サムスン電子の半導体ファウンドリ(受託製造)部門が、現在、活況を呈しています。AIチップ需要の爆発的な増加を背景に、4nmといった最先端プロセスは来年分まで予約で埋まり、受注残高は実に約50万億韓国ウォン(日本円で約5兆7000億円)にも達していると報じられました。これまでスマートフォン向けプロセッサが主要な需要源でしたが、現在はAIアクセラレーターや高性能コンピューティング(HPC)チップへと大きくシフト。TSMC一強の様相を呈していた先端半導体製造市場において、サムスンが存在感を強めています。
AIチップ特需で生産能力が限界に
サムスン電子ファウンドリ部門は、現在、既存顧客からの注文が殺到しており、一部の製造プロセスで供給割り当てメカニズム(アロケーション)を導入するほどです。特に、最先端の4nmプロセスはすでに今年の生産能力がほぼ満杯となり、さらに来年分の生産枠も予約で埋まっている状態です。また、一部の8nmプロセスも生産能力が逼迫しています。
この需要の高まりは、主に人工知能(AI)チップの需要拡大に起因しています。これまでのスマートフォン向けアプリケーションプロセッサが中心だった需要は、現在ではAIアクセラレーターチップ、専用集積回路(ASIC)、そして高性能コンピューティング(HPC)チップへと全面的にシフトしています。世界中の大手テクノロジー企業からの注文が相次いでおり、この影響で先端プロセスの製造価格も約15%から20%上昇しているとのことです。
大手顧客がサムスンに殺到する背景
サムスンは現在、具体的な大手顧客との協業を拡大しています。例えば、テスラの自動運転チップや、AIスタートアップのGroq向け推論チップの製造を担当しています。さらに、NVIDIAやGoogleといった業界大手との協力関係も強化していると報じられています。
特に注目すべきは、Metaとの連携です。Metaは次世代ASICチップをサムスンと共同で設計・製造しており、その価値は10万億韓国ウォン(約1兆1400億円)を超える見込みです。また、アメリカのAI企業Anthropicは、サムスンの次世代2nmプロセスを活用したチップ開発を検討しているとされており、将来的な協力の可能性も示唆されています。
このような状況の背景には、TSMCの先端プロセスにおける供給不足が挙げられます。サプライチェーンの多様化を求める顧客が、新たな選択肢としてサムスンを評価し直しているのです。過去に歩留まり問題からTSMCに切り替えた顧客が、現在サムスンを再検討したり、リスク分散のために第二のサプライヤーとして活用したりする動きが見られます。ファウンドリの工場運営という観点では、少数の大型プロジェクトに集中して生産する方が、多品種少量生産よりも効率が高いとされています。
まとめ:AI時代の恩恵を享受するサムスンと日本の役割
今回のAIチップ特需は、サムスン電子ファウンドリ部門の市場における地位を大きく強化するものです。需要の拡大と稼働率の向上に伴い、同部門は今年下半期から来年上半期にかけて黒字化を達成する見込みとされています。
この動きは、日本の半導体産業にも影響を与える可能性があります。AI半導体の開発を進める日本企業にとっては、TSMCだけでなくサムスンという新たな有力な製造パートナーの選択肢が広がります。また、サムスンの積極的な設備投資は、日本の半導体製造装置や材料メーカーにとって追い風となるでしょう。先端半導体製造における国際的な競争が激化する中で、日本がどのように自国の技術力を高め、グローバルサプライチェーンの中で重要な役割を果たすかが問われています。
元記事: pconline












