2020年代、世界のテクノロジー人材の地図が大きく塗り替えられようとしています。発端は、中国の国慶節期間中に筆者が深センの地下鉄で出会った一人のインド人ITエンジニア。彼は香港で働き、かつてはオーストラリアや米国でもキャリアを積んだグローバルな人材です。彼との出会いは、中国国内で急増するインド人たちの存在を改めて意識させるものでした。SNS上でも「私の街にインド人が増えた」という声が聞かれるなど、インド人材のグローバルな移動が顕著になっています。
「米国ドリーム」からのシフト:インド人材が向かう先
これまで多くのインド人技術者が目指してきた「米国ドリーム」に、変化の兆しが見えています。その背景には、米国とインドの関係における亀裂が関係しています。ドナルド・トランプ政権は、ロシアからの原油輸入を理由にインド製品に追加関税(25%から合計50%へ)を課し、さらにH-1Bビザ申請企業への費用を10万ドルにまで引き上げました。米国が毎年発給するH-1Bビザの実に70%以上をインド人が取得していたことを考えると、この政策は彼らにとって大きな打撃です。
この変化により、かつて米国を目指していた無数のインド人たちが、その目的地を他の国へとシフトせざるを得なくなっています。
中国が熱視線!インドの優秀な「潤人」たち
米国がインド人材への門戸を狭める一方で、中国は彼らを引き込もうとする動きを活発化させています。2020年以降停止していた中国とインド間の直行便は今年4月に再開に合意し、ビザの簡素化も進められています。中国の在インド領事館は、今年に入って既に8.5万件以上の対中ビザを発給しているとのことです。
注目すべきは、中国政府が10月1日から施行した新たな「K字ビザ」政策です。インドのメディアでは、これを「米国のH-1Bビザに対抗するための中国K字ビザ」と報じ、「トランプH-1Bビザ戦略への中国の回答」として大きな話題となりました。かつて世界中へと広がっていたインドの「潤人(Run-ren、移動する人々、ここでは優秀な人材を指す)」たちが、今や中国をも主要な目的地の一つとして見据えているのです。
日本も注目!「次の中国」インドの巨大な潜在力
インド人材のグローバルシフトは、日本にとっても無関係ではありません。記事によれば、日本の石破茂首相(原文ママ)は、今後5年以内にインドとの間で50万人の人的交流を実現する目標を掲げており、そのうち5万人は理系のバックグラウンドを持つ専門技術者とされています。日本もまた、インドの優秀な人材を積極的に呼び込もうとしているのです。
人口14.6億人、GDP成長率6%超という経済規模を持つインドは、長らく「次の中国」としてその潜在力が期待されてきました。「ニュー・エコノミック・タイムズ」は、「インドの経済的・政治的実力は21世紀も成長を続け、19世紀の米国のように発展するだろう。21世紀半ばには米国を超え、将来的には中国をも凌駕する可能性もある。21世紀は米国、中国、インドの三極が競い合う時代になるだろう」と指摘しています。まだ初期段階にあるとはいえ、インドが秘める潜在力は計り知れません。
まとめ:変わりゆく世界のパワーバランスと日本の課題
インド人材のグローバルな流動性の高まりは、単なる経済現象に留まらず、米中印の国際関係の変化、さらには世界のパワーバランスの再構築と深く結びついています。米国が門戸を閉ざす一方で、中国が積極的にインド人材を誘致し、日本もそれに追随する動きを見せています。この大きな潮流の中で、日本の企業や社会がどのように対応し、新たな機会を捉え、あるいは新たな課題に直面していくのか、その動向から目が離せません。
元記事: pedaily
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