AI技術の進化が目覚ましい昨今、その恩恵だけでなく、倫理的・法的な課題も浮上しています。特に、人の声を模倣するAI音声合成技術は、エンターテイメント業界に大きな影響を与えつつあります。最近、世界的にも人気の高いゲームタイトル『遊戯王』と『トゥームレイダー』において、声優の声を無断でAIに利用したとされる問題が発覚し、関係者やプレイヤーの間で大きな波紋を呼んでいます。「私の声がAIに盗まれた!」という悲痛な叫びと共に、この問題の深掘りを通して、AI時代の著作権と倫理について考えていきましょう。
AIとゲーム業界の新たな課題:無断AI配音問題
ここ数年でAI技術は急速に発展し、新たなモデルや技術が次々と生まれています。その一方で、AIがもたらす著作権侵害や雇用への影響といった問題も、世界中で大きな注目を集めています。例えば、米国では昨年、俳優組合がゲーム会社によるAI配音への反対運動としてストライキを実施。声優の許諾なしにAI配音を乱用することに警鐘を鳴らしました。
そして今、人気ゲームの分野で二つの大きな「地雷」が踏み抜かれました。
コナミ「遊戯王」:人気声優・山村響さんの声が無断学習に
一つ目の事例は、コナミが手がける国民的カードゲーム『遊戯王』の解説動画です。コナミはAIによる実況解説プロジェクトの一環として、「遊戯王世界選手権(WCS2025)」決勝戦の日本語解説にAI生成音声を使用しました。
しかし、この日本語解説用のAIモデルが、人気声優で歌手の山村響さんの声を無断で学習データとして使用していたことが判明したのです。山村さんご本人がSNSで言及し、後に所属事務所を通じて調査と交渉が行われました。
コナミは9月8日に声明を発表し、該当動画を削除。声明によると、関連動画には「Anneli」というAIモデルが使用されており、これはオープンソースの商用音声合成システム「Aivis Project」の一部でした。コナミは「すべてのクリエイターを尊重している」とし、現在事実関係の調査を進めているとのことです。なお、『遊戯王:マスターデュエル』のゲーム内ではAI技術は一切使用されていないと明言しています。
この一件を受け、9月8日時点でAnneliを含むAivis Projectモデルの配布サイトは一時的に閉鎖され、開発元も「事実関係を調査中」と発表しています。
「トゥームレイダー」:声優の声がAIに模倣され、プレイヤーも激怒
二つ目の事例は、さらに深刻な事態へと発展しています。フランスの声優、フランソワーズ・カドル氏が、『トゥームレイダー4~6』のリマスター版開発元Aspyr社を提訴しました。彼女は、声優への通知なし、さらにファンへのAI配音の告知もないまま、AIが自身の声を模倣して使用されたと訴えています。カドル氏はアンジェリーナ・ジョリーやサンドラ・ブロックといった有名女優の吹き替えも担当したベテランです。
訴訟では、Aspyr社が「消費者を欺いた」と主張。プレイヤーからも、自身の声がクローンされた可能性を知り「怒りを感じている」との反応が上がっています。カドル氏は「このゲームで私の声は長年プレイヤーと旅をしてきました。多くのファンにとって、これは裏切りであり、完全な軽視です。彼らは怒っています」と憤りを露わにしました。
プレイヤーコミュニティの反応を見ると、『トゥームレイダー4~6』リマスター版では、フランス語だけでなくスペイン語など複数の言語でAI配音の疑惑が浮上しています。Aspyr社はブラジルの声優レネ・バストス氏からの同様の指摘に対し、「外部の開発パートナーが、弊社の知らぬ間に生成AIを使用し、あなたのオリジナル配音を修正したことが判明しました。このような行為は決して承認しておらず、残念ながら弊社のレビュープロセスで見落とされました」と回答。外注先の無断利用が原因であったことを示唆しています。
AI時代のゲーム開発における責任と展望
中国では昨年4月、「AI音声侵害第一号」とされる裁判が行われ、声優の知らないうちに声がAI訓練に使われたとして、人格権侵害で25万元(約500万円)の賠償が命じられました。
なぜ、コナミや『トゥームレイダー』といった大手ゲーム会社が、このような著作権侵害の罠にはまってしまうのでしょうか。二つの事例を比較すると、問題の根源が外注先や技術パートナーにあることが見て取れます。しかし、ゲームの品質に対する最終的な責任は、コナミやAspyrといったパブリッシャー側にも重くのしかかります。
ゲーム開発においてAIの浸透率が高まるにつれて、法的リスクも増大しています。効率化のためにAIツールを活用する一方で、その裏に潜む法的リスクに対する意識を高めることが、業界全体に求められています。日本でもAI技術の進化と普及は加速しており、同様の問題が起こりうる可能性は十分にあります。クリエイターの権利保護と、技術の健全な発展のためにも、透明性の確保と適切な許諾プロセスが不可欠となるでしょう。
元記事: gamelook
Photo by Los Muertos Crew on Pexels












