空襲警報が鳴り響き、停電が頻繁に起こるウクライナの街オデッサ。そんな過酷な状況下で、1980年代の日本のバブル経済をテーマにしたゲームを開発し、世界中で10万本以上のセールスを記録するインディーゲーム開発者がいます。彼の名はTERNOX(ルスラン)。ロシア軍に占領された故郷から離れ、前線近くに残る両親を案じながらも、創作活動を続ける彼の原動力とは一体何なのでしょうか。今回は、中国のゲームメディア「触乐」がAI翻訳を駆使して実現した、TERNOX氏への貴重なインタビューから、その驚くべき物語をお届けします。
戦火の中で生まれた、日本の泡沫経済シミュレーション
TERNOX氏が開発した『STONKS-9800』(日本語訳:東京股神STONKS-9800)は、1980年代の日本を舞台にしたテキストベースのビジネスシミュレーションゲームです。Steamでは95%もの高評価を獲得し、その独特の世界観と中毒性で多くのプレイヤーを魅了しています。しかし、このユニークなゲームが、ウクライナの戦火、特に頻繁な空襲と停電に見舞われるオデッサで開発されたという事実は、多くの人にとって驚きでしょう。編集部は、TERNOX氏がどのようにしてこの作品を私たちのパソコンに届けてくれたのか、その背景を探りました。
逆境を乗り越えるクリエイター、TERNOX氏の軌跡
TERNOX氏、本名ルスランは、ウクライナのザポリージャ州にある人口2万人の小さな町で育ちました。90年代のウクライナは経済的に困難な時代でしたが、彼は海賊版ファミコン(当時は誰もそれが海賊版だとは知らなかったそうです)で遊び、豊かな少年時代を過ごしました。特に、日本のRPGは言語の壁で遊べなかったと語る彼の言葉からは、幼い頃から日本文化への興味が垣間見えます。彼の語る幼少期の思い出は、まるで牧歌的な『どうぶつの森』の世界のようで、ゲーム『STONKS-9800』に出てくる「童年時代の小川での休暇」にも影響を与えています。
意外なことに、彼は大学で経済学を専攻し、公務員として国家土地登記管理の仕事をしていました。しかし、この仕事は彼の性には合わず、常にクリエイティブな活動に時間を費やしていました。きっかけは、彼が開発した最初のゲーム『Taimumari』がSteam Greenlightを通過し、Steamでの販売が可能になったこと。この成功を機に、彼は安定した公務員の職を辞し、本格的に独立ゲーム開発者の道を歩み始めました。彼の決断は正しかったと証明され、『Taimumari』の収益はすぐに公務員時代の給料を超えたのです。
なぜ「1980年代の日本」なのか?『STONKS-9800』に込められた情熱
『STONKS-9800』の着想は、2020年のGame Jamがきっかけでした。テーマは「成長を見守る」。「収入の成長」という面白いアイデアから、当初は80年代の日本のH-Game開発シミュレーターを構想していたとのこと。しかし最終的には、株取引とランダムイベントを組み合わせたゲームへとシフトしました。
日本に一度も訪れたことのない彼が、なぜ80年代の日本のバブル経済に魅せられたのでしょうか?その背景には、幼少期にプレイしたソ連末期の経済戦略DOSゲーム『Kommersant』への深い思い入れがあります。このゲームはキエフのRada Ltd.社によって開発された、いわばTERNOX氏の「精神的な故郷」のゲームです。彼はこのゲームの「交易所」での売買、銀行預金、住宅・車購入、ランダムイベント、競馬やスロットといった要素を現代に蘇らせたいと考えていました。
さらに、彼は日本のレトロPCゲーム史、特にPC-98シリーズに深く興味を抱いていました。「任天堂とセガの競争は語り尽くされているが、PCゲームの歴史はほとんど掘り下げられていない」と感じた彼は、PC-98の歴史を独自に研究。また、『CLANNAD』や『Kanon』、『AIR』といった日本のビジュアルノベル作品を愛好しており、その起源を探ることも、彼の創作意欲を刺激しました。これら日本文化への深いリスペクトと、バブル経済の「収入の急成長」というテーマがGame Jamの題材と見事に合致し、『STONKS-9800』が誕生したのです。
2022年2月24日、日常を破壊した戦争
2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった日、TERNOX氏はオデッサにいました。海に面し、ウクライナ唯一の深水港を持つ軍事要衝であるオデッサは、ロシア艦隊による攻撃の標的となる可能性が高いとされていました。TERNOX氏は、マリウポリが経験したような壊滅的な爆撃が、自身の街にもいつ起きるかと真の恐怖を感じていたと語ります。
この記事は、戦争が彼の日常と創作活動に与えた深い影響を示唆しています。停電や空襲警報の合間を縫って、彼は開発を続けているのです。故郷ザポリージャ州の小町はロシア軍に占領され、両親は今も前線近くにいます。そのような状況下で、彼が日本のバブル経済という、ある種の「楽観と繁栄」の時代をゲームのテーマに選んだことは、私たちに深く考えさせるものがあります。
困難を乗り越え、世界へ届けられる物語
TERNOX氏の物語は、困難な状況下でも創造性を失わず、自らの情熱を追求するクリエイターの強さを示しています。彼が日本のバブル経済やPC-98といった、遠く離れた国の文化に魅了され、それを自らの作品に昇華させたことは、国境を越える文化の力、そしてゲームというメディアの可能性を私たちに教えてくれます。戦火のウクライナから届けられる『STONKS-9800』は、単なるゲームを超え、TERNOX氏の希望と創造の証として、世界中のプレイヤーに感動を与え続けているのです。
元記事: chuapp
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