中国のゲーム業界は常に変化のスピードが速く、今週もまた、注目すべきニュースが数多く報じられました。政府による産業支援策の発表から、大手企業の人材移動、期待の新作情報、さらには複数の人気タイトルのサービス終了や、世界的な大手Xboxのリストラといったネガティブな話題まで、まさに「光と影」が交錯する一週間となりました。本稿では、日本のゲームファンや業界関係者の皆様に向けて、中国ゲーム業界の最新動向を詳しくお届けします。
中国政府によるゲーム・eスポーツ産業の強力な支援策
北京経済技術開発区が独自支援策を発表
6月6日、北京経済技術開発区(日本でいう「経済開発区」のような産業振興地域)は、ゲーム・eスポーツ産業の高品質な発展を促進するための具体的な措置(意見募集稿)を発表しました。この措置では、ゲーム開発、運営、配信、eスポーツクラブ、人材育成、イベント開催など、「技術開発-運営発行-イベント-人材育成-プラットフォームサービス」という全産業チェーンの構築を目指し、北京を全国有数のゲーム・eスポーツ技術革新拠点、イベント運営センター、国際トップイベント開催地とする目標が掲げられています。
具体的な支援内容は多岐にわたります。例えば、オリジナルゲーム(モバイル、クライアント、コンソール、クラウドゲームなど)の正式サービス開始に対しては、1作品あたり20万元(約430万円)の奨励金が支給され、同一企業は年間最大60万元(約1,300万円)を受け取ることができます。また、ゲームの長期的な安定運営を奨励するため、開発・運営費用の30%を上限に、1作品あたり最大1,000万元(約2億1,500万円)の奨励金が提供されます。
eスポーツ分野では、プロeスポーツクラブの運営支援として、国際プロeスポーツ大会で3位以上の成績を収めたクラブには年間最大600万元(約1億3,000万円)、全国大会で3位以上の成績を収めたクラブには年間最大200万元(約4,300万円)が支給されます。さらに、ゲームエンジンやeスポーツイベント運営などの標準化活動を奨励し、国際標準や国家標準などを制定した主体には、最大100万元(約2,150万円)の一時金が支援されるとのことです。
業界を揺るがす人事異動と新作の動向
元NetEase「夢幻西遊」事業部責任者が4399へ移籍
6月11日、NetEase(網易)の元高級副総裁であり、「夢幻西遊」事業部のかつての責任者であった林雲楓氏(通称:小白)が、大手ゲーム企業4399に入社したと報じられました。林氏は「夢幻西遊」の初期プランナーの一人で、長年同プロジェクトを率いてきた人物です。彼の移籍には、かつて林氏が担当していた二次元プロジェクトのプロデューサーである朱治氏も同行しているとされています。
林氏は今年1月にNetEaseを離職した後、SLG(シミュレーションRPG)分野での起業を計画していましたが、最終的に4399への入社を決断したようです。4399は近年、ミニゲームや海外パブリッシングで成功を収めていますが、SLG分野では苦戦を強いられていました。林氏の持つ重度数値系ゲームの経験やSLG分野への知見が、4399の今後の戦略にどのように影響するか、注目が集まります。
『万民長歌:三国』がAIとUGCで再始動
開発期間4年、チーム解散、そして内部での再始動という波乱の経緯を辿った『万民長歌:三国』が、6月10日に再始動後初のDemoを公開しました。現在、プレイヤーはSteamでこのDemoを体験できます。
本作の開発チームはわずか8名と少数精鋭であり、彼らは「AI技術を使って開発を加速せざるを得ない」と説明しています。さらに、使用しているAIエディターを公開し、プレイヤーが自由にコンテンツを創作できるUGC(ユーザー生成コンテンツ)要素を取り入れることで、共同で開発プロセスを加速させる方針です。過去4年間の開発で残された問題を解決し、徹底的な技術再構築とビジュアルアップデートを進めるとしており、その挑戦的なアプローチに期待が高まります。
miHoYoの新オフィスとKuro Gameの新作情報
『原神』などで知られるmiHoYo(米哈遊)が、上海市徐匯区の北楊AIイノベーションタウンに新しいオフィスビルに入居したと報じられました。これまで5,000人以上の従業員が複数のオフィスに分散していたmiHoYoにとって、新オフィスへの集約は開発効率の向上に寄与すると期待されています。このAIイノベーションタウンは2027年完成予定で、miHoYoの技術革新への注力姿勢がうかがえます。
一方、『パニシング:グレイレイヴン』の開発元であるKuro Game(庫洛ゲーム)は、求人情報を通じて開発中の新作二次元SFタイトルを示唆しました。求人情報には「軽SFと現代の世界観」「二次元のアートスタイル」といった記載があり、3D経験者が優遇されることから、新たな二次元SF系3D作品である可能性が浮上しています。同社は他にも、Unreal Engine 5開発のオンライン大マップゲーム『NAMI』や、リアル系SFオープンワールドアクションゲーム『SUN』といった複数のプロジェクトを進めており、その得意分野でのさらなる拡大が注目されます。
業界の厳しい現実:相次ぐサービス終了とXboxのリストラ
期待作からIPゲームまで、複数のタイトルがサービス停止
中国ゲーム業界では、新しい動きがある一方で、厳しい現実も突きつけられています。明昼科技が開発し、Tencentが出資していた二次元箱庭ARPGゲーム『黒色信標』は、2025年4月の正式サービス開始からわずか1年3ヶ月でサービス終了を発表しました。当初はiOS無料ランキングで1位を獲得するなど好調でしたが、サーバーダウン、開発チームの移転、新キャラクター音声の欠落といった問題が相次ぎ、売上と評価が低迷しました。最終的に2026年1月にはTencentが明昼科技の株主から撤退し、サービスの終了に至ったとのことです。
また、人気IP「少女前線」の関連ゲーム『Girls’ Frontline: Fire Control』や、同じく二次元ゲームの『新月同行』もサービス終了が発表され、競争の激しさを物語っています。
Xboxの大規模リストラ
中国のニュースソースでも、Xboxが大規模な人員削減を発表したことが報じられました。具体的な規模は不明ですが、これはグローバルな動きであり、ゲーム業界全体が景気変動や市場の変化に直面していることを示唆しています。
まとめ
今回のニュースは、中国ゲーム業界が成長と挑戦の双方を経験していることを明確に示しています。北京経開区の積極的な産業育成策は、中国がゲーム・eスポーツ分野で世界的なリーダーシップを目指す姿勢を示しています。しかし、その一方で、厳しい市場競争の中でサービスを終了するタイトルが相次ぎ、グローバル企業も人員削減に踏み切るなど、業界全体が大きな転換期を迎えていることが浮き彫りになりました。
特に元NetEase幹部の4399への移籍は、新たな戦略的動きとして注目されます。日本のゲーム企業やファンにとっても、中国市場の動向は無視できないものとなるでしょう。AI技術の活用やUGCの推進といった開発トレンドは、今後のゲーム業界全体の方向性を示唆しているのかもしれません。
元記事: chuapp
Photo by Yan Krukau on Pexels












