近年、ゾンビ映画やドラマが再び世界中で大きな注目を集めています。それに伴い、人気作品のリメイク、続編、そして新たな翻案作品が数多く登場する兆しが見られます。そんな中、2010年代に絶大な影響力を持ったゾンビ映画の一つ、ブラッド・ピット主演の『ワールド・ウォーZ』の続編企画がパラマウント・ピクチャーズで進行中と報じられました。
しかし、多くの映画ファンや原作ファンが本当に求めているのは、この映画版の続編なのでしょうか? 原作であるマックス・ブルックスの小説『World War Z: An Oral History of the Zombie War』の熱心な読者からは、映画版の続編よりも、原作に忠実な新たな映像化作品への強い渇望の声が上がっています。なぜなら、映画版と原作小説の間には、驚くほど大きな乖離が存在するからです。
映画版と原作小説、その圧倒的な乖離
まず、映画版『ワールド・ウォーZ』と原作小説の根本的な違いを見ていきましょう。
映画版:ブラッド・ピットが駆ける緊迫のサバイバル
ブラッド・ピットが主演を務めた映画版は、彼の演じる国連調査官ジェリー・レーンが、ゾンビウイルスの発生源を突き止め、解決策を探すために世界中を駆け巡るという、直線的で緊迫感あふれるアクションサスペンスとして描かれています。観客は彼と共に、息もつかせぬスリルとアクションを体験し、終始ハラハラさせられる展開が魅力でした。
原作:多角的な視点で紡がれる“ゾンビ大戦”のオーラルヒストリー
一方で、マックス・ブルックスの原作小説は、まったく異なるアプローチを取っています。これは、世界中で発生した“ゾンビ大戦”の終結から数年後、国連の調査官が世界中の生存者たちをインタビューし、その証言をまとめた「オーラルヒストリー(口述歴史)」形式で書かれています。
例えば、アメリカ陸軍兵士トッド・ワイニー(オーディオブック版ではマーク・ハミルが声を担当)は、「ヤンクス戦」と呼ばれる激戦の記憶を語ります。人類の大勝利となるはずだったこの戦いが、いかにしてゾンビ大戦の転換点となったかを、その絶望的な状況と人間の兵器の無力さを浮き彫りにしながら描写しています。
また、初期のパンデミックと戦ったロシア兵マリア・ジュガノワ(オーディオブック版ではジェリー・ライアンが声を担当)の物語も描かれます。彼女の証言は、ウイルスに関する情報がほとんどない中で、軍が民間人のゾンビ化を追跡するよう命じられ、いかに無力で危険な状況に置かれていたかを語ります。
このように、原作は数十人もの異なる生存者の視点を通じて、ゾンビ大戦の全貌を多角的に、そして深く掘り下げて描いているのです。
『ワールド・ウォーZ』が目指すべき映像化の形とは?
原作の持つ多様なナラティブと視点を考慮すると、映画版の続編よりも、「アンソロジー形式のテレビシリーズ」として映像化することが、その真価を発揮する最も理想的な形だと言えるでしょう。
『ブラック・ミラー』型アンソロジーシリーズのススメ
具体的には、人気ドラマ『ブラック・ミラー』のように、各エピソードが独立した物語として構成され、それぞれ異なる証言者の視点に焦点を当てる形式が考えられます。疑似ドキュメンタリースタイルでインタビュー部分を描きつつ、彼らが体験した出来事をドラマチックなフラッシュバックとして挿入することで、アクションシーンや緊迫した状況を効果的に表現できます。
オーディオブックが示す成功への道
このアイデアの実現可能性は、既に原作のオーディオブックによって証明されています。原作者マックス・ブルックス自身がインタビュアーを務め、数多くの有名声優たちが異なるキャラクターを演じることで、深い政治的・倫理的なテーマが織り交ぜられた重厚な物語が構築されました。
仮に、全編を徹底した疑似ドキュメンタリースタイルで制作したとしても、インタビューと資料映像の美学を追求しつつ、必要に応じてドラマ化されたフラッシュバックでアクションシーンを補完することは十分に可能です。この形式であれば、原作の持つ多層的な魅力を余すことなく映像で表現できるはずです。
まとめ
ブラッド・ピット主演の映画版『ワールド・ウォーZ』は、確かにスリリングで楽しめるゾンビ映画でした。しかし、それはあくまで典型的なハリウッド製アクション映画としての側面が強く、マックス・ブルックスの原作小説が持つ、多角的な視点から戦争を描くという、唯一無二の深みや複雑さは十分に表現されたとは言えません。
だからこそ、私たちは今もなお、原作の精神を忠実に捉えた真の映像作品を待ち望んでいます。いつの日か、この壮大なオーラルヒストリーが、スクリーンやストリーミングでその本来の姿を現す日が来ることを心から願ってやみません。
元記事: gamersky






