2025年の科隆ゲーム展(gamescom)は、中国ゲーム業界にとって記念碑的なイベントとなりました。史上最多となる50社以上の中国企業が出展し、もはや「新手村」(初心者エリア)を抜け出し、世界的なプレイヤーとして堂々と存在感を示しています。特に開幕の夜には、Tencent Games、ゲーム科学、燭龍、鷹角など、主要企業から期待の新作が続々と発表され、国際的な注目を浴びました。かつての「控えめ」なイメージを払拭し、自信と創造性にあふれる中国ゲームの新たな時代が幕を開けています。
世界が注目!2025年科隆ゲーム展を席巻した中国勢
今年の科隆ゲーム展は、中国ゲーム業界の大きな転換点を示すものとなりました。出展企業数は50社を超え、これは過去最高記録です。また、開幕の夜にはTencent Games、ゲーム科学、燭龍、鷹角、サロス、Perfect Worldといった中国の主要ゲーム企業6社が、合計8タイトルもの新作を発表しました。中でも、オープニングを飾った燭龍の『古剣(Gu Jian)』や、大トリを飾ったゲーム科学の『黒神話:鍾馗(Black Myth: Zhenqi)』など、8タイトル中6タイトルがTencent Gamesと直接的または間接的に関係していることからも、中国大手企業の存在感の大きさが伺えます。
自信と熟練、新たなステージへ
筆者が科隆ゲーム展で感じたのは、「リラックス」という意外な感覚でした。会場は世界各国のプレイヤーで溢れていましたが、そこにいるのは見慣れた中国ゲームのロゴやブース。以前は「真面目で謙虚、しかしどこか緊張感があった」と評されることもあった中国企業の展示ですが、今年は「非常に活発で、周囲に溶け込み、落ち着いている」といった印象を受けます。まるで、国際舞台でのプレゼンテーションに完全に慣れたかのような熟練の振る舞いです。
その影響力は、来場者の持ち物からも見て取れます。会場で配られる記念品バッグの多くが中国ゲーム企業のブース由来のものであり、特にゲーム科学の書道風デザインのバッグは人気を集め、同社のブースは会場でも有数の人気撮影スポットとなりました。Tencent GamesやmiHoYo(ミホヨ)の存在感はもちろん、ソウルライクアクションRPGとして注目を集める『影の刃零(Project Mugen)』は500平方メートルの広大な試遊エリアに60台以上の機器を設置し、試遊を求める海外プレイヤーの長蛇の列ができていました。また、Yostarが手がける『アークナイツ:エンドフィールド(Arknights: Endfield)』のブースも、50メートルもの巨大ポスターが通路を彩り、担当者からは「東京ゲームショウではもっと大規模にする」という意気込みも聞かれました。
期待の新作が続々!文化融合で魅せる中国ゲーム
今回のゲーム展では、新作タイトルの内容にも大きな変化が見られました。クローズドデモンストレーションが行われたTencent Gamesの『クロスファイア:レインボー(Project Spectrum)』や、『王者栄耀:ワールド(Honor of Kings: World)』は、その洗練されたクオリティと大胆なゲームデザインで海外の業界関係者の注目を集めていました。
特に『王者栄耀:ワールド』は、9号館のメインホール中央に東洋的な赤い楓の木を配したブースが印象的でした。楓の木には、各国のプレイヤーが書いた願いや祝福のメッセージが吊るされ、中には「ボスを一発で倒せますように!」とドイツ語で書かれたものも。本作の開発責任者であるbighuang氏は、海外プレイヤーからの非常に肯定的なフィードバックに言及しつつも、「より現実的な意見も聞きたい」と語るほどです。
『王者栄耀:ワールド』に垣間見る開発者の探求心
『王者栄耀:ワールド』の魅力は、その東洋的なファンタジー要素が非常に生き生きと、そしてモダンに表現されている点にあります。bighuang氏は、ゲームに登場するボス「雲狌(Yunsheng)」の戦闘デザインに、中国の地方劇である川劇の要素を取り入れたエピソードを紹介してくれました。彼らは実際に川劇の教師を招き、変面(仮面を一瞬で変える演劇手法)などの特色を残しつつ、3人の川劇の専門家が書き下ろした歌詞と高音の歌唱を組み合わせ、戦闘音楽を再録音しました。
「この体験は非常に新しいものにしたい。川劇や四川省に馴染みのあるプレイヤーは、より深い共鳴を感じるかもしれませんが、同時に文化の壁を越えて、より多くのユーザーを魅了するゲームを目指しています」とbighuang氏は語ります。このように、中国ゲームは今、単に高品質なコンテンツを作るだけでなく、自国の文化を深く掘り下げ、それを世界に向けて穏やかかつ力強く発信する姿勢を見せています。
まとめ:加速する中国ゲームの進化と日本の展望
『黒神話』シリーズや『影の刃零』、さらには2023年の科隆ゲーム展で初公開され、発表からわずか10ヶ月でデイリーアクティブユーザー数(DAU)2000万人を突破した『デルタフォース:ホークスダウン(Delta Force: Hawk Ops)』など、今回の科隆ゲーム展で披露された作品群は、中国ゲーム業界が着実に、しかし劇的に進化を遂げていることを雄弁に物語っています。かつての「緊張感」は消え去り、今や中国のデベロッパーたちは、国際的なプレイヤーたちと肩を並べ、友好的かつ自信に満ちた態度で自らの作品をプレゼンテーションしています。
この中国ゲームの躍進は、日本のゲーム業界にとっても見過ごせない動きとなるでしょう。世界市場における中国ゲームの影響力は今後ますます拡大し、新たなパートナーシップや競争の形が生まれることが予想されます。文化の壁を越え、高品質かつ独自性あふれるコンテンツを生み出す中国のクリエイターたちの挑戦は、ゲーム業界全体の未来を形作る重要な要素となるはずです。
元記事: chuapp
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