近年、携帯ゲーム機市場が再び活況を呈しています。今年6月には任天堂の新型携帯ゲーム機「Switch 2」が、10月にはマイクロソフトのPC携帯ゲーム機「ROG Xbox Ally」が発売され、大きな話題となりました。
かつて携帯ゲーム機は、スマートフォンの台頭により「暗黒時代」を経験しました。しかし、DSとPSPの情報戦、インターネット黎明期のオンラインゲーム探求、そしてiPhoneとの熾烈な競争を経て、携帯ゲーム機は「不死鳥の如き復活」を遂げたのです。
この記事では、PSP、ニンテンドー3DS、PS Vita、そしてSwitchが入り乱れた2010年代の「大乱戦時代」に焦点を当て、携帯ゲーム機市場の激動の歴史を紐解きます。PSPが10年間戦い抜いた歴戦の勇士となり、3DSが犠牲を払って勝利を収め、PS Vitaが迷走を重ねた一方、Switchはいかにして新たな黄金時代を築き上げたのか。そして、DLSS3技術を搭載したSwitch 2が、この市場にどのような未来をもたらすのか、深掘りしていきます。
激動の2010年代!携帯ゲーム機「大乱戦」の幕開け
ゲームクリエイターの小島秀夫氏は、「携帯ゲーム機は出前、据え置き機は店内で食べる食事のようなもので、それぞれ異なる役割を担うべきだ」と語り、かつてGBA向けに太陽光で主人公を強化する『ボクらの太陽』を開発した経験から、「据え置き機では実現できない領域を携帯ゲーム機は探求すべきだ」と提言しました。この言葉は、携帯ゲーム機の「コンテンツが王様」という本質を突いています。
日本市場を席巻したPSPとDSの黄金期
2010年代初頭の日本市場では、DSとPSPが圧倒的な存在感を示しました。DSの『ポケットモンスター ブラック・ホワイト』は500万本を売り上げ、シリーズ最大級の変化と誠意を見せつけ、その年の日本で最も売れたゲームとなりました。一方、PSPの『モンスターハンターポータブル 3rd』も380万本のヒットを記録し、最終的に490万本を売り上げ、PSプラットフォームの日本における歴代最高売上を更新する大成功を収めました。
また、PSPでは小島秀夫氏が手がけた『メタルギアソリッド ピースウォーカー』が、携帯ゲーム機の環境に合わせ、協力プレイや『モンスターハンター』のようなボス戦を導入し、日本で90万本、全世界で200万本を販売。さらに、バンダイナムコは『ゴッドイーター』シリーズで『モンスターハンター』に正面から挑み、発売当初から60万本、拡張版『ゴッドイーター バースト』も40万本のヒットを飛ばし、PSPにおける主力作品となりました。
海外でのPSPの苦戦と3DSの登場
しかし、PSPの成功は日本市場に限定されがちでした。欧米では『ゴッド・オブ・ウォー:ゴースト・オブ・スパルタ』がPSPの性能を最大限に引き出したものの、販売数は120万本に留まり、前作の320万本を大きく下回りました。開発元のReady at Dawnは、「PSPでは海賊版が横行し、新作を出す意味がない」とまで発言するほどでした。これ以降、欧米でのPSP新作は、クロスプラットフォームのスポーツやレースゲームが中心となっていきます。
そんな中、任天堂は2010年3月にDSの後継機としてニンテンドー3DSを発表。E3で試遊機が公開されました。裸眼3D機能が最大の目玉でしたが、デュアルスクリーンとの相性問題が露呈します。画面間の視線移動でピントが合いにくく、タッチ操作が3D効果を損なうため、下画面は裸眼3Dに対応しませんでした。これにより、『nintendogs + cats』では、前作DS版のような直感的なタッチ操作が難しくなるなど、コンセプト自体の矛盾が浮き彫りになりました。
PS Vitaの登場と3DSの窮地
2011年1月、ソニーはPSPの後継機「NGP」(後のPS Vita)を発表し、PS3レベルのグラフィックを披露。Activisionが『コール オブ デューティ』シリーズの新作投入を約束するなど、大きな期待を集めました。
同年2月~3月に発売された3DSは、DS(15,000円)を大きく上回る25,000円という高価格と、ローンチタイトルの貧弱さ(『nintendogs + cats』の販売不振など)が響き、初期販売は低迷します。任天堂は「これ以上小型化はできない」と強調しましたが、この状況はソニーにチャンスを与えました。2011年6月のE3で、ソニーはPS Vitaを3DSと同価格で発表し、CapcomがPS Vita版『モンスターハンター』の開発を示唆するなど、市場の注目を集めます。
任天堂の大胆な決断とPS Vitaの登場、そして逆転劇
窮地に立たされた任天堂は、2011年8月、衝撃的な価格改定を断行します。3DSの価格を15,000円まで大幅に引き下げ、値下げ前に購入したユーザーにはFCとGBAのゲーム20本を無償提供する「アンバサダー・プログラム」を実施しました。これは、3DSのハードウェア利益とDSiの後期販売を犠牲にしてでも、PS Vitaに対する圧倒的な優位を築くための、任天堂の非常に大胆な決断でした。
さらに2011年9月、任天堂は『モンスターハンター3G』を3DS向けに発売することを発表し、外付けの右スライドパッド「Circle Pad Pro」も同時に投入します。かつてPSPの日本市場の支柱だった『モンスターハンター』シリーズが3DSに参入したことは、ソニーの携帯ゲーム機事業にとって致命的な一撃となりました。この後、2011年11月の『スーパーマリオ3Dランド』、12月の『マリオカート7』といった強力なファーストパーティタイトルが欧米市場を牽引し、3DSは苦境から見事な復活を遂げたのです。
「暗黒時代」を乗り越え、新たな「黄金時代」へ
2010年代は、携帯ゲーム機にとってまさに「大乱戦時代」でした。PSPは10年間戦い抜きましたが、最終的にはスマホの台頭と海賊版に苦しみました。3DSは裸眼3Dという先進技術を搭載しつつも、初期の価格設定とコンセプトの矛盾に悩みましたが、任天堂の大胆な決断と強力なソフトラインナップで逆転勝利を収めました。一方、PS Vitaは高性能を誇りながらも、市場投入のタイミングと戦略ミスが重なり、早期に市場から姿を消すこととなりました。そして、携帯性と据え置き機の中間という革新的なコンセプトで登場したSwitchが、任天堂の過去の英知を結集し、携帯ゲーム機に新たな黄金時代をもたらしたのです。
そして今年、Switch 2はDLSS3(AIアップスケーリング技術)による優れた電力効率と、発売から4日で350万台という驚異的な販売記録を樹立し、任天堂の携帯ゲーム機分野における覇権を確固たるものにしています。ソニーやマイクロソフトも、数年後には旧型ゲーム機との互換性を持つ新型携帯ゲーム機の投入を検討していると報じられており、携帯ゲーム機はスマートフォンによる「暗黒時代」を完全に乗り越え、不死鳥の如く復活を遂げたと言えるでしょう。今後の携帯ゲーム機市場は、ますますエキサイティングな展開を見せてくれるに違いありません。
元記事: chuapp
Photo by William Warby on Pexels












