AIの急速な進化は、プロセッサの役割に新たな視点をもたらしています。特に、自律的にタスクを完遂する「Agentic AI」の登場により、そのワークフローにおける遅延のなんと90.6%がCPU側のツール処理に起因するという分析が示されました。これは、単にGPUの演算能力だけでは解決できない、CPUが担う「ツール呼び出し」や「論理協調」といったタスクの重要性を浮き彫りにしています。この重要な局面で、中国企業がオープンソースCPUアーキテクチャ「RISC-V」に、x86やARMで実績のある「同時マルチスレッディング(SMT)」能力をもたらし、AI時代のサーバーCPU性能向上に挑戦しています。
AI時代に再び注目されるCPUの役割
Agentic AIがCPUをシステムの中核に引き戻す
AIが生成AIの枠を超え、自律的なタスク実行へと進化するにつれて、CPUの役割が再びシステムの中心に戻ってきました。中国の「達摩院(DAMO Academy)」首席科学者である梅建斌(メイ・ジエンビン)氏によると、スマートエージェントのワークフローにおけるボトルネックの大部分、具体的には90.6%が、CPU側で行われるツール処理の段階で発生していると指摘されています。これは、AIが単にコンテンツを生成するだけでなく、より複雑なタスクを計画し、実行し、連携するようになるにつれて、モデル、ツール、メモリ間の連携を司るCPUが「総司令官」としての機能を果たすことを意味します。
GPUだけでは解決できないボトルネック
これまでAIの高速化はGPUの演算能力に大きく依存してきましたが、Agentic AIが台頭する中で、GPUの純粋な計算能力だけでは解決できない新たな課題が浮上しています。それが「ツール呼び出しと論理協調」のボトルネックです。AIが様々なツールやサービスを連携させ、複雑なロジックに基づいて動作する場合、CPUがこれらの処理を効率的に調整し、管理する能力が不可欠となります。この部分の効率が悪ければ、いくらGPUが高速でも全体のパフォーマンスは頭打ちになってしまいます。
RISC-Vで実現する「空間マルチスレッディング」
x86/ARMのSMTをRISC-Vへ
データセンターやAI推論チップの分野では、x86やARMアーキテクチャが主流であり、それらのサーバーCPUにおいて、SMT(Simultaneous Multi-Threading:同時マルチスレッディング)は標準的な技術として広く採用されています。SMTは、一つのCPUコアが複数のスレッドを同時に実行することで、CPUの利用効率を高め、全体的な処理能力を向上させる技術です。しかし、オープンソースのRISC-Vアーキテクチャでは、このSMT能力を自律的に制御できる形で実現することが課題でした。
芯泰(Xintia)の独自技術:静的パーティショニング
この課題に対し、中国の半導体企業である芯泰(Xintia)は、RISC-V上で独自の「空間マルチスレッディング」方式を開発しています。彼らのアプローチは、従来のSMTがリソースを動的に競合させるのに対し、リソースを「静的に区分け」する点に特徴があります。これにより、シングルスレッドの性能をほとんど損なうことなく、複数のスレッドを効率的に処理することが可能になります。この技術は、RISC-Vエコシステムにおいて、AIワークロードに求められる高い並列処理能力と効率性を提供する画期的な一歩となるでしょう。
まとめ:RISC-VとAIの未来
今回の芯泰によるRISC-V上での空間マルチスレッディング技術は、AI時代のCPUに求められる能力を、オープンソースアーキテクチャで実現しようとする重要な動きです。これにより、RISC-VはAI、特にAgentic AIのような複雑なワークフローを伴うアプリケーションにおいて、より強力な選択肢となり得ます。将来的には、この技術がRISC-VベースのサーバーCPUやAIチップの普及を加速させ、データセンターからエッジデバイスまで、幅広い分野でのAI活用に貢献することが期待されます。日本の半導体業界やAI開発者にとっても、RISC-Vの動向は今後も注視すべき重要な要素となるでしょう。
元記事: pconline
Photo by Jeremy Waterhouse on Pexels












