中国のゲーム開発会社・詩悦(ShiYue)が手掛ける都市型オープンワールドRPG『望月(WangYue)』が、最初のテストから9ヶ月を経て、大幅なアップデート内容を公開しました。この期間に開発チームは倍増し、プレイヤーからのフィードバックを基に「長所を伸ばし短所を補う」というコンセプトで大規模な改修を実施。特にグラフィック品質の大幅な向上と、中国の都市ならではの「生活感」を重視した世界観の再構築に注力しており、その変貌ぶりには目を見張るものがあります。今回は、その劇的な進化の中身を詳しく見ていきましょう。
9ヶ月でチーム倍増!『望月』が目指す「長所伸展・短所補完」の大規模アップデート
『望月』が今年1月12日に初回テストを実施して以来、9ヶ月以上の月日が流れました。この間、プロジェクト内部の情報によると、開発チームの規模は300人から600人へと倍増。彼らは最初のテストで得られたプレイヤーからのフィードバックを真摯に受け止め、ゲームに「長所を伸ばし、短所を補う」という超大規模なイテレーション(反復改善)を実施したとのことです。
首測からのフィードバック:魅力をさらに磨き、弱点を克服
筆者も『望月』の初回テストを体験しましたが、確かに市場に出回る同種の競合タイトルとは一線を画す都市型オープンワールドとしての魅力がありました。「月霊(Moon Spirit)」というシステムは、ゲームプレイに大きな変化をもたらす可能性を秘め、広州をモデルにした都市の情景も独特の生活感を醸し出していました。これらが『望月』の長所です。
しかし、長所と同時に短所も浮き彫りになりました。それは、アート品質の不足や、世界観のトーンとコンテンツ表現のミスマッチです。これらの欠点は、突き詰めれば「リソース」不足に起因すると言えるでしょう。詩悦が大規模な投資を行い、チームを拡充したことで、今回の発表内容からは、開発チームがこれらの問題に真剣に取り組んでいる姿勢が強く感じられます。これにより、かつてのリソース問題も解決に向かっていると期待されます。
目を引くグラフィックの大幅進化と、没入感を高める世界観の再構築
9ヶ月間の改修を経て、『望月』はどのように生まれ変わったのでしょうか。その変化は、主に「基盤となるゲームプレイのフレームワークは維持しつつ、ゲームのアート品質とコンテンツ品質を向上させる」という方針で進められました。
Unityエンジンの限界を超え、PC・モバイル両対応で美麗グラフィックを実現
以前『望月』のアート品質が批判された一因は、Unityエンジンを使用しつつモバイル端末への最適化も同時に行う必要があったためです。しかし今回、開発チームはモバイル端末でのスムーズな動作を保証しつつ、HDRP(High Definition Render Pipeline)を導入し、関連コードを独自に改良。Unity本来のエンジン表現の限界を克服し、PC版のアート品質を大幅に向上させました。
具体的には、NPR(Non-Photorealistic Rendering)とPBR(Physically Based Rendering)を組み合わせたハイブリッドマテリアルレンダリングを採用し、業界最高水準を目指してモデル制作基準を向上。光影表現を強化し、3D部分のアート表現を高めています。さらに、数十人規模のTA(テクニカルアーティスト)チームを新設し、最適化を強化。新しいプロモーションビデオ(PV)で確認できる看板娘の林瓏や男女主人公のキャラクター品質は、新生『望月』の基本的なキャラクター品質基準であり、大いに期待できる仕上がりです。
「生活の煙火気」を核に、広州を舞台にした独自の都市ファンタジーを描く
詩悦内部では、初回テストの結果から『望月』のゲームプレイ基盤には高い潜在能力があると判断されていました。今回の公開内容ではゲームプレイの詳細な表現は少なかったものの、世界観とコンテンツの一致が深まることで、ゲームプレイもこれらとより密接に連携していくとのことです。
特に注目すべきは、プロジェクトチームが『望月』の世界観を「中国の都市型オープンワールドは、生活シーンを中心にデザインされるべき」という問いから再構築した点です。彼らの答えは、「生活の煙火気(人々の生活感、活気)」。新PVでは、「中国都市の英雄と月霊の仲間が運命に抗う」という物語をテーマに、人間と月霊が共生する世界が描かれています。
これは、広州を中心とした広府文化の核心にも通じるものです。「月霊」は都市の生活感の具象化であり、ヨーロッパの「家用小妖精(家庭の小さな妖精)」のように、生活の気配から生まれた種族、まさに生活そのものとして描かれています。『望月』の物語のテーマは、「人の運命が操作されていても、それを超越し、運命に抗う」というもので、これは中国の都市文化とも密接に結びついており、広州という街の特性にも非常に合致しています。広州自体が生活を重んじる市民の街であり、「生活を守るために戦う」というテーマは、世界観と極めて相性が良いと言えるでしょう。異なる月霊は都市経営や都市型ゲームプレイにおいて異なる効果を発揮し、「月霊」という設定が世界観とより深く融合しています。
この意味で、『望月』は都市型オープンワールドゲームの核心を捉えています。そのデザインの重点はキャラクターだけでなく、都市資産も含むものであり、都市を中心にシステムを構築するというのが、『望月』の根底にあるデザイン理念です。ゲーム内のキャラクターたちはそれぞれ日常の職業を持ち、危機の際には都市の英雄として街を守ります。彼らの日常生活や戦闘表現も職業に基づいており、将来的には、発展途上のスポーツスターや古い商家の店主など、中国ならではの職業を持つキャラクターが多数登場する予定です。これらのキャラクターと中国都市限定の職業は、市民生活の継承をも表現しています。
ある意味、『望月』の多くのデザインは、広州のチームだからこそ可能であり、広州の濃厚な生活文化と歴史的背景に深く浸透しているからこそ、開発者は都市生活に対してこのような深い理解を持っているのです。
これらの変更をまとめると、「『望月』は過去9ヶ月間で、より高品質で、ユニークで、自由な中国都市型オープンワールド捕獲RPGを創り出そうと試みた」と言えるでしょう。
PVが示す『望月』の世界:日常と非日常が交錯する都市英雄の物語
これまでに分析した内容を踏まえ、今回公開された世界観PVについてさらに深掘りしていきましょう。PVからは、ゲームのデザイン理念を体現する多くの詳細が見て取れます。
冒頭の数カットでは、金魚や映写機といった職業やシーンがまず提示され、その後にそれらと関連するキャラクターが登場します。街頭のシーンでは、歩行者天国でよく見かける広州の特色ある「王記炒粉」の看板や、雑貨屋、そして歩行者が映し出され、彼らと共に進む月霊が導入されます。月霊は都市生活の象徴として描かれ、ある月霊は屋上で人間と共に日光浴をしてくつろぎ、また別の月霊はミルクティー店の店員に扮して客と談笑しています。職業、キャラクター、生活シーン、月霊といった登場順は、『望月』が掲げる「職業とキャラクターの紐付け、生活シーンと月霊の融合」という理念を如実に示しています。
その後、主人公が登場し、看板娘に焦点を当てた長めのカットが続きます。花を手にした彼女の姿は、その職業と能力特性を暗示しているかのようです。続く一連のカットでは、月霊と車に乗ったり、月霊と交流したりといった基盤となるゲームプレイが示され、物語のテーマへと突入します。月霊は主人公を日常世界の外にある「裏側」へと誘い込みます。
ここで冒頭の金魚すくいの日常的なシーンが変化し、荒れ狂う水面がクローズアップされ、平和な日常が打ち破られます。次の瞬間、主人公は「裏側」を象徴するゲートをくぐります。これらのシーンは、『望月』のもう一つの側面、つまり隠れた英雄たちが混沌と戦い、世界を救う物語へと私たちを引き込みます。PVの容量の制約上、ストーリーの詳細な描写は限られていますが、剣を構えて敵に立ち向かう姿、破壊された廃墟、強敵に打ち倒される絶望など、残酷でありながらも非常にサスペンスに満ちた断片が示されています。そして最後に、水からすくい上げられた金魚が水中に戻り、鮮やかな月が画面中央に大きく映し出され、『望月』のテーマを暗に示しています。
PVには、戦闘に関する余白の多いカットも多く、想像力を掻き立てられます。この一連の映像の中には、広州のランドマークも随所に挿入されており、例えば戦闘シーンの背景には広州タワー(「小蛮腰」の愛称で知られる)が、また北京路のような特徴的な街並みも登場します。ノスタルジーを感じさせる雰囲気と、モダンでスタイリッシュな感覚が共存するシーンは、まさに伝統文化が息づく旧市街と、常に進化し続ける新市街を持つ広州の気質そのものです。
総じて、このPVは「都市を中心にデザインされたゲームプレイ」「職業と連携するキャラクター」「現代生活を取り巻く戦い」という、『望月』への我々の期待に応える内容だったと言えるでしょう。
まとめ
詩悦がコンテンツ重視型のゲームとして重要視する『望月』は、プレイヤーコミュニティやゲーム業界内で高い期待を集めています。今回の発表内容を見る限り、アート品質の向上から、世界観とゲームプレイ、コンテンツのマッチング強化に至るまで、プロジェクトチームは「何を改善すべきかを明確に把握している」という姿勢を明確に示しています。
多くのゲームでテスト版がゲームプレイの検証に特化するように、基盤となるゲームプレイのアーキテクチャに問題がないと判明すれば、より大胆にリソースを投入してイテレーションを行うことができます。今回の『望月』の発表は、まさにそのフェーズに入ったことを示唆しています。『望月』は今、正しい道を歩んでおり、次回のテストでのさらなるパフォーマンスに大いに期待できるでしょう。日本のプレイヤーにとっても、中国独自の都市文化と融合した新しいオープンワールドRPG体験は、きっと魅力的なものとなるはずです。
元記事: chuapp
Photo by Lukas Žvikas on Pexels












