中国のインディーゲーム界に大きな足跡を残したRPG『太吾绘卷』(The Scroll Of Taiwu)の完全版が、先日(1月10日と11日)、上海でオフライン試遊会を開催しました。UIの全面刷新、グラフィックの強化、そして詳細なゲーム内百科事典「太吾百暁冊」の実装など、ゲームプレイ体験が劇的に向上していることが明らかになりました。開発者「茄子」氏はこの試遊会を通じて、クリエイティブなコンテンツがプレイヤーの支持を得られるという自信を、後進のデベロッパーにも示すことを望んでいます。また、HuaweiのHarmonyOSとの提携によるモバイル展開や、400万字を超える英語ローカライズによる世界進出など、未来に向けた壮大な計画も語られました。
上海に熱狂!『太吾绘卷』完全版試遊会
上海市閔行区の商業施設地下にある中庭に、70台もの試遊用PCがずらりと並びました。早朝10時から開場にもかかわらず、受付には長蛇の列ができ、熱心なファンが詰めかけました。今回の試遊会は事前登録からの抽選制でしたが、最終的には約300人のプレイヤーが来場し、それぞれ2時間のプレイ時間で完全版のコンテンツを体験しました。会場のスペースが限られていたため、時間ごとの入替制がとられ、制作の茄子氏も「人が多すぎる」と驚きを隠せません。茄子氏は終日インタビューに対応し、試遊の合間を縫って質問に訪れるプレイヤーたちとの交流も欠かしませんでした。2023年に昆明のスタジオで行われた小規模な試遊会とは異なり、今回はより多くのプレイヤーに体験してもらうため、上海という大都市での開催を選んだとのことです。
大幅な進化を遂げた完全版の内容
UIとグラフィックの劇的改善
今回の完全版で最も直感的に感じられたのは、見た目の大幅な改善です。ゲームUIは大きく調整され、情報がより分かりやすくなり、メニュー階層も簡素化されました。キャラクターメニューや奇書宝典といった要素は、クイックホイールに統合され、テキストやアイコンも以前の過度に様式化されたデザインから、より簡潔で分かりやすいものへと変更されています。これにより、以前のバージョンで装備変更に3~4階層ものメニューをたどる必要があった煩雑さが解消されました。
また、新たなアニメーション効果やイベントCGも多数追加されています。古典的な「小さな黒い人」のシルエットで描かれていた戦闘シーンには、背景アートが加わり、各技には異なるエフェクトが実装されました。茄子氏によれば、実に2000種類以上の功法(技)アクションが作成されたとのこと。これにより、戦闘がより派手になっただけでなく、防御技と攻撃技の視覚的な区別がつきやすくなり、プレイヤーが技を「暗記」する必要が大幅に軽減されています。重要な地域イベントをトリガーすると導入CGが流れ、達成時には総括CGが挿入されるようになり、プレイヤーの達成感を高め、物語への没入感を深める工夫がなされています。
ユーザーフレンドリーな「太吾百暁冊」
ゲーム内で特に重要な更新の一つが「太吾百暁冊」です。これは単なるチュートリアルにとどまらず、30万字以上にも及ぶゲーム内公式百科事典として機能します。『太吾绘卷』の複雑なシステムを理解するために、螺舟工作室はこれまでも新手プレイヤーのサポートに力を入れてきましたが、この「太吾百暁冊」はその集大成と言えるでしょう。世界観、登場人物から建設、戦闘システムに至るまで、プレイヤーが自主的に作成するWikiページに代わり、全ての知識がゲーム内に集約されています。将来的には、ゲーム内で登場する重要なキーワードがリンク化され、よりシームレスな情報アクセスが可能になる予定です。
遊びやすさと奥深さの両立
今回の試遊で体験した『太吾绘卷』完全版は、全体的に「より分かりやすく、使いやすい」方向へと進化していました。しかし、その根幹にある「奥深さ」や「難しさ」を削ぎ落としたわけではありません。むしろ、さらに多くの要素が追加され、複雑さが増している部分もあります。しかし、機能面においては、多くのプレイヤーが慣れ親しんでいる「現代のゲーム」の形に近づいていると言えるでしょう。茄子氏は、2020年にゲームをゼロから作り直すことを決断した理由について、「当時の『太吾绘卷』の品質が、その販売数や価格に見合っていないと理解していたからだ」と語ります。現在のバージョンは、彼が理想とするゲームの姿にようやく近づきつつあるのです。
未来を見据える『太吾绘卷』の挑戦
HarmonyOSとの提携とモバイル展開
試遊会では、『太吾绘卷』が今後さらなるプラットフォームへの展開を計画していることも明らかになりました。特に注目されるのは、Huawei製スマートフォン向けのHarmonyOSとの深度な提携です。茄子氏はこの提携を、2018年頃のSteam黎明期の状況になぞらえます。「当時、Steamでゲームを出すのは無理だと言われたが、私たちはその道を切り開いた。HarmonyOSも同様に、このプラットフォームを成功させれば、将来より多くのクリエイターやインディーゲーム開発者にとって新たな大きな選択肢となるだろう」と語っています。HarmonyOSは営利目的ではなく、技術面で開発者を支援する姿勢を示しており、他社のモバイルプラットフォームのような商業化要件や高額な手数料がないことが、独立系ゲームにとって大きな魅力となっているとのことです。
400万字超の英語ローカライズで世界へ
驚くべきことに、『太吾绘卷』の英語ローカライズは数年前から進められており、今後は海外プレイヤー向けにリリースされる予定です。400万字を超える膨大なテキスト量と、中国文化特有の概念を正確に翻訳する作業は、非常に困難なプロジェクトです。螺舟工作室は、単に意味を伝えるだけでなく、ゲーム本来の文化的特色を可能な限り保持することを目指しています。例えば、「鳳凰」や「龍」といった概念は、西洋的な「Phoenix」や「Dragon」に置き換えるのではなく、元の形態を尊重した翻訳を試みています。
海外市場での反響について茄子氏は「想像以上に良い。プロモーションも予想より簡単だった」と述べ、欧米市場では中国市場とは異なる評価基準があることを指摘しました。中国プレイヤーがゲームの「テーマ」(武侠、仙侠、三国など)を重視する一方、海外プレイヤーは「ゲームプレイの基調」(TRPG的、SLG的など)により関心を抱く傾向があるとのこと。『太吾绘卷』のゲームプレイはTRPGと共通する面白さがあるため、海外での受け入れられ方も高いと分析しています。
IPの多角化と新たな可能性
さらに、茄子氏は将来的な展望として、『太吾绘卷』関連のアニメや短編ドラマの可能性についても言及しました。詳細はまだ明かせないものの、IPの多角的な展開を視野に入れていることがうかがえます。試遊会場にはスタジオスタッフが制作した『太吾绘卷』のテーブルゲームも展示されており、ゲームの枠を超えた広がりを見せています。
まとめ
『太吾绘卷』完全版の試遊会は、単なるゲームのアップデート以上の意味を持つイベントでした。ユーザー体験の大幅な向上、HarmonyOSとの連携による新たなプラットフォームへの挑戦、そして400万字を超える大規模な英語ローカライズによる世界展開など、螺舟工作室は「困難な道を切り開く」という先駆者としての姿勢を強く示しています。彼らの成功は、中国のインディーゲーム開発者たちに「クリエイティブなコンテンツが評価され、世界に通用する」という大きな自信を与えるでしょう。日本市場においても、この奥深くも遊びやすくなった『太吾绘卷』がどのような反響を呼ぶのか、その動向に注目が集まります。中国の独自文化を尊重しつつ、グローバルなプレイヤーに受け入れられようとする彼らの試みは、今後のゲーム業界に新たな刺激を与えるに違いありません。
元記事: chuapp
Photo by Victor Zhang on Pexels












