中国のイノベーションハブ、深センから、世界のものづくりを変革するスタートアップが注目を集めています。その名は「Snapmaker(快造科技)」。3Dプリンター、レーザー彫刻、CNC彫刻といった複数の機能を一台に凝縮したユニークな製品でクリエイターを魅了してきた同社が、この度、中国のトップVCである高瓴資本(Hillhouse Capital)と大手IT企業美団(Meituan)から数億元(日本円で数十億円規模)に及ぶシリーズB資金調達を完了しました。深センの「ポケットに5元しかなくても、カフェで『来年100万元稼ぐ』と言っても誰も笑わない」という起業家精神を体現するSnapmakerの躍進は、中国ハードウェアスタートアップの勢いを象徴する最新事例と言えるでしょう。
深セン発、世界を「創造」するSnapmakerの軌跡
深センの南山区にある大学都市の近く、約100㎡の広々としたショールームには、色とりどりの3Dプリント作品やレーザー彫刻作品が所狭しと並べられています。この空間の奥で、黙々と開発サンプルやモデルと向き合う一人の男性がいました。彼こそが、Snapmakerの共同創業者兼CEO、陳学彬(Chen Xuebin)氏です。彼の情熱と執着心は、共同創業者の柯淑强(Ke Shuqiang)氏をして「彼はINTJ(建築家タイプ)だ。口下手だが、自分が何を求めているかを知っており、一度決めたら妥協しない」と言わしめるほどです。
多機能から専業へ、進化を遂げた3Dプリンター
陳学彬氏は学生時代からロボット競技に熱中し、WRO国際ロボットオリンピックで優勝するほどの腕前でした。その頃から「誰もが物理世界で自由に創造できる汎用ツールを作りたい」という起業の夢を抱いていました。そして2016年、彼は元同僚たちとSnapmakerを設立し、3Dプリンター、レーザー彫刻、CNC彫刻を一体化した多機能マシンを世に送り出します。しかし、2023年には収益の伸び悩みという壁に直面。「もしニッチな製品に留まるなら、私にとっては耐え難い」という陳氏の言葉の通り、チームは戦略転換を決断。多機能路線を諦め、3Dプリンターに特化することを選択しました。
その二年後、新たな戦略から生まれたのが、独立したデュアルヘッド並列システムを持つ初のプリンター「U1」です。この英断が、今回の巨額資金調達に繋がる大きな転機となったのです。
異色の経歴を持つ共同創業者たち
陳学彬氏は厦門大学の機械自動化専門を卒業後、中国の航空機メーカー中航工業西安研究院に進みました。一方、同郷で高校の先輩でもある柯淑强氏は復旦大学の経済学専門を卒業し、華泰資管に勤務していました。異なるバックグラウンドを持つ二人ですが、陳氏の創造への情熱と柯氏の経営手腕が融合し、Snapmakerは急成長を遂げます。
2019年の旧正月、泉州で再会した二人は意気投合し、柯氏もSnapmakerに加わりました。その年、同創偉業(Cowin Capital)から2000万元(約4億円)のPre-Aラウンド資金を調達。その後も経緯創投(Matrix Partners China)や東証資本(Eastern Bell Capital)といった名だたるVCからの投資を引き寄せています。
中国ハードウェア・スタートアップ熱の象徴
今回の高瓴資本と美団による数億元規模のシリーズB資金調達は、単なる一企業の成功にとどまりません。深センが「ハードウェアのシリコンバレー」として世界に存在感を示す中で、Snapmakerはその新たな象徴となりました。アイデアを素早く形にし、市場のニーズに合わせて柔軟に戦略を変更する深センのスタートアップ文化と、それを支える豊富なサプライチェーン、そして投資家の惜しみない支援が一体となって、革新的な製品が次々と生まれています。
まとめ
Snapmakerの成功は、クリエイティブなアイデアと、市場の変化に対応する柔軟な戦略、そしてそれを実現する技術力と資金力が組み合わさった時に、いかに大きな可能性が生まれるかを示しています。多機能から専門特化へと舵を切ったことで、より高性能でニッチな市場を掴んだ彼らの挑戦は、日本のものづくり企業やクリエイターにとっても示唆に富むものでしょう。中国のダイナミックなスタートアップエコシステムから生まれる革新は、今後も世界のものづくりの未来を大きく左右する要因となりそうです。
元記事: pedaily
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