中国の半導体企業、瀾起科技(Montage Technology)が、次世代コンピューティングを大きく進化させる新たなメモリ拡張コントローラ(MXC)チップ「M88MX6852」を発表しました。このチップは、最新のCXL 3.1規格に準拠し、メモリの拡張性、効率性、セキュリティを飛躍的に向上させます。データセンター、サーバー、エッジコンピューティングといった幅広い分野で、デカップルドメモリ(分離型メモリ)アーキテクチャの導入を加速し、メモリ資源の共有とプール化を実現することで、コンピューティングリソースの利用効率に革命をもたらすことが期待されています。
製品概要と革新性
瀾起科技が今回発表した「M88MX6852」は、CXL 3.1 Type 3標準に準拠した最先端のMXCチップです。CXL(Compute Express Link)は、CPUとメモリ、アクセラレータなどのデバイス間を高速で接続するインターコネクト技術であり、特にCXL 3.1は、より高度なメモリ拡張機能とリソース共有機能を提供します。
M88MX6852は、CXL.mem(メモリ)とCXL.io(I/O)の両プロトコルに完全に対応しており、現在、主要顧客向けにサンプル出荷が開始され、実環境でのテストが進められています。
高い接続性と処理能力
この新チップは、PCIe 6.2 PHYインターフェースを統合し、8レーンの柔軟なPCIe/CXLチャネルを提供します。これらのチャネルは、必要に応じて2つのx4ポートに分割できるため、接続の柔軟性と効率性が大幅に向上します。
さらに、M88MX6852はデュアルチャネルのDDR5-8000メモリコントローラを内蔵。高速なデータアクセスを可能にするとともに、RISC-Vアーキテクチャに基づく2つのマイクロプロセッサ(アプリケーション処理用APUとセキュリティ処理用SPU)を搭載することで、処理性能とセキュリティの両面でチップの総合的な能力を高めています。
コンパクトな設計と幅広い応用
物理的な設計面では、瀾起科技は25mm×25mmというコンパクトなパッケージを採用しました。この小型化された設計は、製品のサイズを抑えるだけでなく、EDSFF E3.SディスクフォームファクタやPCIe AICカードフォームファクタとの互換性を確保します。
この汎用性の高さにより、M88MX6852はサーバー、オールフラッシュストレージアレイ、そしてエッジコンピューティングといった多岐にわたる分野での応用が可能となり、多様なアプリケーションシナリオの要求に応えることができます。
次世代コンピューティングへの展望
瀾起科技のStephen Tai CEOは、この新製品の発表に際し、「M88MX6852は次世代CXL 3.1メモリ拡張コントローラとして、CXL技術分野における瀾起科技のリーダーシップを改めて示すものだ」と述べました。同氏は、このチップがメモリ拡張の性能と効率を大幅に向上させるだけでなく、標準化されたプロトコルを通じてデカップルドメモリアーキテクチャの発展を推進すると強調しています。
M88MX6852は、次世代コンピューティングインフラストラクチャにおけるメモリリソースの共有とプール化に強力な技術的サポートを提供し、コンピューティングリソース活用における新たな時代の到来を予感させます。日本を含む世界のデータセンターやクラウドサービスプロバイダーにとって、この技術はインフラの最適化とコスト削減に貢献する重要な鍵となるでしょう。
元記事: pcd
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