小島秀夫監督の最新作『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』(デス・ストランディング2)のPC版がいよいよ3月19日に発売されます。これに先駆け、中国・上海でメディア向け先行試遊会が開催され、開発チームの主要メンバーが来場。PC版のさらなる進化や、ゲーム開発の裏側について深く語られました。首席レベルデザイナーの吉池博明氏、テクニカルアートディレクター兼首席環境アーティストの内田貴之氏、そして首席テクノロジーオフィサー兼テクニカルディレクターの酒本海旗男氏が、日本のゲームファンも気になるPC版の魅力や、小島プロダクションならではの制作哲学を明かしています。
PC版の進化と最適化へのこだわり
PS5版で既に驚異的なビジュアルとパフォーマンスを誇る『デス・ストランディング2』ですが、PC版ではどのような点が強化されているのでしょうか。
多岐にわたるPC環境への「最高の体験」
内田貴之氏によると、PS5版ではグラフィック表現とゲーム性能の両面で限界までチューニングを施していました。しかしPC版の開発においては、様々なPC構成に対応し、それぞれの環境で「最高の体験」を提供することに最も注力したとのことです。PS5版開発時から拡張性のあるデータ設計、例えばLOD(Level Of Detail)を採用していたため、PCのスペックに応じてスケーリングが可能です。ただし、単なるスケーリングでは重要な場面の視認性やキャラクターの輪郭が損なわれる可能性があるため、美的観点からこれらのキーポイントを再最適化し、低スペック環境でも物語の重要なシーンがスムーズに楽しめるよう配慮しています。
新難易度「To The Wilder」とVR訓練
PC版で新たに加わる「To The Wilder」は、従来の最高難易度「残酷モード」では物足りないと感じていたプレイヤーの声に応える形で追加されました。吉池博明氏は、この新難易度ではゲーム序盤こそ変化を感じにくいものの、進行するにつれてより戦略的な思考や繊細な操作が求められるようになると説明。また、VR訓練「ニール戦」は、前作の壮大な戦闘を再び体験したいという要望と、フォトモードを使って美しい瞬間を撮影したいというプレイヤーのニーズに応えるものです。高難度だからこそ、普段あまり使わないアイテムやテクニックが予想外の活躍を見せる場面がある、と吉池氏は語りました。
監督剪輯版の予定は?
吉池博明氏は、PC版における「監督剪輯版」のリリース予定はなく、プレイヤーには現在のPC版を存分に楽しんでほしいと述べました。
小島プロダクションの開発哲学と芸術性
小島秀夫監督と新川洋司氏が生み出す独特の芸術世界は、どのようにして具現化されるのでしょうか。
創造性を育む「平等な議論」
内田貴之氏は、小島プロダクションの制作方式について、小島監督と新川アートディレクターが提示する核となるコンセプトとビジュアルを基に、チーム全体でそれを肉付けしていくプロセスだと説明しました。監督やアートディレクターだけでなく、スタッフ全員が「非常に平等な態度」で議論し、核となる概念をいかに最適に表現するかを追求する姿勢こそが、スタジオの強みだと強調。これにより、コンセプトの骨格を保ちながらも、ディテールまで「厚みのある」表現が可能になるとのことです。
24時間変化する光照システムと「繋がり」の深化
『デス・ストランディング2』では、前作とは異なる新しい光照システムが導入されており、ゲーム内の光は24時間常に変化します。これにより、配送中に遭遇する壮大な風景や周囲の環境がダイナミックに変化し、プレイヤーの没入感を高めます。また、吉池博明氏は、ミッション構造とプレイヤーの動機付けにおいて、新規プレイヤーとベテランプレイヤー双方に配慮し、より多くのプレイヤーが物語の最後まで進められるよう「適度な回り道」を意識的に設計したと語りました。「繋がり」の概念は前作同様にプレイヤー間の緩やかな助け合いという形で継承されていますが、今作では「繋がり」がキャラクターたちに与える影響をストーリー面で深く掘り下げた叙事デザインが施されています。
PC版独自の技術的こだわりとリアリズム追求
PC版への移植過程で、プレイヤーにはなかなか気づかれないような技術的な工夫も凝らされています。
4Dスキャン技術が描き出すキャラクターの感情
内田貴之氏が特に注目してほしいと語るのは、主要キャラクターの表情です。本作では、4Dスキャン技術を用いることで、キャラクターの感情の移り変わりが「完全に動的で、非常に滑らか」に表現されています。時間の軸が加わることで、微細な表情の変化も自然に、まるでキャラクターが本当にそのように感じているかのように感じられる没入感を追求しており、これが物語の表現効果を大きく左右しているとのことです。
超ワイドスクリーン対応で広がる世界
PC版では超ワイドスクリーン比率(21:9)に対応するため、UIを含む全ての画面が調整されました。内田氏と吉池氏によると、これによりプレイヤーはより広い視野角でゲームを体験でき、画面から得られる情報が増えるだけでなく、広大な景色をより一層楽しむことができるため、没入感が格段に向上するとのことです。
究極のリアリズムを追求する環境美術
環境構築において最も重視されるのは「写実感」です。内田氏は、チームが常に現実世界の美しい場所からインスピレーションを得ていると語りました。コロナ禍では現地へ赴くことが難しい時期もありましたが、Googleマップで興味深い場所を探し、GoProやドローンを使った現地撮影、そして3Dスキャンという「時間もコストもかかる、泥臭い方法」でリアルな環境を再現する努力を惜しまなかったと言います。「ゲームで非常にリアルな写実感を表現するのは今でも大変難しいこと」でありながら、可能な限りの手を尽くし、プレイヤーに最高の没入感を提供しようとする開発者の情熱が伝わってきます。
環境が語る物語
内田氏は、前作『デス・ストランディング』開発当初、小島監督から「このゲームでは、君たちが作るゲームの背景が主人公だ。頼むからしっかり作ってくれ」と言われたエピソードを明かしました。当初その意味を完全には理解できなかったものの、1年半後に開発を進める中で、その言葉の真意を理解したと言います。『デス・ストランディング』では、様々な困難を乗り越えた先に、プレイヤーは「非常に美しい景色」を目にします。この景色こそが、プレイヤーにとっての共感や達成感をもたらす「報酬」であり、環境そのものがゲーム体験の中心を担っているのです。
まとめ
『デス・ストランディング2』PC版は、PS5版で培われた技術をさらに磨き上げ、より多くのプレイヤーに最高の体験を届けるための徹底した最適化と新たな挑戦が詰まった作品であることが、今回の上海での開発者インタビューから明らかになりました。グラフィックの強化、新難易度モードの追加、そして何よりも小島プロダクションならではの妥協なき開発哲学と、細部に宿る情熱が、PCゲーマーの期待を大きく高めることでしょう。日本のゲーマーも、この広大な世界と深遠な物語をPCでどのように体験できるのか、発売日が待ち遠しい限りです。
元記事: chuapp
Photo by Ramazan Ataş on Pexels












