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戦火を生き抜くウクライナ開発者『STONKS-9800』の奇跡

Ukrainian game developer Retro stock market game - 戦火を生き抜くウクライナ開発者『STONKS-9800』の奇跡

ウクライナの独立ゲーム開発者TERNOX氏が、戦火の中、1980年代日本のバブル経済を舞台にしたシミュレーションゲーム『STONKS-9800』を開発し、世界中で10万本以上を売り上げ、Steamで95%もの高評価を獲得しています。停電と空襲の合間に生まれたこの異色のヒット作は、なぜ日本の泡沫時代を選び、どのようにして困難な状況を乗り越えたのでしょうか。今回は、その開発秘話と、ゲームが持つ希望の力に迫ります。

戦火の中で生まれた異色のヒット作

2026年4月2日、ウクライナの独立ゲーム開発者TERNOX氏へのインタビューが公開されました。彼は今、ウクライナ南部、頻繁に空襲を受ける港湾都市オデッサに住んでいます。TERNOX氏、本名Ruslanは、ロシア軍に占領されたザポリージャ州の人口2万人の小さな町で生まれ育ちました。両親は今も前線からほど近い故郷に残っています。

そんな過酷な状況下で彼が開発したのは、1980年代の日本を舞台にしたテキストベースのビジネスシミュレーションゲーム『STONKS-9800』(日本語名:東京股神STONKS-9800)です。このゲームはこれまでに10万本以上を販売し、Steamでは驚異の95%好評価を得ています。電気やインターネットが不安定な中、彼はどのようにしてこのゲームを世に送り出したのでしょうか。

幼少期の原体験とゲーム開発への道

TERNOX氏の少年時代は、90年代のウクライナで、盗版のファミコン(日本では任天堂のファミリーコンピュータとして知られるゲーム機)と共にありました。当時はコピー品とは知らず、多くのゲームが日本語でしたが、アクションゲームは言葉の壁を越えて楽しめたといいます。この頃の「自然の中で虫を捕まえたり、友達と遊んだりする」という平和な記憶は、彼のゲーム制作にも影響を与えています。『STONKS-9800』の休暇シーンに豪華なリゾートではなく、故郷の川辺の休息が描かれているのはそのためかもしれません。

彼は経済学の学位を持ち、公務員として国家土地登記管理の仕事をしていました。しかし、この仕事は彼にとって満足のいくものではなく、常にクリエイティブな活動に時間を費やしていました。『魔獣争覇3』や『Far Cry』のマップ制作に熱中し、レベルエディターがあればどこへでも飛びつく少年でした。転機が訪れたのは、彼の最初のゲーム『Taimumari』がSteam Greenlight(当時のSteamでゲームを配信するための投票システム)を通過した時です。彼はすぐに公務員を辞め、フルタイムのインディーゲーム開発者となりました。『Taimumari』の収益が公務員の給料を上回ったことが、彼の決断が正しかったことを証明しました。

『STONKS-9800』誕生秘話と日本への情熱

『STONKS-9800』の原型は、2020年のGame Jam(短期間でゲームを制作するイベント)で生まれました。テーマは「看着它成长(成長を見る)」。TERNOX氏は「収入の成長」というアイデアに惹かれ、当初はPC-98(NECが1982年に発売した日本のパーソナルコンピューターシリーズ)でHゲームを作る80年代日本のインディー開発者シミュレーターを構想していたそうです。しかし最終的には、株取引とランダムイベントが絡むゲームへと舵を切りました。

ソ連時代のゲーム『Kommersant』からの影響

なぜ、ウクライナ出身のTERNOX氏が、一度も訪れたことのない1980年代の日本、それもバブル経済というテーマを選んだのでしょうか。実は、そのルーツはソ連末期にキエフのRada Ltdが開発した経済戦略DOSゲーム『Kommersant』にあります。彼はこの幼少期にプレイしたゲームの現代版をずっと作りたいと考えていました。

さらに、TERNOX氏はビデオゲームの歴史、特にPC-98時代の日本のレトロゲームに深く興味を持っていました。任天堂とセガ、PlayStationといったコンソールゲームの歴史はよく語られますが、PCゲーム、特にPC-98の歴史は西方ではほとんど知られていない未開拓の分野だったのです。日本のPC-98ゲームの雰囲気をゲームに取り入れたいという思いと、日本のバブル経済がGame Jamのテーマ「成長」に完璧に合致したことが、『STONKS-9800』の方向性を決定づけました。

『Kommersant』は石油や土地の売買、銀行預金(すぐ潰れる)、不動産、車、競馬、スロットといった要素を持つゲームでした。TERNOX氏はこの核となるフレームワークを移植し、さらに現代的な要素と豊富なコンテンツを加えて『STONKS-9800』を作り上げました。彼は「キエフのウクライナ人が作ったオリジナルのアイデアが、世代を超えて自分を通して世界に伝わった」と語っています。

2022年2月24日、そして現在

2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった日、TERNOX氏はオデッサで「衝撃を受け、一週間ずっとニュースをチェックしていた」といいます。海辺の軍事要地であるオデッサは、常にロシア艦隊による攻撃の脅威に晒されていました。マリウポリのような悲劇が起こるのではないかという真剣な恐怖を抱きながらも、彼は開発を続けました。停電や空襲警報が鳴り響く中、彼はわずかな時間を見つけてはプログラミングに没頭したのです。

まとめ:ゲームが繋ぐ希望

戦火の中、故郷を思い、日本のバブル経済をシミュレートするゲームを作る。TERNOX氏の物語は、創造の力がどんな困難をも乗り越える可能性を秘めていることを示しています。彼のゲームが世界中のプレイヤーに愛されているのは、その背景にある開発者の情熱と、普遍的な「成長」というテーマが響き合っているからでしょう。これからもTERNOX氏が安全に、そして自由にゲーム開発を続けられることを心から願っています。

元記事: chuapp

Photo by Mahmoud Yahyaoui on Pexels

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