AIが財務管理のあり方を根底から変えようとしています。特に注目されるのは、煩雑な経費精算が不要になる「無需報銷(経費精算不要)」という未来。中国のAI財務管理サービスを提供するスタートアップ「合思(Heisi)」が、この革新的なアプローチを提唱しています。同社が主催し、デロイトが戦略支援する会議「AI in Present | 2025 Future Finance Conference」では、AI導入の成功と失敗の分かれ道、そして財務部門がAIをどう活用すべきかが深く議論されました。本記事では、この会議で発表された、AIプロジェクトが95%失敗するという衝撃的な現実と、それを乗り越えるための具体的な「四段階突破法」に焦点を当て、日本の読者にとって魅力的な情報をお届けします。
AIが財務の未来を再構築する:中国のパイオニア「合思」の挑戦
AI技術が、企業の財務管理のあり方を根底から変えつつあります。では、企業はいかにAIを導入し、どこから着手すべきなのでしょうか。この問いに答えるべく、9月26日、中国北京で「AI in Present | 2025 Future Finance Conference」が盛況のうちに閉幕しました。
このイベントは、中国のAI財務管理サービス企業である「合思(Heisi)」が主催し、世界的なコンサルティングファームであるデロイトが戦略的に支援しました。合思は2014年に設立されたスタートアップで、創業者兼CEOの馬春荃(Ma Chunquan)氏は、中国の大手ソフトウェア企業「用友(Yongyou)」での10年のキャリアを経て、費用管理(費控)分野で起業しました。同社は設立以来、財務のデジタル化とインテリジェント化サービスに注力し、著名なVC(ベンチャーキャピタル)やPE(プライベートエクイティ)からの厚い支持を受けています。
「経費精算不要」がAI財務の第一歩
会議の席上、合思の創業者兼CEOである馬春荃氏は、基調講演「AI in Present」の中で、財務分野におけるAI導入の第一歩として、「無需報銷(経費精算不要)」の実現を提唱しました。実際に合思は、早くも2022年には「経費精算不要」を実現するための企業費用管理レベル基準を発表しており、2024年にはその基準がL4からL5レベルへと進化しているといいます。
また、今回の会議では、デロイトと合思が共同で執筆したホワイトペーパー「財務管理新紀元:世界一流企業のスマート費用管理超越の道」が正式に発表されました。この白書は、AI時代における企業費用管理の「経費精算不要」レベル基準を提示し、企業がスマートな費用管理戦略を策定し、段階的に進化していくための明確なロードマップを提供しています。
馬春荃氏の視点では、AIは単に業務効率を10倍に向上させるだけでなく、コスト費率を大幅に削減し、最終的には企業の純利益を増加させる可能性を秘めています。財務部門にとって、AIは単なるツールではなく、企業価値を創造する戦略的なパートナーとなり得るのです。
AIプロジェクトが95%失敗する現実:3つの落とし穴と突破法
AIの活用がビジネス界の共通認識となる中で、「すべての業界はAIによって再構築される価値がある」という言葉が浸透しています。しかし、その一方で、厳しい現実も存在します。マサチューセッツ工科大学(MIT)の報告書によると、世界中で数百億ドルもの投資がAIプロジェクトに注ぎ込まれているにもかかわらず、150社の企業幹部、350人の従業員、300件の公開AI導入事例を総合的に分析した結果、95%もの企業AIプロジェクトが、測定可能な財務的または業務上のリターンを得られずに失敗に終わっていることが明らかになりました。
なぜAI導入は失敗するのか?MIT報告が示す課題
馬春荃氏は、企業におけるAI導入が困難である主な原因として、以下の3点を指摘しています。
- コンテキスト学習能力の欠如: 多くの生成AIシステムは「記憶」を持たず、フィードバックから継続的に学習・改善することができません。このため、企業の複雑で変化の多いワークフローに深く統合することが難しいのです。
- 硬直したワークフロー: 多くの組織は、AIの特性や潜在能力に合わせてプロセスを再設計するのではなく、既存のプロセスにAIを無理やり組み込もうとします。これが技術と業務の乖離を引き起こし、AIの真価を発揮できない原因となります。
- 日常業務からの乖離: 多くのAIプロジェクトが、一度きりの技術的な実験として扱われ、日常業務に深く組み込まれません。結果として、企業に長期的な価値をもたらすことができません。
合思CEOが提唱する「AI導入成功の四段階突破法」
これらの共通の課題に対し、馬春荃氏は企業がAIを「価値ある」形で導入するための「四段階突破法」を提示しています。
- AIの得意な仕事をさせる: AIがこなせないタスクを無理に割り当てず、また、特定のシナリオでAIがまだ実現できないからといってその活用を諦めないことです。AIの強みを最大限に活かすことに集中します。
- 最も実行可能で大規模なシナリオから導入する: AI導入のインパクトが大きく、かつ実現可能性が高い領域から始めることで、成功体験を積み重ね、組織全体への波及効果を狙います。
- 持続的に進化するAgentプラットフォームを構築する: 「静的事前学習」の限界を突破し、実際のビジネスシナリオにおいて「感知(認識)-決定-実行-フィードバック-最適化」というクローズドループを形成すること。これにより、AIの能力が螺旋状に向上し、進化し続けるシステムを構築します。
- AIフレンドリーな組織を構築する: 組織内の全員がAIとの協働能力を身につけ、AIの専門家だけに依存するのではなく、全従業員がAIを使いこなせる文化を育むことです。
まとめ
中国の「合思」が提示するAI財務の未来は、「経費精算不要」という具体的なユースケースから始まり、企業の効率と収益性を大きく変える可能性を秘めています。しかし、その道のりは平坦ではなく、AIプロジェクトの多くが失敗に終わるという現実も突きつけられています。
馬春荃氏の「四段階突破法」は、単にAI技術を導入するだけでなく、組織のプロセス、文化、そしてAIとの協働のあり方そのものを変革することの重要性を示唆しています。これは、AI導入を検討する日本の企業にとっても、非常に重要な示唆を与えるでしょう。
AIを真に価値あるものとしてビジネスに組み込むためには、AIの特性を理解し、適切な戦略をもって組織全体で取り組む必要があります。中国のテック企業が提唱するこの先進的なアプローチは、日本のビジネスパーソンがAI時代を生き抜くためのヒントとなるはずです。
元記事: pedaily












