中国ゲーム業界がかつてないほどの活況を呈しています。ファーウェイの独自OS「HarmonyOS」にテンセントの『英雄聯盟手游(リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト)』が正式参入し、miHoYoやバイトダンスといった大手企業からも期待の新作が続々とテスト開始。さらにAI技術の進化は、ゲーム開発からユーザー体験まで、業界全体に新たな風を吹き込んでいます。本記事では、プラットフォームの多様化、ヒットタイトルの秘訣、そしてAIが織りなす次世代エンターテインメントの可能性まで、中国ゲーム市場の最新トレンドを深掘りしてお届けします。
中国ゲーム市場の最前線:プラットフォームと新作タイトルが熱い!
『英雄聯盟手游』がHarmonyOSに進出!
9月19日、テンセントの人気モバイルMOBA『英雄聯盟手游(リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト)』がファーウェイの独自OS「HarmonyOS 5」システムに正式対応しました。今年ChinaJoyで初めて発表され、8月には数万人規模の先行体験が行われたこの鴻蒙版は、AndroidやiOSユーザーとのクロスプラットフォームマッチングに対応。さらに、Androidアカウントのゲームデータ(英雄、スキン、戦績など)をシームレスに引き継げるため、既存プレイヤーも安心して移行できます。
ファーウェイの発表によると、9月中には『金鏟鏟之戦(チームファイト タクティクス)』や『元夢之星』など、複数の人気タイトルがHarmonyOS 5に登場。現在、鴻蒙プラットフォームはすでに6500以上のゲームと2.6億人のプレイヤーを擁しており、テンセント系の大手ゲームが相次いで参入することで、今後中小メーカーの参入にも良い影響を与えることが期待されます。
miHoYoとバイトダンスの注目新作がベールを脱ぐ
中国のゲーム大手からは、期待の新作が続々とテストを開始しています。
- バイトダンス(朝夕光年)傘下の『霧影猟人』が中国で初回テストを開始。
Bellringスタジオが開発する本作は、ダークファンタジーの世界観、アクションRPG、そして近年人気の「Extraction Shooter(探索・戦闘・撤退)」要素を融合した意欲作です。Unreal Engine 5で開発され、「ソウルライク」な戦闘スタイルと、地底探索と箱庭要素を組み合わせたマップデザインが特徴。プレイヤーは傭兵、ウィザードなど5つの職業を選択し、ノンターゲット戦闘を体験できます。バイトダンスのゲーム事業再編後、重要な試金石となるタイトルとして注目されています。
- miHoYoの新作『崩壊:因縁精霊』が初回テスト「結縁テスト」を開始。
「崩壊」シリーズの世界観を受け継ぎながら、オートチェス、精霊収集、オープンワールド要素を組み合わせたマルチジャンルな作品です。すでに390万人以上のプレイヤーが事前登録しており、66種類の精霊を集め、属性を組み合わせてオートバトルを楽しむことができます。従来のオートチェスとは異なり、デッキ構築メカニクスや、精霊に乗って探索、滑空、謎解きができるオープンワールド要素も特徴。ライトユーザー層へのアプローチと、miHoYoならではのストーリー重視の姿勢が見て取れる作品として、今後の展開が注目されます。
業界の動向:ヒットタイトルの躍進と変化するビジネスモデル
テンセント『三角洲行動』がiOS売上・無料ランキングで首位に!
テンセントの戦術シューター『三角洲行動』が、新シーズン「烈火冲天」のリリース後、9月17日にiOS中国区の売上ランキングと無料ランキングで初のダブル首位を獲得しました。同時に、Steamでの同時接続者数も過去最高の22.6万人を記録しています。
この成功は、長期的な運営戦略とシーズン制更新が功を奏したと分析されています。新スカウト「銀翼」や新マップ「断層」の追加に加え、 Extraction Shooterモードには「森林火災」のようなランダムイベントも導入。さらに、シーズンミッションシステムの改革により、プレイヤーがより自由にミッションを選べるようになり、不満点の改善が図られました。人気映画『ソウ(電鋸驚魂)』や『ガチョウと鴨のゲーム(鵝鴨殺)』とのコラボレーションも、シーズン全体を盛り上げる大きな要因となっています。
声優とキャラクターの「強い結びつき」が変容?
乙女ゲーム『恋とプロデューサー~EVOL×LOVE~』では、人気キャラクター「李澤言」の声優交代を巡る問題が発生しました。8年間にわたり担当してきた声優との契約終了後、新声優の選定が行われましたが、テストボイスに対する一部プレイヤーからの否定的な意見を受け、最終的に制作側は新たな声優を「公開しない」という異例の発表を行いました。
これは、近年のゲーム業界が、豪華声優陣を売りにする日本のアニメ・ゲーム業界のモデルからヒントを得つつも、声優個人のパフォーマンスの変動や私生活がキャラクターイメージに与えるリスクを懸念し、「声優の存在感を弱める」方向へシフトしている兆候と言えます。テンセントやmiHoYoなど、他の大手メーカーでも同様の動きが見られます。
ゲームとAIの融合:次世代エンタメの可能性
AIコンパニオンアプリ『EVE』が年内リリースへ
愷英網絡(Kaiying Network)は、投資する3D AIスマートコンパニオンアプリ『EVE』が今年末にリリースされる予定であることを発表しました。『EVE』は、従来のゲームやチャットボットとは異なり、ユーザーの感情や文脈を正確に理解し、人格の連続性を持った応答を生成。さらに、「現実世界感知モジュール」により、ユーザーの食事の好みなどを記憶し、「ユーザーのために飲み物を購入する」といった仮想と現実の壁を越えたインタラクションも目指しています。映画『her/世界でひとつの彼女』のような、感情的な価値提供から、より具体的な生活支援までを実現するAIコンパニオンとして期待されています。
三七互娯、AIゲーム開発を加速
三七互娯(37 Interactive Entertainment)は、AI関連分野への継続的な注力を明らかにしました。同社が独自開発したゲーム分野向け大規模AIモデル「小七」は、中国の生成AIサービス登録を完了。AIによるゲーム要素の自動生成や、AIを活用したゲームハウス(アバターが生活する空間)ソリューションの開発など、ゲーム開発におけるAIの活用を積極的に推進しています。MMORPG、SLG、カードゲーム、シミュレーションゲームなど、幅広いジャンルでAIを活用した新作のリリース準備を進めているとのことです。
まとめ
今回の中国ゲーム・テック業界の動向からは、複数の重要なトレンドが見えてきます。
まず、ファーウェイのHarmonyOSが、テンセントのような大手ゲームメーカーの参入により、新たな有力なゲームプラットフォームとして存在感を増している点です。これは、モバイルゲーム市場における競争環境をさらに活性化させる可能性があります。
次に、miHoYoやバイトダンスといったトップ企業が、既存IPの進化や新たなゲームジャンルの開拓に挑戦していること。特に「Extraction Shooter」と「ソウルライク」の融合、そしてオートチェスにオープンワールド要素を加えるなど、意欲的な試みが目立ちます。
そして、AI技術がゲーム開発の効率化だけでなく、AIコンパニオンアプリ『EVE』のように、ユーザー体験の中核を担う存在へと進化していることも特筆すべきでしょう。AIが感情的な結びつきや現実世界との連携を通じて、エンターテインメントのあり方を根本から変える可能性を示唆しています。
さらに、声優とキャラクターの結びつきに関する変化は、エンターテインメント業界全体のブランディング戦略やリスクマネジメントに一石を投じるものとなるかもしれません。これらの中国からの最新動向は、日本のゲーム産業やテック業界にとっても、今後の戦略を考える上で貴重な示唆を与えるものとなるでしょう。
元記事: chuapp
Photo by Sanket Mishra on Pexels












