームを始めた際、期待と異なる内容であればすぐに離脱してしまいます。もはや詐欺的な素材は通用せず、広告で表現されたゲーム体験が実際にゲーム内で提供され、それがユーザーの課金行動に結びつくこと。これが「跑量」できる素材の条件なのです。
まとめ:日本のゲーム業界への示唆
中国の中小ゲームチームが実践するデータドリブンな「買量」戦略は、限られたリソースの中で高い成果を出すための重要なヒントを与えてくれます。特に注目すべきは、ニッチ市場の選定、広告素材の徹底的なABテストと最適化、そしてプラットフォームのアルゴリズムを最大限に活用するアプローチです。
日本のゲーム業界においても、高品質なゲーム開発に加え、ユーザー獲得のフェーズでいかに効率的に投資回収を行い、成長サイクルを確立するかが喫緊の課題となっています。中国の「買量時代」のトレンドは、もはや他人事ではなく、データとアルゴリズムを駆使したマーケティング戦略が、今後のゲーム開発・パブリッシングの成功を左右する鍵となるでしょう。
元記事: chuapp
Photo by cottonbro studio on Pexels












