「あのビジネスはもう稼げない」「今から参入しても手遅れだ」――。そんな言葉を耳にするたびに、本当にそうなのかと疑問に感じたことはありませんか?中国のテックメディア「36氪」で村長氏が提唱する、古く見えても実はまだまだチャンスがあるビジネスを見極めるための6つの視点は、まさにその問いへの答えとなるでしょう。本記事では、彼が語る具体的な判断基準を、日本の読者にも分かりやすく再構成してお届けします。市場規模からプラットフォームの活気、さらには運営者の情熱まで、多角的な視点から「真のオワコン」ではないビジネスを見抜くヒントを探ります。
「もう遅い」は本当か?ビジネス参入の判断基準
「あのビジネスはもう稼げない」「今から参入しても手遅れだ」――。あらゆる業界で耳にするこの言葉は、果たして真実なのでしょうか?中国の有名テック系メディア「36氪」で、デジタルビジネスの専門家である「村長」氏が、多くの人が「手遅れ」だと感じる古いビジネスモデルやプラットフォームに、まだ参入する価値があるのかどうかを判断するための重要な視点を提唱しています。
市場規模と競争相手を見極める
まず注目すべきは、その業界に「巨頭」と呼ばれる大企業が複数存在するかどうかです。例えば自動車産業は、BMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、トヨタといった世界的企業がひしめき合っています。それでも、中国では「蔚小理米(NIO、Xpeng、Li Auto、Xiaomi)」といった新興EVメーカーが次々と参入し、成長を遂げています。
Eコマースも同様です。中国では、タオバオ(淘宝)、JD.com(京東)、ピンドゥオドゥオ(拼多多)といった巨大ECに加え、動画投稿SNSのTikTok(抖音)、ライフスタイル共有アプリのRED(小紅書)、WeChatのショート動画機能「動画号(视频号)」など、新たなプラットフォームが次々に台頭し、それぞれに多くのユーザーと売上を抱えています。業界に巨大プレイヤーがいるということは、それだけ市場規模が大きく、いまだに大きな「儲け」がある証拠なのです。
次に、その業界のトッププレイヤーが依然として収益を上げているかを確認します。もし業界のリーダーですら苦戦しているのであれば、新規参入者が成功するのはさらに困難でしょう。しかし、中国のWeChatコミュニティで共同購入を支援する「群接龙(QunJieLong)」や「快团团(KuaiTuanTuan)」のようなニッチなツールで、年間数億円を売り上げる個人がいるのをご存知でしょうか。また、ECショップ開設ツールの「微店(WeiDian)」でも、上位50位の店舗は年間数億円を稼いでいます。TikTok(抖音)では、ライブコマースで知られる「東方甄選(Dongfang Zhenxuan)」や「三只羊(SanZhiYang)」、羅永浩の「交个朋友(Jiaoge Pengyou)」といったアカウントが年間数百億円規模の売上を上げています。これらの事例は、トッププレイヤーの規模を見れば、その業界がどれだけ儲かっているかが一目瞭然であることを示しています。
新規参入とプラットフォームの動向を追う
「もう遅い」と言われていても、実際に新しいプレイヤーが継続的に参入し、成功しているかも重要な指標です。例えば、タオバオは20年以上の歴史がありますが、今でも多くの新規出店者がいます。また、TikTok(抖音)や快手(Kuaishou)が台頭し、「もうWeChat公式アカウント(公众号)は終わった」と言われながらも、新規参入者がフォロワー数百万規模のアカウントを立ち上げ、多くのアクセス数を獲得している例は少なくありません。筆者の知人の中には、2024年に入ってからWeChat公式アカウントで100以上の関連アカウントを運営し、収益を上げ続けている人もいます。実店舗ビジネスに関しても、撤退が相次ぐ中でも、常に新しいお店がオープンし、多くの街角で空き店舗が1ヶ月以上放置されることは稀です。
さらに、プラットフォームが公開している関連データレポートをチェックすることも有効です。タオバオ、JD.com、ピンドゥオドゥオ、TikTok(抖音)、WeChat(腾讯)といった主要プラットフォームは、四半期ごとや年次で様々なデータレポートを発表しています。多少の疑問符がつくデータがあったとしても、その収益報告書自体を見れば、日次アクティブユーザー(DAU)、月次アクティブユーザー(MAU)、流通取引総額(GMV)などが依然として成長しているかどうかが分かります。特に、中古品取引アプリの「闲鱼(Xianyu)」や「转转(Zhuanzhuan)」、WeChatのショート動画機能「動画号(视频号)」など、一部のプロダクトが急速に成長している場合もあります。たとえタオバオのような超巨大プラットフォームで成長率が鈍化したとしても、その絶対的なデータは業界の9割以上のプラットフォームを合わせたよりも大きいかもしれません。そうであれば、まだまだ参入する価値はあるのです。
業界の活気と運営者の情熱を測る
ビジネス参入の可否を判断する上で、その業界の「活気」や「情熱」も重要な要素となります。
活発なコミュニティと情報発信の重要性
その業界が活況を呈しているかどうかは、関連する研修(トレーニング)や博覧会が盛んに行われているかどうかで判断できます。例えば、TikTok(抖音)や動画号(视频号)関連の研修は今やどこでも見かけます。IP構築、ライブコマース、ネットショップ運営、情報販売など、様々なテーマの講座が開催されています。タオバオも、10年前には「もう稼げない」と言われながら、20年経った今でも開店方法、画像制作、商品選定、広告運用といった多岐にわたる研修が行われています。飲食、営業、財務、資格試験、スピーチなど、普遍的な分野での研修が継続的に行われているのは、それだけその業界に利益が存在する証拠です。また、その業界に特化したウェブサイト、SNSアカウント、展示会などが継続して存在しているかも重要な指標となります。
運営トップの姿勢とプロダクトの更新頻度
最後に、そのプラットフォームを運営する企業のトップや管理者が、現在も活発に情報発信をしているかどうかに注目しましょう。もし経営者自身が公の場に姿を見せなくなり、発信も途絶えているようでは、そのプラットフォームが持続的に成長することは難しいでしょう。また、新しいプロダクトやサービス、キャンペーンが継続的にリリースされているか、そのアプリや公式サイト、SNSアカウントなどが頻繁に更新されているかも重要です。長期間更新されていないプロダクトは、その多くが成長を停滞させているか、すでに事業が縮小している可能性が高いです。
まとめ
「もう古い」「もう遅い」と一言で片付けられがちなビジネスやプラットフォームも、上記の多角的な視点から冷静に評価すれば、実はまだまだ大きな可能性を秘めていることがわかります。特に中国の市場は変化が激しい分、こうした「見極める力」が非常に重要です。
しかし、最も重要なのは、あなた自身が「なぜそのプラットフォームで稼げるのか」を明確にできるかどうかです。古いプラットフォームには「レッドオーシャン」化した側面もあり、かつてのような簡単な「ボーナス期間」はもはや存在しません。競争が激しい中で成功するには、あなたの「硬实力(硬い実力)」、つまり独自のスキルや知識、リソースが不可欠です。もしこれらの能力や資源が不足していると、たとえ市場全体が魅力的であっても、結局は収益に繋がらず、かえって損失を出してしまう可能性もあります。日本のビジネス環境においても、この「見極める力」と「自己の実力」の重要性は同様に当てはまります。表面的な情報に惑わされず、本質を見抜く目を養い、自身の強みを活かせる市場を選んでいくことが、これからの時代を生き抜く鍵となるでしょう。
元記事: 36氪_让一部分人先看到未来
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