中国ゲーム業界は、2025年も力強い成長を続ける一方で、新たな政策支援や市場の細分化が進んでいます。特に上海市が発表した巨額のゲーム・eスポーツ産業支援策「ゲーム滬10条」は業界に大きな注目を集めています。また、世界を見据える騰訊(テンセント)の海外インディーゲームスタジオへの投資や、最新の市場レポートから読み取れるトレンド、さらには人気ゲームの動向まで、多角的に中国ゲーム市場の「今」をお伝えします。
中国ゲーム産業、政策支援と市場の最新動向
上海・広州がゲーム・eスポーツ産業を強力支援
2025年12月17日から19日に上海で開催された中国ゲーム産業年次大会において、上海市は「ゲーム滬10条」という画期的なゲーム・eスポーツ産業支援策を発表しました。これは、年間総額5,000万元(日本円で約10億円※)もの資金を投じ、集積地の建設、良質なコンテンツ制作、技術革新、文化の海外輸出、金融支援などを多角的に支援するものです。企業には全期間にわたるサービスを提供し、高品質なリソースを産業発展の鍵となる環に的確に投入する計画です。
これに続き、徐匯区もゲーム・eスポーツ産業支援策を発表し、最大3,000万元(約6億円)の補助金を設けています。上海はeスポーツ産業において中国国内でトップを走り続けており、2025年上半期にはeスポーツゲーム本体以外の収入(ライブ配信、イベント、クラブなど)が32億5,400万元(約650億円)に達し、前年同期比6.91%増を記録。特にeスポーツライブ配信収入は21億2,200万元、イベント収入は5億700万元で、いずれも全国1位となっています。
また、広州市も「広州市ゲーム・eスポーツ産業発展支援18条」を近く発表する予定です。さらに広州市天河区は、オリジナルゲームに対して、国家新聞出版署による版号(中国国内でのゲーム配信許可証)を取得し正式に運営を開始した製品に対し、1作品につき最大10万元(約200万円)、年間累積で最大100万元(約2,000万円)の資金支援を行うなど、地方政府による積極的な支援策が相次いで打ち出されています。
※1元=約20円で換算
「2025年中国ゲーム産業報告」が示す成長と変化
2025年12月19日には、「2025年中国ゲーム産業報告」が発表され、中国ゲーム市場の売上高とユーザー規模が過去最高を更新し、持続的な成長を続けていることが明らかになりました。
- 国内ゲーム市場の実質販売収入:3,507億8,900万元(約7兆円)、前年同期比7.68%増
- ユーザー規模:6億8,300万人、前年同期比1.35%増
カテゴリ別では、モバイルゲーム市場が2,570億7,600万元(7.92%増)、クライアントゲーム市場が781億6,000万元(14.97%増)、コンソールゲーム市場が83億6,200万元(86.33%増)と顕著な成長を見せました。ミニプログラムゲーム市場も535億3,500万元(34.39%増)と好調です。
一方で、ウェブゲーム市場の収入は10年連続で下落し、2025年には43億2,500万元(6.74%減)となりました。また、二次元モバイルゲーム(日本でいうアニメ・漫画風のゲーム)市場も282億8,100万元(3.64%減)と減少しています。
ゲームの海外輸出については、中国国産ゲームの海外販売収入は204億5,500万ドル(約3兆円)に達し、前年同期比10.23%増と堅調な伸びを示しています。
騰訊のグローバル戦略と注目ゲームの最新情報
騰訊、フランスのインディーゲームスタジオ「Drama Studios」に投資
フランスの独立系ゲーム開発スタジオ「Drama Studios」が、騰訊(テンセント)からシリーズA投資を獲得したことを発表しました。Drama Studiosは2023年4月に超リアルなFPSゲーム『Unrecord』の早期予告編をIGNで公開し、その写実的なグラフィックで世界中のゲーマーの注目を集めました。この予告編は、2025年末までに1,200万回以上再生されています。
スタジオはX(旧Twitter)で、予告編公開時には寝室で働くプログラマーが2人しかおらず、業界経験もなかったと振り返っています。しかし2年後には開発者が10人に拡大。今回の騰訊の投資により、潤沢な開発予算を確保し、さらなる人材採用とゲーム制作に注力する予定で、2026年には更新されたゲームコンテンツを公開する計画です。
海外ゲームは、現在の騰訊ゲーム事業における重要な成長エンジンとなっています。2025年第3四半期の決算報告によると、騰訊の海外ゲーム市場収入は208億元(約4,160億円)に達し、前年同期比43%増と、初めて200億元を突破しました。また、騰訊は今年11月、Ubisoft Nova SAS(Vantage Studios)への11億6,000万ユーロ(約1,800億円)の戦略的投資を完了し、同Ubisoft子会社の株式26%を取得するなど、大規模な海外投資を積極的に進めています。
人気ゲームの新たな動き:復活と終焉、そして海外展開
- ByteDance IP『汐塔(シータ)』の復活:
2025年12月18日、ByteDance傘下のコンテンツIP『汐塔』が、新作アニメ短編『雲海逐鯨』を発表し、約2年ぶりに復活を遂げました。2023年末にByteDanceがゲーム事業を調整して以来、沈黙していた『汐塔』ですが、今回の復活はMoonton傘下のLighthouseスタジオが手掛けていることが明らかになっています。2年前の初短編『雲上郵差』は繊細な2D画風でBilibiliでの再生回数200万回を超えるなど、高い評価を受けていました。
- Manjuu Network『ブルーアース:旅の詩』の海外展開:
大人気ゲーム『アズールレーン』の開発元であるManjuu Networkの新作二次元オープンワールド捕獲RPG『ブルーアース:旅の詩』(中国名:蓝色星原:旅谣)が、韓国版の事前登録を開始しました。韓国での配信はNEXONが独占代理します。日本国内ではYostarと共同で、台湾ではNIJIGENが代理配信を行う予定です。公式サイトによると、全世界での事前登録者数はすでに730万人を突破しており、今後の動向が注目されます。
- 『新月同行』、418日で内容更新停止:
2025年12月15日、深圳燭薪網絡が開発した2D新怪談(ニューオカルト/SF風の怪談)ゲーム『新月同行』が、同日のバージョン更新をもって内容更新を停止すると発表しました。ゲームの正式リリースからわずか418日後のことで、現在はアプリストアからも削除されているようです。高い期待を集めていたタイトルの早期終了は、中国ゲーム市場の厳しさを物語る出来事となりました。
まとめ:変化の波に乗る中国ゲーム業界
中国ゲーム業界は、政府による強力な支援と多様な市場トレンドを背景に、国内外でその存在感を増しています。騰訊のような大手企業がグローバルな投資戦略を加速させる一方で、独創的なインディーゲームや人気IPの動向も常に注目されています。
市場全体の成長が続く中で、コンソールゲームやミニプログラムゲームといった特定カテゴリが爆発的な伸びを見せる一方で、ウェブゲームや一部の二次元モバイルゲームが苦戦するなど、市場の細分化と変化の速度は増しています。日本企業にとっても、この巨大な市場の変化は新たなビジネスチャンスや競争環境をもたらすでしょう。今後の中国ゲーム業界の動きから目が離せません。
元記事: chuapp












