2億元超えのヒット作が生まれる一方で、開発元の破産も相次ぐ――。中国の生活シミュレーションゲーム市場は、今まさに激しい戦国時代を迎えています。日本の「あつまれ どうぶつの森」をきっかけにブームが到来したこのジャンルは、大手企業が続々と参入し、ユニークなアイデアを競い合っています。しかし、その裏では、収益化の難しさや開発コストの高騰、そして差別化の不足といった課題が浮き彫りになり、多くの作品が短命に終わる現実も。この記事では、中国における生活シミュレーションゲームの最新動向と、成功と失敗を分ける要因について深掘りします。
白熱する中国生活シミュレーションゲーム市場
2026年が始まったばかりですが、中国の生活シミュレーションゲーム市場はすでに熱気を帯びています。2025年末に発表されたMoonton(沐瞳)の新作『コードネーム:Lovania(代号Lovania)』は、ローンチから1ヶ月足らずでTapTapの事前予約が40万件に迫る注目作です。このゲームは、心地よい「ホワイトノイズ」システム、手描き水彩画のようなグラフィック、そして広大なオープンワールド要素でプレイヤーに新たな「癒し」を提供しています。同時期にはTencent(テンセント)も『粒粒的小人国』の初回テスト開始を発表するなど、今年はまさにこのジャンルが激戦を繰り広げる一年となりそうです。
このブームを牽引する一翼を担っているのが、2024年末にリリースされた『心動小鎮』です。最近の最新アパレルや家具セットの追加により、中国国内のゲームセールスランキングで7位、そして日韓市場では2位にまで急浮上しました。データによると、iOSとGoogle Playの両プラットフォームで、すでに2億元(約40億円)を超える売上を達成しているとのことです。Tencent、NetEase(ネットイース)、miHoYo(ミホヨ)といった中国の大手ゲーム企業も、この数年で続々とこのジャンルに参入し、市場の熱気をさらに高めています。
「あつ森」が火をつけたブームの波
業界では、この生活シミュレーションゲームブームの大きなきっかけとなったのは、2020年3月に任天堂がリリースした『あつまれ どうぶつの森』(あつ森)だと広く認識されています。「あつ森」はゲームファンだけでなく、それ以外の層にも広く浸透し、その影響力は計り知れません。《桃源深处有人家》のプロデューサーである葉田氏も、かつて競技性の高いゲーム開発で限界を感じていた際に「あつ森」から大きなインスピレーションを受け、「癒しに特化したシミュレーションゲームが今のプレイヤーのニーズに応えられるかもしれない」と感じたと言います。
成功の秘訣と直面する壁
しかし、このブームの裏には、期待通りの成果を出せずに「素早くリリースされ、素早くサービス終了する」製品も少なくありません。例えば、《米姆米姆哈》はリリースからわずか数ヶ月で開発元の趣糖網絡が大規模な人員削減を行い、2026年1月には破産手続きに入りました。ベテラン開発者の李言氏は、この状況を「差別化が不十分な上、ゲームが乱立しているため、頭一つ抜き出すのが非常に難しい」と指摘します。
「差別化」で勝負する新作たち
多くの生活シミュレーションゲームが、「新しい惑星や島に突然降り立ち、開拓して家やお店を建て、友好的なNPCと交流する」という似たような導入と遊びのループを持っています。このため、各社はアートスタイル、テーマ、または特定のゲームプレイ要素で差別化を図っています。
- 《コードネーム:Lovania》(Moonton):童話のような手描き水彩画風、環境音を取り入れたホワイトノイズシステム、音楽を主軸としたオープンワールド探索(音ゲー要素、記憶の収集、風船探しなど)が特徴です。
- 《粒粒的小人国》(Tencent):プレイヤーは小さな体の主人公となり、寝室の机の上など、日常の風景が壮大なミニチュア世界として描かれます。忘れ去られた目覚まし時計が揺り椅子になり、眼鏡ケースがソファになるなど、ユニークな視点が魅力です。
- 《星绘友情天》(NetEase):視覚的な「立方星」デザインが特徴で、プレイヤーは星の端から別の面に飛び移ることができます。建設時には立方体が平面に展開し、プランニングを容易にします。さらに、120種類ものミニゲームを含む多人数パーティー要素も盛り込まれています。
- 《星布谷地》(miHoYo):惑星探索、NPCとの関係性構築、惑星育成といった要素が加わっています。AIが店長を務めるカフェなど、ユニークなソーシャルエリアも用意されており、miHoYoらしいアニメーションとグラフィック品質も際立っています。
「癒し」と「収益化」の矛盾、高い開発コスト
しかし、こうした差別化の努力にもかかわらず、多くの開発者が口を揃えるのは、生活シミュレーションゲームが「地雷を踏みやすい」ジャンルであるということです。2020年以降、本当に成功したタイトルはごくわずか。その最大の原因の一つが、高い開発コストと長い開発期間にあります。一見カジュアルに見えるこのジャンルは、プレイヤーに十分な没入感とリアリティを提供するために、非常に豊富なコンテンツが求められます。
《心動小鎮》を例にとると、2016年の企画から2020年の再開発までに1.2億元(約24億円)もの費用が投じられています。Steamでリリース予定の《星砂島》も、開発効率は高いものの、開発とマーケティングの総予算は1000万ドル(約15億円)に達すると言います。
一方で、「癒し」をテーマとする生活シミュレーションゲームと「課金による収益化」の間には、しばしば矛盾が生じます。典型的な失敗例として挙げられるのが、Tencentが2021年に代理リリースした《小森生活》です。美しいグラフィックにもかかわらず、複雑なUIデザインと高い課金誘導は、プレイヤーがこのジャンルに求める「癒し」とはかけ離れていました。結果として、リリース直後にセールスランキング6位まで上昇したものの、1ヶ月足らずで100位圏外へと落ち込みました。
まとめ:日本市場への示唆と今後の展望
中国の生活シミュレーションゲーム市場は、まさに群雄割拠の時代を迎えています。成功を収める作品がある一方で、資金難や差別化の失敗により撤退を余儀なくされる開発元も少なくありません。多くの専門家は、このジャンルには大DAU(デイリーアクティブユーザー)を獲得できる製品が登場する可能性があると見ていますが、そのためには「商業モデルの確立」「高騰する開発コストへの対応」「プレイヤーの評判の二極化対策」といった普遍的な課題を乗り越える必要があります。
日本のゲーム市場でも生活シミュレーションは根強い人気を持つジャンルです。中国市場で繰り広げられる試行錯誤は、日本のゲーム開発者にとっても、このジャンルの可能性と課題を探る上で貴重な示唆を与えてくれるでしょう。今後の中国市場の動向から目が離せません。
元記事: chuapp
Photo by Nino Souza on Pexels












