中国のWeChatミニゲーム市場は、下半期に入ってもその勢いを増し、熾烈な競争が繰り広げられています。2025年10月の売上ランキングでは、タワーディフェンスやシミュレーション経営といったカジュアルゲームが目覚ましい成長を見せる一方で、「レジェンド系MMO」と呼ばれる重厚なRPGジャンルが11タイトルもランクインし、市場の多様性と激しい動向を浮き彫りにしました。本稿では、最新のランキングデータから中国ミニゲーム市場の深層を探り、どのようなゲームがプレイヤーの心を掴んでいるのか、そのヒットの秘訣に迫ります。
WeChatミニゲーム市場の活況と最新トレンド
2025年10月のWeChatミニゲーム市場は、引き続きその変動の激しさを示しました。売上トップ100には20作以上の新作や再ランクイン作品が登場し、トップ50にも7つの顔ぶれが加わるなど、常に新しい動きが見られます。特に注目すべきは、「龍跡之城」といったタイトルに代表される「レジェンド系MMO」の躍進で、トップ100にはこのジャンルから11作品がランクインを果たしました。
レジェンド系MMOの存在感とカジュアルゲームの躍進
10月のWeChatミニゲーム売上トップ10は、「三国:氷河時代」、「向僵尸开炮」、「無尽の冬」、「道友来挖宝」、「ひまわりを守れ」、「マイガーデンワールド」、「傭兵の町」、「永遠の青い惑星」、「龍跡之城」、「神器伝説」となりました。新規のトップ10入りはありませんでしたが、「ひまわりを守れ」、「マイガーデンワールド」、「傭兵の町」の3作品が、初の、または再度のトップ10入りを果たし、ランキングを活性化させました。これらのタイトルは、いずれもカジュアルなゲームプレイが特徴です。
トップ20には、斧王网络科技の「云端之约」(12位)と、乐玩信息の「最強の闘王」(18位)という2つの新作がランクイン。全体としては、カジュアルゲームの成長が顕著で、「ひまわりを守れ」(15位上昇で5位)や「マイガーデンワールド」(6位)、「傭兵の町」(11位上昇で7位)といったタワーディフェンスやシミュレーション経営のタイトルが上位を席巻しています。しかし、トップ100全体を見渡せば、RPGが半数以上(54作品)を占め、SLGもトップ50に4作品(「三国:氷河時代」、「無尽の冬」、「ベンベン王国」、「ポケットソルジャー」)が入るなど、重度ゲームが依然として圧倒的な優位性を保っています。
市場では、特定のジャンルが人気を博すと、すぐに多くの類似ゲームが投入され競争が激化する「内巻(過度な競争)」現象が継続。タワーディフェンス、レジェンド系、経営シミュレーション、マッチングパズルといった人気ジャンルに加え、中国企業が得意とするRPGやカードゲームでも、数多くの作品がランクインしています。
激化するパブリッシャー競争:三七互娱が首位を堅持
パブリッシャーランキングでは、三七互娱が「尋道大千」、「英雄没有閃」、「時空大爆発」、「指先ピクセルシティ」、「エピックランド」、「時空雑貨店」の6作品をランクインさせ、不動の首位を維持しました。次いで、貪玩ゲームが3つのレジェンド系ミニゲームと1つのカードゲームを含む4作品で2位。大夢龍途、巨人ネットワーク、テンセントゲーム、豪騰創想はそれぞれ3作品で同率3位となりました。
特に大夢龍途は、「向僵尸开炮」、「ひまわりを守れ」、「武侠大スター」の3作品全てがトップ30圏内。巨人ネットワークの「原始征途」と「王者の征途」もトップ40圏内に入るなど、複数作品を上位に送り込むパブリッシャーの存在感が際立っています。また、詩悦ネットワークの二次元タワーディフェンス「永遠の青い惑星」が8位を獲得するなど、特定のニッチジャンルでも競争力のある作品が登場しています。
注目タイトル深掘り:ヒットの秘訣を探る
10月のランキングで特に注目された3つの新作・再ランクイン作品について、その特徴と人気の理由を見ていきましょう。
「云端之约」(斧王网络科技):Q版RPGが描く自動進行の魅力
12位にランクインした「云端之约」は、可愛らしいQ版キャラクターが特徴のRPGです。シンプルなメインストーリー、手軽なステージ攻略、自動戦闘といったミニゲームプラットフォームで人気の王道RPG要素を備えています。装備、鍛造、ペット、修仙など多岐にわたる育成システムがあり、プレイヤーはクエストをクリアすることでキャラクターを強化。自動戦闘のターン制を採用し、ステージを進めることで資源やアイテムを獲得できます。高額アイテムを無料で提供するオープニングイベントや、有料プレイヤー向けに課金ミスの回避や過去の課金額に応じた特典を提供するなど、手厚いサポート体制も特徴です。さらに、ランニングゲーム形式のミニゲーム「兄弟向前冲」といった広告要素も内包しています。
「最强斗王」(乐玩信息):人気格闘ゲームIPを活用したカードバトル
18位に登場した「最強の闘王」は、人気格闘ゲーム「拳皇(THE KING OF FIGHTERS)」を背景としたカードRPGです。草薙京、坂崎百合、東丈など「拳皇」シリーズのクラシックキャラクターがQ版スタイルで登場。ステージ制の冒険形式で、自動戦闘により経験値と報酬を獲得し、キャラクターのレベルアップや強化を行います。カードゲームファンにはお馴染みの、キャラクターのレベル、進化、覚醒、奥義といった育成ラインが充実しており、拳皇ファンやカードゲーム愛好者にとって、その美術スタイルとクオリティは大きな魅力となっています。即座にプレイできるミニゲームの特性も、カジュアルに楽しむのに最適です。
「向往的生活」(快乐芒果互娱):人気バラエティ番組と融合した癒やし系シミュレーション
40位にランクインした「憧れの生活」は、人気バラエティ番組と連携したカジュアルシミュレーションゲームです。ゲーム未経験者でも気軽に始められるシンプルなゲームシステムが特徴。簡単なストーリーと、マージパズルとインテリア要素を組み合わせたゲームプレイにより、視覚的な変化を楽しみながら遊べます。パズルをクリアし経験値を積むことで、農園のリノベーションが可能となり、その結果を視覚的なアニメーションで確認できるのが醍醐味です。コアとなるゲームプレイはシミュレーション経営とマージパズルで、パズルには体力が必要となりますが、時間を待つか、広告を視聴するか、課金することで回復できます。人気番組のIPを巧みに活用し、成熟した融合ゲームプレイによって、番組ファンからカジュアルゲーマーまで幅広くアピールしています。
まとめ:中国ミニゲーム市場の示唆と今後の展望
2025年10月のWeChatミニゲーム市場は、カジュアルゲームの急速な成長と、「レジェンド系MMO」のような重度ゲームの盤石な存在感が共存する、非常にダイナミックな様相を呈しています。人気IPの活用や、マージパズルとシミュレーション経営といった異なるジャンルの融合が成功の鍵を握る一方で、「内巻」と表現される激しい競争の中での差別化がますます重要になっています。
このような中国市場のトレンドは、日本のゲーム開発者やパブリッシャーにとっても大きな示唆を与えています。ミニゲームが持つ手軽さや、多様なジャンルを融合させるクリエイティブなアプローチは、新たなプレイヤー層の開拓や収益モデルの構築に繋がる可能性を秘めていると言えるでしょう。カジュアル性とミドルコア、双方のプレイヤーニーズを捉えるバランス感覚が、今後のゲーム市場を制する鍵となりそうです。
元記事: gamelook






