半導体業界で、AI(人工知能)を活用したEDA(電子設計自動化)検証の分野に大きな動きがありました。香港中文大学コンピューター科学・工学部の徐強(シュー・チアン)教授が、中国の先進的なEDA企業であるChipHua Technology(芯華章科技)にチーフサイエンティストとして正式に参画したと発表されました。
AI×EDA検証に新風! 徐強教授がChipHua Technologyに参画
システムレベル検証EDA分野において、権威ある研究者として知られる徐強教授。特にAIとEDAの融合研究では第一人者として、回路表現学習、インテリジェント検証方法論、そして大規模回路モデル(LCM)といった分野で長年にわたり深く貢献してきました。その学術的成果は、国際的なトップカンファレンスや学術誌に200本以上の論文が掲載され、引用数は2万回近くに上ります。さらに、ICCAD 10周年記念で最も影響力のある論文賞など、数々の栄誉も受賞しています。
現在、AIチップ、Chipletアーキテクチャ、そして複雑なSoC(System on Chip)設計が爆発的に増加する中、チップ検証プロセスはかつてないほどの課題に直面しています。従来の検証フローでは、設計規模と複雑性の指数関数的な増加に効率的に対応することが難しく、限られた時間内で、より網羅的で信頼性の高い検証を実現することが業界全体の喫緊の課題となっています。
複雑化するチップ設計と検証の課題
ChipHua Technologyの総経理である謝仲輝氏は、「検証はチップ設計において最も時間とインテリジェンスを要する工程です」と指摘します。徐強教授の参画は、同社が経験やツールに依存した従来の検証手法の限界を打ち破り、データ、モデル、方法論が深く融合した新しい検証技術の段階へと進化を遂げる上で、大きな推進力となると期待されています。
徐強教授は、AIがEDAにもたらす価値は、単なるツール最適化や局所的な効率向上に留まるべきではないと強調します。その本質は、回路表現や検証推論といった核となる問題に深く踏み込むことにあると主張。「AIネイティブなEDAは、大規模言語モデルを既存のツールチェーンに単純に統合するのではなく、回路と検証プロセスの表現、学習、推論方法を再構築する必要があります」と語ります。
AIネイティブEDAが描く未来
ChipHua Technologyは、デジタル検証の全プロセスにおける製品展開と産業シナリオでの豊富な実績を持っており、徐教授の研究成果を実用化するための重要な基盤を提供します。今後、徐教授はチームと共に、検証インテリジェンス技術、大規模回路モデル、そして産業レベルのツール融合といった分野を探求し、AIアルゴリズムの革新とエンジニアリング応用との間の隔たりを埋めていく予定です。
現在、AIとEDAの統合は、プロセス自動化からモデル駆動、そして方法論の再構築へと変革の途上にあります。複雑な回路の表現学習、形式検証におけるインテリジェント推論、カバレッジ駆動のTestbench自動生成といった技術は、次世代EDAの重要なブレークスルーポイントとなっています。
ChipHua Technologyはすでに、シミュレーション、形式検証、デバッグといった検証フローをカバーする製品群を確立しており、徐強教授の参画は、同社のAIネイティブ検証分野における最先端研究能力をさらに強化することになるでしょう。
変革を推進する具体的な重点分野
同社は今後、以下の4つの主要な方向性を重点的に推進する計画です。
- 複雑な回路向けの大規模表現学習モデルの構築。
- 検証フロー自動化インテリジェンスの展開。
- AIと従来のツールのシームレスな統合の実現。
- システムレベル設計向けAIネイティブな方法論体系の確立。
徐強教授は、産学研連携イノベーションの推進者として、かつて国家集積回路設計自動化技術革新センターのチーフサイエンティストも務め、AIネイティブEDA戦略の策定にも深く関与してきました。その学術的影響力と産業経験は、ChipHua Technologyが大学、研究機関、産業パートナーと連携を強化し、最先端の研究成果を実際のチップ検証シーンへと迅速に転換させる上で役立つでしょう。また、学際的なチーム構築と人材育成における彼の経験も、同社の長期的な技術競争力を支えることになります。
まとめ
高複雑度化するチップ設計がもたらす検証ニーズに対し、ChipHua TechnologyはAI技術と検証ツールチェーンの融合を深め続ける方針です。徐強教授の参画は、同社がツール機能の構築から、方法論の革新と基盤技術の突破へと移行する象徴であり、AIを活用した半導体設計の新たな時代を切り開くものとして、今後の動向が注目されます。
元記事: pcd












