中国で今、若者を中心に爆発的な人気を集めている「情感本(感情型マーダーミステリー)」。推理や謎解きを主軸とする従来のマーダーミステリーとは異なり、物語への没入と登場人物の感情体験に重きを置くこのジャンルは、日本のプレイヤーにとってはまだ馴染みが薄いかもしれません。今回、中国の有名ゲームメディア「触乐(Chuapp)」編集部のメンバーが、そんな情感本に初めて挑戦。推理好きが集まった彼らを待ち受けていたのは、戸惑いと、そして新たなゲーム体験の奥深さでした。
「情感本」の扉を開く:従来のマーダーミステリーとの違い
「触乐」編集部の面々が今回体験したのは、中国の劇本殺(マーダーミステリー)市場で半数近くを占めると言われる「情感本」です。これまでTRPGや推理型の劇本殺を主に遊んできた彼らにとって、情感本は未知の世界。予約からプレイまで、内部の専門用語や料金体系、具体的な進行ロジックなど、すべてが手探り状態でした。
「真相解明」から「感情没入」への壁
約8~9時間に及ぶプレイ中、編集部員たちは度々「真相を突き止める」という、従来のマーダーミステリーの思考回路に陥ってしまったそうです。彼らのこれまでの経験では、劇中での「思い出」の共有後は、情報整理や嘘の確認に時間を費やすのが常識。しかし、情感本で本当に重要だったのは、登場人物たちの複雑に絡み合う愛憎劇を一つ一つ解き明かし、感情を追体験することでした。
「論理に縛られすぎないこと」が情感本を深く楽しむための前提であると分かっていながらも、どうしてもストーリーの辻褄合わせに意識が向いてしまう。この「電波のズレ」は、プレイヤーとDM(ゲームマスター)の双方に、一種の疲労感さえもたらしたと言います。物語が完全に展開しきるまで、登場人物の視点だけでは全体像が見えにくく、一度のプレイでは理解しきれない部分もあるため、「多刷り(リピートプレイ)」するプレイヤーも少なくないようです。
DMの役割とプレイヤーの「演技」が体験を深める
物語が転換点を迎え、筆者自身の没入感が高まったのは、ストーリー自体が面白くなったことに加え、DMの演出と小規模ながらも舞台のような演劇要素が効果的だったからだと語られています。劇本殺の「相乗り(知らない人とグループを組むこと)」が複雑で、結局編集部でグループを組んで参加したというエピソードは、このジャンルの奥深さを示唆しています。
自由な演じ方が体験を深める鍵
筆者は、数年前に流行したインタラクティブシアターとの類似点も感じたそうです。観客が物語の空間を移動し、俳優と共に体験を進めるインタラクティブシアターに比べ、情感本はDMの臨機応変な対応能力がゲーム体験に大きく影響し、より高いインタラクティブ性が特徴です。
特に重要なのは、プレイヤー自身の「演技」です。慣れない初心者にとって、セリフを感情を込めて読むだけでも一苦労ですが、上級者の中には大量の小道具を用意し、他のプレイヤーと「演じ合う」ことで、物語を自分たちで紡ぎ出していく人もいると言います。今回の体験では、編集部員たちは「役者」として舞台に立つ準備が十分ではなかったことを自覚しており、情感本の大きな魅力の一つが、この自由な演技にあると結論付けています。
まとめ:ロジックを手放し、感情に身を委ねる
初めての情感本体験は、戸惑うことも多かったものの、筆者が想像していたほど神秘的なものではなかったようです。最終的に彼らが導き出した結論は、「適度にロジックを手放し、登場人物の動機を深読みせず受け入れ、ひたすら感情に集中すること」。これが、情感本をより深く楽しむための秘訣だというのです。
つまり、脳のモードを切り替える必要がある――。この「情感本」の体験は、単なるゲームプレイを超え、感情と共鳴する新たなエンターテイメントの可能性を日本にも示唆しているのではないでしょうか。日本でもマーダーミステリーの人気が高まる中、感情にフォーカスした新しい体験が、今後のゲーム市場にどのような影響を与えるのか、注目が集まります。
元記事: chuapp
Photo by Markus Winkler on Pexels












