動画ストリーミングの巨頭Netflixが、ゲーム事業戦略の大きな転換期を迎えています。2021年のゲーム業界参入以来、積極的な買収で注目を集めてきましたが、ここに来て「少即是多(Less is more)」の哲学を掲げ、大規模な路線変更を図っているようです。その象徴ともいえるのが、人気ドラマ発のゲーム『イカゲーム:殺出重囲(Squid Game: Unleashed)』の開発チームであった「Boss Fight Entertainment」の閉鎖です。世界ランキングで上位に食い込むなど、高い評価を得ていたスタジオが閉鎖された背景には、一体何があるのでしょうか。
事業再編の衝撃:『イカゲーム』開発チーム解散の背景
Netflixがゲーム事業への本格参入を発表して以来、数々のゲームスタジオを買収し、その動向は業界内外から大きな注目を集めていました。しかし、最近の外電報道によると、2021年に買収したスタジオの一つである「Boss Fight Entertainment」が閉鎖されたことが明らかになりました。このスタジオは、人気ドラマ『イカゲーム』を題材にしたモバイルゲーム『イカゲーム:殺出重囲(Squid Game: Unleashed)』の開発を手がけ、リリースからわずかな期間で26カ国でランキング1位を獲得するなど、大きな成功を収めていました。
Boss Fight EntertainmentのCEO兼共同創設者であるデイビッド・リッピー氏は、この閉鎖を自身のSNSで認め、「非常に困難な状況だ」とコメントしています。Netflix側は『イカゲーム:殺出重囲』を、自社IPが没入型ゲーム体験を支える模範的な例として高く評価していたにもかかわらず、今回の閉鎖に至ったことは、多くの人々に驚きを与えています。リッピー氏は投稿の中で、Netflixでの時間を感謝し、共に働いた同僚と制作したゲーム、特に成功を収めた『イカゲーム:殺出重囲』への誇りを表明し、解雇されたスタッフへの支援を呼びかけています。
この閉鎖は、Netflixゲーム部門の新社長であるアラン・タスカン氏が推進する新たな戦略と関連していると見られています。タスカン氏は、パーティーゲーム、子供向けゲーム、そして物語主導のゲーム開発に注力する方針を打ち出しており、大規模なAAAタイトル開発からの転換を示唆しています。閉鎖後も、『Netflix Stories』と『イカゲーム:殺出重囲』については、Netflixが引き続きサポートを提供するとされています。
「少即是多」戦略へ:Netflixが目指すゲームの未来
Netflixの共同CEO兼社長であるグレゴリー・K・ピーターズ氏は、2025年10月(※元記事の日付に基づく)の決算説明会で、ゲーム部門への継続的なコミットメントを表明しつつも、今後は「少即是多(Less is more)」の戦略を採用すると説明しました。ピーターズ氏によると、これまでの数年間はゲーム開発能力の基盤を築き、高品質な体験を提供することに注力してきたとのことです。
しかし、今後はこの基盤の上に立ちつつも、提供するゲームの数を絞り、特定の主要ジャンルと適切なユーザー層に焦点を当てる方針です。特にピーターズ氏が熱意を示したのは、家族全員でテレビで楽しめる「非常に面白いパーティーゲーム」です。スマートフォンをコントローラーとして利用することで、専用のゲーム機器を必要とせず、Netflixのドラマや映画と同じように、ゲームタブからクリック一つで手軽にアクセスできる点が、この戦略の鍵となると強調しました。
Netflixのこれまでのゲーム事業の動きを振り返ると、2021年以降、Next Games、Boss Fight、Night School、Spry Foxなど複数のスタジオを買収し、元ZyngaやEA、さらには元『オーバーウォッチ』の責任者チャック・ソニー氏といった著名な人材を引き抜いてスタジオを設立するなど、非常に積極的な拡大戦略を展開していました。しかし、2023年後半からはその動きは鈍化。2024年10月末には、元『オーバーウォッチ』責任者が率いていた南カリフォルニアのAAAゲームスタジオ「Team Blue」も閉鎖されるなど、事業の縮小が目立つようになりました。
さらに、2025年3月にはAIゲーム技術担当の副社長が退任し、同年6月には『ハデス(Hades)』、『時空のしるし(Braid)』、『モニュメントバレー(Monument Valley)』シリーズなど、22タイトルの著名なインディーゲームがプラットフォームから削除されるなど、明確な戦略転換が読み取れます。
まとめ:ストリーミング巨人の新たな挑戦
一連の動きから、Netflixがゲーム事業から完全に撤退するわけではないことは明らかです。むしろ、同社のゲーム戦略は、かつてのような大規模なAAAゲーム開発を目指すのではなく、本業であるストリーミングコンテンツの「添え物」として位置づけ直されていると見ることができます。より手軽に楽しめるゲームコンテンツをサブスクリプションの付加価値として提供することで、ゲーム事業のコストを抑えつつ、持続可能な発展を目指すという賢明な判断が働いているのでしょう。
Apple Arcadeのような他のサブスクリプションゲームサービスと比較しても、Netflixは既存の広大なユーザーベースと独自のIPを活用できる強みを持っています。今回の「少即是多」戦略への転換は、日本を含む世界中のNetflixユーザーに、より手軽で高品質なエンターテインメントを提供し続けるための、新たな挑戦と捉えることができるでしょう。今後のNetflixのゲーム事業が、どのような進化を遂げていくのか、引き続き注目が集まります。
元記事: gamelook
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