2026年1月、中国ゲーム業界は目覚ましい動きを見せました。政府機関によるゲームの販売許可、通称「版号」が182本ものタイトルに発行され、国内市場の活況を裏付けています。さらに、年間では5本の国産タイトルがミリオンセールスを達成し、新たな記録を樹立。騰訊(テンセント)、完美世界(パーフェクトワールド)、世紀華通(センチュリー・フアトン)といった大手デベロッパーも好調な業績を報告しており、その成長を牽引しているのは海外市場での目覚ましい躍進です。続々と発表される個性豊かな新作ゲームや、各社の戦略から、日本市場にも影響を与えそうな中国ゲーム業界の最新トレンドを深掘りします。
版号が182本に発行!国内外の注目新作が続々承認
2026年1月26日、国家新聞出版署は1月分の国産・輸入ネットワークゲームの承認情報、および2026年第1弾のゲーム承認変更情報を公開しました。これは、中国でゲームを正式に販売するために必須とされる「版号」と呼ばれる許可証の発行状況を示すものです。
国産ゲームのトレンドと注目作
今回、国産ゲームは177本が承認され、昨年に引き続き安定した発行数を維持しています。その内訳を見ると、モバイルゲームが圧倒的多数を占め、PCクライアント専用ゲームは2本、モバイルとPC両対応のゲームは10本に留まりました。特に注目されるのは、「カジュアルパズル」のカテゴリで、64本ものタイトルが承認されている点です。これは、手軽に楽しめるゲームへの需要が高いことを示唆しています。
個別の注目タイトルとしては、太古の時代を舞台にしたサンドボックス型チーム対戦オンラインゲーム『決戦万界山』、まだ詳細が不明な『天諾』といったPCタイトルがあります。また、見下ろし視点のアクションローグライク『ハデス』に似た『维兹之刃』や、NetEase初の中国風妖怪大戦オートチェスゲーム『妖妖棋』なども、そのユニークなコンセプトで注目を集めています。
海外タイトルは「レインボーシックス シージ」などが許可
輸入ゲームとしては、5本のタイトルが版号を取得しました。PC版『レインボーシックス シージ』のほか、モバイルゲームでは『ラピスストーリー:アリスの王国』、『アングリーバード:クラシックリターンズ』、『アングリーバード:ドリームブラスト』、『秘境奪金』が承認されています。これらのタイトルは、既に世界中で高い人気を誇るIPであり、中国市場での展開が期待されます。
さらに、今月は14本のゲームで承認情報の変更が行われました。NetEaseのヒット作『蛋仔派对』はPCクライアント版の追加を申請し、『无尽的拉格朗日』は『星际猎人』へと名称を変更しています。また、人気マッチ3パズルゲーム『夢幻家園(夢の庭)』や『三国殺』シリーズの複数の製品で運営単位の変更がありました。
大手企業の業績が絶好調!海外市場での躍進が顕著
中国の主要ゲーム企業は、2025年度に驚異的な成長を遂げています。特に海外市場での成功が、各社の業績を大きく牽引していることが明らかになりました。
世紀華通(Century Huatong)は売上・利益が大幅増
1月29日、世紀華通は2025年度の業績予想を発表し、売上高、利益、キャッシュフローの全てにおいて前年比で大幅な増加を達成しました。連結営業収入は約380億元(約8000億円)で前年比約68%増、親会社株主に帰属する純利益は55.5億~69.8億元(約1100億~1400億円)と、前年比357%~475%増という驚異的な伸びを予測しています。
この成長の立役者はゲーム事業であり、特に海外市場での功績が際立っています。子会社である点点互动(DianDian Interactive)の現象級ヒット作『Whiteout Survival』(中国名『无尽冬日』)は、リリースから3年が経過してもなお新たなピークを迎え、中国モバイルゲームの海外売上ランキングで1位を維持。新作SLG『Kingshot』も急速に成長し、同ランキングで3位にランクインしています。国内市場でも『无尽冬日』は好調を維持し、新作『奔奔王国』も着実に成長を遂げています。また、盛趣游戏(Shanda Games)が手掛けたIPベースのモバイルゲーム『传奇新百区—盟重神兵』や『龍之谷世界』なども市場で好成績を収め、世紀華通の利益の柱となっています。
完美世界(Perfect World)も黒字転換、ゲーム事業が牽引
1月30日、完美世界も2025年度の業績予想を公表しました。全体として黒字転換を果たし、純利益は7億元(約140億円)を超える見込みです。特にゲーム事業が主要な利益源となり、ゲーム事業からの親会社株主に帰属する純利益は8.3~8.7億元(約170億~180億円)と予想されており、2024年からの黒字転換を達成しています。
完美世界は今後も、現在開発中のゲームに注力し、長期的な価値を掘り下げていくと表明。既存のMMOや二次元ジャンルの製品ラインナップを強化しつつ、SLGやカジュアルゲームといった新ジャンルにも積極的に進出し、さらに海外事業への取り組みも強化していく方針を示しています。
騰訊(Tencent)ゲームは世界市場を凌駕する成長率
1月26日に開催された騰訊の年会では、馬化騰(ポニー・マー)董事局主席と劉熾平(マーティン・ラウ)総裁が講演を行いました。講演の多くは、2025年のAI分野への投資とその将来性に関するものでしたが、ゲーム事業についても重要な発表がありました。
劉熾平総裁は、2025年の世界ゲーム市場の成長率がわずか3%だったのに対し、騰訊ゲームは23%もの成長を達成したと述べました。この成功は、『王者荣耀』、『和平精英』、『三角洲行動』といった長期にわたって人気を維持している複数のタイトルが、ユーザーアクティビティと収益において顕著な伸びを見せたことに起因すると分析しています。さらに、2025年には国際市場からの収益が騰訊ゲーム事業全体の30%を占め、年間海外収益は100億ドル(約2兆円)を超える規模に達したことも明らかにされました。これは、騰訊がグローバルなゲーム企業としての地位を確立しつつあることを強く示唆しています。
国産ミリオンヒットが続々!個性豊かな新作も登場
中国国内市場でも、国産ゲームの勢いは止まりません。年間ランキングでは、複数のタイトルがミリオンセールスを達成し、開発者の注目を集めています。
2025年国産ゲーム年間売上ランキング発表
1月29日、「国游销量榜(国産ゲーム売上ランキング)」は2025年度の国産ゲーム売上ランキングを発表しました。それによると、2025年の国産ゲームの総販売額は約31.6億元(約660億円)に達し、5タイトルがミリオンセールスを突破するという新記録を樹立しました。
ランキング上位5タイトルは以下の通りです。
- アクションゲーム『逃離鴨科夫』(約380万本)
- インタラクティブ映像ゲーム『女王的游戏:盛世天下媚娘篇』(約180万本)
- ストーリー戦略ゲーム『苏丹的游戏』(約140万本)
- ARPG『明末:渊虚之羽』(約126万本)
- ストーリーシミュレーションゲーム『情感反诈模拟器』(約124万本)
これらのタイトルは、ジャンルやテーマの多様性を示しており、中国国内のゲーム開発力の向上を物語っています。
騰訊のカジュアル新作「奥星熱浪」が早くも話題に
1月28日、騰訊は傘下のカジュアルモバイルゲーム『奥星熱浪』の「ハキ高テスト」実機デモ動画を公開しました。この動画は、大量の「梗」(ミーム、流行ネタ)を盛り込んだ内容で大きな話題を呼び、「乐子人搜打撤(楽しむことを追求するプレイヤーが索敵・攻撃・撤退を行う意)」というユニークなキャッチフレーズと共に注目を集めています。動画公開から8時間で再生回数200万回を突破し、その高いエンゲージメントを示しました。ゲームは2月3日から11日まで「ハキ高テスト」の参加者を募集しており、プレイヤーは「ふわふわの身体でとんでもない魔性の武器を振り回し、ハキタウンを縦横無尽に駆け巡りながら、ネットの流行ネタを装備として拾う」という、型破りな体験が約束されています。テスト版には9種類の異なるコアなゲームプレイが含まれ、「搜打撤」をメインに、パーティー競技、カジュアル育成、音楽リズムなどの要素も盛り込まれています。
注目のインディー/中規模開発タイトル
中国のゲーム業界では、大手だけでなく、インディーや中規模デベロッパーからも注目すべき新作が発表されています。
- 武侠ARPG『一盞秋声:錦衣衛』:1月29日には、国産武侠アクションARPG『一盞秋声:錦衣衛』の初のPVが公開されました。プレイヤーは「推演」能力を持つ錦衣衛となり、箱庭型のステージで時空を超えた冒険を繰り広げます。壁走りや敵の技を見切る「見招拆招」といったアクションが特徴です。開発は、単独で『剣魄』を開発した劉啓威氏(離憂先生)が率いる6人チーム。試遊では戦闘システム、多分岐の物語、そして「巻き戻しシステム」が評価された一方で、ステージデザインには更なる磨きが必要とされています。
- 涼屋遊戲(ChillyRoom)の新作『蝼蚁之城』:『楼蘭:呪いの砂』に続き、涼屋遊戲は新作『蝼蚁之城』を発表しました。これは、サイバー神話の世界を舞台にした俯瞰型アクションゲームで、プレイヤーは廃棄命令を受けた合成人となり、武器やチップ、カルマを組み合わせながら機械の妖怪と戦い、ループの中で都市の真実を暴き出すことを目指します。『ハデス』シリーズに似たゲームフローが採用されており、美術や戦闘デザインにも独自性が光ります。Roguelikeやアクションジャンルで実績のある涼屋遊戲だけに、今作も期待が高まります。
まとめ:中国ゲーム市場の活況と日本への示唆
2026年1月の中国ゲーム業界は、版号の安定した発行、大手企業の飛躍的な業績成長、そして国産ミリオンヒットタイトルの増加というポジティブなニュースに満ち溢れていました。特に、騰訊や世紀華通といった大手企業が海外市場で驚異的な成功を収めている点は、中国ゲームが単なる国内市場の規模だけでなく、グローバルな競争力を持っていることを強く示しています。
カジュアルゲームの需要の高まりや、個性豊かなインディー・中規模開発タイトルの台頭は、中国ゲーム市場の多様性と成熟度を物語っています。ミーム文化を取り入れた騰訊の新作『奥星熱浪』のように、独自のカルチャーと結びついたコンテンツが大きな注目を集めるケースも出てきており、今後のトレンドを予測する上で重要な要素となるでしょう。日本にとっても、中国ゲーム市場の動向は無視できないものとなっています。この巨大市場の活況は、今後のゲーム業界全体のトレンドを左右する可能性を秘めており、日本企業との協業や、新たな競争の機会を生み出すかもしれません。
元記事: chuapp
Photo by Yan Krukau on Pexels












