東京ゲームショウ(TGS)で大きな注目を集めた輸送シミュレーションゲームの最新作、『Transport Fever 3(狂熱運輸3)』。本作を手掛けるUrban GamesのCEO、Basil Weber氏へのインタビューから、交通シミュレーションゲームの奥深い魅力と、同シリーズがたどってきた進化の軌跡が見えてきました。古典的なボードゲームから始まり、『SimCity』や『Transport Tycoon』といった名作が生まれた「シミュレーション」というジャンル。その中でも、プレイヤーが交通機関の管理者や運輸会社のオーナーとなり、緻密な計画と運営で達成感を味わう「交通シミュレーション」は、熱狂的なファンを持つ独自の分野を築き上げてきました。2026年発売予定の『Transport Fever 3』は、PC、PlayStation 5、Xbox Series X|S向けに登場。現代の3Dシミュレーションゲームを代表するシリーズが、一体どのような新境地を見せるのか、Basil氏の言葉を紐解きます。
交通シミュレーションゲームの進化とUrban Gamesの挑戦
情熱が育んだ「Transport Fever」シリーズ
Urban Gamesの創設者でありCEOのBasil Weber氏は、筋金入りのシミュレーションゲーム愛好家です。特に1990年代中盤に『Transport Tycoon(運輸大亨)』に没頭し、わずか15歳でゲームスタジオを立ち上げる夢を抱いたと語ります。『Transport Tycoon』が、プレイヤーが運輸会社を経営し、貨物や乗客を効率的に輸送するゲームであったことは、Basil氏に大きな影響を与えました。彼はこの名作に匹敵するか、あるいはそれ以上の交通シミュレーションゲームを生み出すことを目標に掲げ、長年努力を重ねてきたのです。
チューリッヒ工科大学でコンピューター科学を学ぶ中で、Basil氏は学位論文のテーマを「ゲームにおける都市シミュレーション(Urban Simulation for Games)」としました。これが現在の「Urban Games」という社名の由来となっています。そして、論文で探求した都市シミュレーション技術の知見は、2014年に発売された同社初の鉄道建設シミュレーションゲーム『Train Fever(狂熱火车)』へと結実しました。
交通シミュレーションゲームは、都市における交通インフラの配置計画と運営に主な面白さがあります。90年代から2005年頃にかけて隆盛を極めましたが、その後は「都市運輸」シリーズを除き新作が少ない状況でした。『Train Fever』はこの空白を埋める存在となり、大きな成功を収めます。その開発において、Urban Gamesはプロシージャル生成による都市と建築のシミュレーション技術を重視し、これが他作品との差別化に繋がりました。
百年を繋ぐ輸送の物語:シリーズの軌跡
『Train Fever』の成功を受け、2016年にはシリーズ名を冠した『Transport Fever(狂熱運輸)』がリリースされます。本作では、鉄道輸送に加え、貨物、船、空路といった輸送手段が拡張され、1世紀以上にわたる交通史を体験できるようになりました。この「百年運輸史」はシリーズの特色となり、以降の作品にも受け継がれています。
Urban Gamesはその後、『Transport Fever』シリーズの開発に注力し、2019年には『Transport Fever 2』が発売されました。本作もシミュレーションゲームファンから高い評価を受け、世界中で150万本以上のセールスを記録。Urban Gamesにとって、これは非常に素晴らしい成果でした。開発チームは、常に前作からの改善を追求し、海陸空の輸送システムをさらに深化させてきたのです。そして、『Transport Fever 3』は、その集大成となる新たな挑戦の回答と言えるでしょう。
『Transport Fever 3』が描く、より深く、よりリアルな輸送大亨の世界
経営の醍醐味を凝縮:刷新された「大亨」システム
Basil氏は、ゲームの敷居が高すぎると多くのプレイヤーが途中で諦めてしまうと語ります。しかし、基本的な遊び方を理解すれば、より深く、より表現したかったコンテンツへとプレイヤーを導けると信じています。Urban Gamesは常に、リアルで面白いシミュレーション体験を追求しており、『Transport Fever 3』ではその目標がより明確に現れています。
特に注目すべきは、大幅に改善された「大亨(タイクーン)」システムです。本作では、より微視的な視点で経営を考える必要が出てきます。新たに導入された「契約システム」では、特定の貨物を期限内に配達することを約束すると、すぐに前払い金を受け取ることができます。成功すれば追加ボーナスが得られる一方、期限を過ぎると罰金が科せられるため、短期的な収益目標の計画や潜在的なリスク管理が、プレイヤーである「大亨」の腕の見せ所となります。これは、広大な交通ネットワークのプランナーとしてだけでなく、より深く、細かな経営手腕が問われる遊び方と言えるでしょう。
没入感を高める新要素:昼夜・天候、ヘリコプター、ランドマーク
『Transport Fever 3』では、視覚効果においても大きな進化を遂げています。新たな動的環境システムにより、昼夜の移り変わりや、より多くの天候効果が追加されました。キャンペーンモードでは、これらの時間変化がゲームプレイに影響を与えることもありますが、自由モードではプレイヤーが自由に時間を調整できるため、前作では味わえなかった都市の美しい夜景を存分に楽しむことができます。昼夜システムと動的な光の表現は、『Transport Fever 3』のリアリティを一層引き立てます。
さらに、新たな乗り物としてヘリコプターが登場し、これに対応する「オフショア産業」も加わりました。海上には養殖場や海上工場といった生産施設が新設され、ヘリコプターは海上プラットフォームに着陸して物資を輸送することができます。新しい亜寒帯気候のマップには、広大な水域と湿地が含まれており、オフショア産業との組み合わせで新たな戦略と楽しみが生まれるでしょう。
会社昇進システムが一定レベルに達すると、エッフェル塔、ローマのコロッセオ、頤和園といった世界的なランドマーク建築がアンロックされます。それぞれ異なる機能を提供し、プレイヤーの都市に個性を加えます。
より微細なシミュレーションも本作の魅力です。例えば、工場などでは物資を運搬する車両が実際に行き交う様子を視覚的に確認できます。これは機能的な意味合いだけでなく、微視的なシミュレーションを好むプレイヤーにとって、資源の流動を直接目撃できる視覚体験の補完となります。また、『Transport Fever 3』の住民は、出生地によって異なる名前を持ち、汚染度、居住快適性、満足度といった数値が彼らの気分に影響を与え、ひいては輸送システム全体の効率にも影響を及ぼすなど、より生き生きとした都市を体験できるようになりました。
遊びやすさと奥深さの両立:道路ツールとMODサポート
ゲーム機能の面では、道路ツールと高速道路機能が前作から大幅に改善されました。これまではコミュニティMODに頼りがちだった道路の細かな調整機能が、ゲーム本体に数多く実装されています。例えば、交通ルートのより精緻なスケジューリングや制御、道路の微調整が可能になり、車両の渋滞解消に役立つだけでなく、初心者プレイヤーのMOD管理負担も大幅に軽減されます。
しかし、Urban Gamesはゲーム本体の改善だけでなく、コミュニティによるMOD制作と発展をこれまで同様に積極的に支援していく姿勢を示しています。これにより、プレイヤーは公式機能の恩恵を受けつつ、MODによってさらに自由なカスタマイズを楽しむことができるでしょう。
まとめ:未来へ続く「交通シミュレーション」の情熱
『Transport Fever 3』は、Urban GamesのBasil Weber氏が長年抱き続けてきた「交通シミュレーションゲーム」への情熱と、シリーズが培ってきたノウハウの全てを注ぎ込んだ意欲作です。初心者からベテランまで、誰もが楽しめる奥深いゲームプレイと、細部までこだわり抜かれたリアルなグラフィックとシミュレーションが融合し、輸送大亨としての手腕が試される最高の舞台となるでしょう。
2026年の発売が今から待ち遠しい本作は、単なる交通シミュレーションの枠を超え、プレイヤーが自分だけの壮大な輸送帝国を築き上げる夢を叶えてくれるはずです。日本のシミュレーションゲームファンにとっても、『Transport Fever 3』は新たな発見と無限の創造性をもたらす、かけがえのない体験となるに違いありません。この壮大な鉄道、道路、海運、空路の物語に、ぜひご期待ください。
元記事: chuapp
Photo by Sérgio Souza on Pexels












